チートがなくても最強です!?〜最弱勇者はハードモードの異世界を策略と悪知恵で必死こいて生きていく〜

ソリダス

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第三章 ゾムベル編

第二十五話 汚ねぇ花火を咲かせましょう

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 「まあともかく無事みたいで良かっ……ッ!?お、お前、その足……」


 「足?………あっ」


 見るとオッサンの左足の膝から下が完全に無くなっていた。恐らく跳躍した時にドラゴンゾンビに食われたのだと思う。

 俺に指摘されるまでその事に全く気付いていなかったオッサンは、マジマジと傷口を眺めたり触って感触を確かめたりした後、ようやく状態の深刻さに気付いたのか突然絶叫して白目を向いた。


 「ぎゃああああああああ!!痛い!痛い!いた…………あれ?痛くない?あっ、そっか。そういえば俺、アンデッドだった」


 急に真顔になってなんて事ないという口調であっけらかんと言うオッサンに、正直俺はもうついていけない。


 「えぇ……」


 困惑する俺を他所に、オッサンは左足を擦りながら首を傾げる。


 「……あれ。なんだこの感じ、なんか左足全体が熱いな」


 「ま、まさかあのドラゴンの体内にあったウイルスから感染とかそういう感じ……?えっ、ちょ、えっマジで?そういう展開?異世界ファンタジー(笑)から本格的なパンデミックホラーになるの?」


 「いや、違う……多分この感じは……。よっしゃ、ちょっくら試しにやってみようか」


 そう言うとオッサンは器用に右足だけで立ち上がり、某バトル漫画のキャラクターが気を溜めている時のような声を出し始めた。


 「はあああああああ………!」


 なんだろう。

 かめはめ波でも撃つつもりだろうか。

 俺はそんなことを考えながら、グングン戦闘力が上がっているであろうオッサンをひたすら眺める。


 「ふんっ!!!」


 オッサンが力むと同時に、無くなった左足が生えてきた。


 足が生えた。


 ニョキという擬音がまさにドンピシャな生え方だった。

 思わず「あなたの足はタケノコですか?」と意味不明な事を口走りそうになるくらい、それはそれは見事な生えっぷりだった。

 もしかしたら見間違いかもと思った俺はゴシゴシと目を擦り、もう一度オッサンの足を見る。


 ……いや、やっぱり生えてる。


 困惑する俺とは対照的に、足を生やした本人はというと。


 「ふっ……やっぱりな」


 そんなことを呟きながら、感触を確かめるように左足で何度か地面を踏みつける動作をした。それが終わると何故か腕を組んで満足げに頷いている。


 いやいやいや、『やっぱりな』の意味が分からないんですけど。

 何をどうしてどうなったら無くなった足がニョッキリ生えてきた事を『やっぱり』の一言で片付けられるんですかね。

 後、ドヤ顔でこっち見て言うのやめろ。

 身体の欠損した部位を気合で生やして治すゾンビなんて、今まで聞いたこともねぇよ。

 もう完全にアンデッドの領分超えてんだろ。


 「おいなんだ今の。なんで足がタケノ……じゃなくて、なんで無くなったはずの足がニョキっと生えてきたんだ」


 「ん?あぁ、これはアンデッドの特殊能力の一つだ」


 さも当然の事のようにオッサンは言うが、お前はアンデッドになったばっかりなのに既に能力使いこなしてるとかどうなってんだという疑問が生まれる。

 なので、今抱いた疑問をそのまま単刀直入にぶつけた。


 「けどお前アンデッドになったばっかりじゃんか。誰かに教えられた訳でもないのに、何でそんな事が出来んだよ!」


 「……はぁ?あっ、そういえばお前、魔法も特殊能力も使えないとか言ってたな。じゃあ分からないのも無理はねぇ。ほんならちょっくら説明してやろうか」


 そう言ってオッサンは続ける。


 「魔法とか特殊能力とかっつーのはよ、どうすれば使えるようになるのかの条件が全く分かってねぇんだ。人に教えられて使えるようになる奴もいれば、寝て起きたらある日突然使えるようになっていたって奴もいる。だが、それだと普通は突然自分の能力が目覚めてたとしても気付かないだろ?」


 「あぁ、だろうな。俺が寝て起きていきなり舞空術を使えるようになっていたとしても『使える』って事を知らなきゃどうしようもねぇわな」


 「………まぁ、そんな訳なんだが、魔法やらが使える奴ら全員にある一つの共通点は『使い方やその能力・魔法がなんとなく感覚で分かる』んだよ。どっかの学者は遺伝子構造に含まれたある部分が、脳の本能的な部分に作用して出来るようになり、使い方は本能が知っているから最初から何となく分かる……とか言ってたりする。あと、どっかの宗教だと魔法や特殊能力の事を『神の祝福』なんて呼んでたりもするな。確かに感覚で分かるあの感じが神秘的だって気持ちは分からんでもない」


 「へー・・・魔法とか能力が感覚でなんとなく分かるとかあれだな。随分フワフワした感じなんだな」


 「フワフワねぇ、言われてみればそうかもな。……っていうか、そろそろそのドラゴンゾンビにトドメを刺せよ。そっちが気になって落ち着いて話も出来ねぇ」


 「おっと忘れてた」


 正直、今はオッサンの左足の事や魔法と特殊能力の事で頭がいっぱいいっぱいで俺の方が落ち着いて話が出来ない状態なんだけど。


 ともあれ、ドラゴンゾンビを倒さない限り安心出来ないというのは激しく同意する。

 そういうわけで俺はドラゴンにとどめを刺すため、ゆっくりと歩み寄る。


 地面から離れない脚を引き剥がそうとしているのか、残った脚をじたばたと動かして必死に足掻いている。

 そしてただひたすら、目の前の獲物を捕食するために首を伸ばし続ける。

 その度に筋肉の断裂音と、首の関節が外れる音が周囲に響き渡った。


 「うひゃあ……エグいエグい」


 一心不乱に捕食しようとするその姿が俺の目には、死ぬ事も生きる事も出来ず終わりの見えない苦痛にもがき苦しむ哀れな動物に見えた。


 そうして両手に持っていたランプのうち、左のランプを地面に置く。これはこの墓地から脱出する時のための明かりだからな。


 俺は右手に持ったランプのオイル注入口のキャップを外す。その中には並々とオイルが注がれていた。


 「たとえ死んだとしても……こうはなりたくねぇな」


 俺は誰にともなくポツリと呟き、ランプをドラゴンゾンビに向かってやや高めに放り投げる。

 放り投げられたランプは、緩やかな放物線を描きながらドラゴンの元へ落ちていく。


 カシャンという音を立ててランプはドラゴンに命中した。

 それから数秒後、ランプから流れ出したオイルに引火したのだろう、ドラゴンゾンビの身体が轟々と燃え上がる。

 最初は燃えながらもじたばたと動いていたが、徐々に動きが鈍くなっていき、やがてその動きは完全に止まった。


 これでようやく終わったんだな。


 そうして安堵した俺は、勝ちを確信すると調子に乗るという悪い癖が出てしまい、油断し切った状態で決めゼリフを言おうとする。


 ―――その直後。


 どうやら体内に蓄積されていた腐敗ガスに引火したらしいドラゴンの亡骸は、凄まじい爆発を巻き起こし木っ端微塵に吹き飛んだ。


 「ふっ、汚ねぇ花b………グベラァッ!」


 ニヒルな笑みを浮かべて締めのセリフを言おうとしていた俺に強烈な爆風が襲い掛かる。

 それは俺程度を軽く吹き飛ばす力があり、案の定、俺はいとも簡単に吹き飛ばされて、近くにあった墓石に強かに叩き付けられた。


 特別頑丈ではない俺はその衝撃であっさりと意識を失ったのだった。



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