チートがなくても最強です!?〜最弱勇者はハードモードの異世界を策略と悪知恵で必死こいて生きていく〜

ソリダス

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第二章 ドッデ村編

第十七話 祝勝会!〜外道勇者を添えて〜

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 ドラグノフを討伐した後、村はお祭り騒ぎになった。


 村の広場には大勢の村人が集まり、たくさん設置されたテーブルを囲んで賑やかに宴会を開いていた。

 最初に村に訪れた時には全然人が居なかったのに、一体この人数はどこから出てきたのだろうと思い、近くにいた人に聞いてみることにした。


 どうやら、モンスターを倒すまで村の住民は極力家の外に出ないようにと、予め連絡があったのだそう。その話を聞いて「あのドラゴンはこの世界でも結構ヤバい奴」という認識がさらに強くなった。


 俺は中央からやや外れた端の方でテーブルの上に置かれたおつまみをポリポリと食べていると、キョロキョロと誰かを探しているように周囲を見回している村長が視界に入った。

 村長もすぐに俺に気付いたらしく、ハッとした表情を一瞬見せた後、ゆっくりとこちらに近付いてきた。


 「座っても宜しいですかな?」


 「あぁ、どうぞどうぞ」


 そう言って村長は、俺の向かいの席に腰掛ける。

 と、座るや否や村長は俺に向かって深々と頭を下げた。


 「あなたのおかげでこの村は救われた。いくら感謝しても足りないが、これだけは言わせてくれ!……本当にありがとう、山田太郎殿。これは今回のお礼だ。是非受け取ってほしい」


 村長はやけに膨らんだ茶封筒をこちらに渡してきた。

 まさかとは思いながらも確認のために開けてみる。そこにはなんと『10000ゴールド』と印刷された紙幣がざっと50枚ほど入っていた。


 「こ、こんなにもらっていいんですか……!?」


 「せめてもの気持ちだ。受け取ってくれ」


 この場合、普通の勇者は、

 『いや、お金などは貰えません。……皆さんのこんなに素晴らしい笑顔を貰ったんですから、これ以上何かを貰うわけにはいきませんよ(爽やかスマイル)』


 とか、キザったらしい事を言うのだろうが、生憎俺はそんな臭い台詞を吐けるほど人間が出来ちゃいない。

 と、いうわけで。


 「マジですか!!あ、あ、あざっす!!!!!」


 50万ゴールド、ありがたく頂きました。

 俺は震える両手で貰った封筒をサッと懐に仕舞う。

 それからは村長としばらく世間話をしていたが、他にも行かなければならないところがあるらしく、忙しそうにすぐに何処かへ行ってしまった。


 しばらくの間のんびりとおつまみを食べていると、今度は後ろから声をかけられた。


 「まさか、魔法を使えないあなたがここまでやるとは思ってもみませんでしたよ」

 「!!!な、なんでそれを……!!」


 振り向くと、そこにいたのは隊長だった。

 しかし、おかしい。

 俺が魔法どころか特殊能力も使えない事はまだ誰にも話してはいないはずだ。

……まぁ、ちょっとだけそれっぽい事を言ったような気もするが、あの程度でそんな事を考える人はいないだろうし、決定的な証拠にはならない。

 だが、もしやそれ以外の何処かで話した事を忘れてしまったのか、と不安になっている俺を見ながら隊長は真顔で答える。


 「……俺は人が持つ潜在的な魔力が見える特殊能力持ちなんですよ」


 「特殊能力!あぁ、なるほど。そういえばそんなのもありましたね」


 合点がいった俺は、なるほどと呟きながら何度も頷いた。

と、ついでに気になったことを聞いてみた。


 「……そういえば、なんでさっきから敬語なんですか?なんかすげぇ気になるんですが………」

 「今回の最大の功労者に敬意を表すのは当然です」

 「あ……はい、なるほど」


 曖昧な返事をする俺を見て隊長は何かを思い出したようにポンと手を打った。


 「そういえば……。太郎殿の名前は聞きましたが、俺はまだ名乗ってませんでしたね。俺の名前はベルドルム=ボックスといいます。気軽にベルドルムと呼んでください」


 「それじゃあ……ベルドルムさん、よろしくお願いします」


 「こちらこそ、よろしくお願いします。……さて、お互いの名前が分かったところで。1つ、頼みを聞いていただけますか?」


 「頼みですか?……まぁ、聞くだけなら」


 「今回のドラゴン討伐に関して、あなたを中心的な活躍をした人物として公表させてほしいのです。……『魔法が使えない勇者』という事も含めて」


 「…………は?」


 「この世の中は、魔法や特殊能力がほとんどを決めてしまいます。魔法が使えなければ、赤ん坊以下……いや、もっと酷い。もはや人間として扱われないような事もある……。しかし、それは間違っている!たとえ魔法が使えない者でも、結果を残したのであれば正当な評価を得るのが当たり前のはずなのです!しかし、今の社会はそういった者を、平等な目で見ようとしない!だから俺は決めた。世界を根本から変える、と。だから太郎殿、あなたの名前を『魔法が使えない勇者』として歴史に名を残せば、きっと世界の価値観も変わるはずなんだ!いや、変える。変えねばならないんだッ!」


 「あ、あぁ。そうですか。べ、別に良いですよ」


 鬼気迫る表情のまま怒涛の勢いで話すベルドルムに若干引きながらも、俺はその提案を受け入れる。


 普通のファンタジーの主人公ならば、チートじみた能力やらなんやらで事件を解決して有名になっていくのだろうが、俺にはそれが出来ない。


 では、何が必要なのか。


そう問われたならば、今の俺に必要なのは『勇者 山田太郎』の知名度だ、と答える。

 知名度がなきゃ仲間になってくれる人も中々見つからないだろうし、冒険をするのなら知名度はあった方が良い。

 そんなところに、この話だ!

 王国が俺の名前を売名してくれるというのなら、まさに願ったり叶ったりだ。


 未だ夢中で話し続けるベルドルムの話を聞きながら、俺は僅かに口元を笑みで歪めた。


 ベルドルムの話が終わる頃には、あれほどいた人々はほとんど帰ってしまっていた。

 さすがに俺も疲れたので、村長が準備してくれた宿に帰ることにした。


 

 翌朝、俺はドラグノフを相手に共に戦った魔法使い(村の役人)達と村長、そしてベルドルム隊長に見送られて村を旅立った。


 まだ昨日の酔いが抜け切らない状態の俺は、鈍い頭痛と時折込み上げてくる吐き気を我慢しながら、ふらつく足取りで村を後にするのだった。



 ◆◆◆◆



 ――後日、王国は今回のドッデ村での事件についての公式声明を発表した。そこにはこのような記述があった。


 『ドッデ村村長を含む関係者と魔王軍第三討伐隊が、ベルドルム=ボックス第三討伐隊隊長の指揮により、魔王軍幹部と思われる者を討伐する事に成功した――』


 非常に簡潔にまとめられた文の中に『山田太郎』の名前は入っていなかった。

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