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第三章 ゾムベル編
第二十六話 これが現実
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誰かに肩を叩かれているような感覚を感じた俺は、ゆっくりと重い瞼を開ける。
一番最初に目に飛び込んできたのは、木々の間から見える青空だった。
どうやら既に夜は明けて、かかっていた霧も晴れたらしい。
木々の間から差し込んでいる陽の光に顔を照らされた俺は、まだ目が明るさに慣れていない事もあり反射的に顔をしかめ、目を細めた。
―――俺は一体どれほどの時間、意識を失っていたんだろうか。
俺は体を起こさずに首だけを動かして辺りを見渡すと、俺のそばで胡座をかいてこちらを見ているオッサンと目が合った。
すると、オッサンはそのままわざとらしくクソデカため息をついた。
「……ったく、ようやく目ぇ覚ましたか。随分気持ちよさそうに眠ってたからよぉ、そのまま寝かせてやったらこれだよ。もうすぐ昼だぜ?お前よくこんな場所で熟睡できるな、流石にアンデッドの俺でも無理だ。……ほら、いつまで横になってんだ、さっさと起きろ」
「いやぁ、起きたいのは山々なんだけどよ。なんか全身が痛くて……あ痛たたたたたたた」
起き上がろうとすると俺の全身に鋭い痛みが走り、苦痛に顔を歪めて再び倒れ込む。
俺のそんな様子を見ていたオッサンは、俺の肩をポンポンと叩きこう言った。
「まぁ、墓石にあれだけ勢い良くぶつかったらなぁ……。むしろその程度で済んでよかったじゃねぇか、打ち所が悪かったらそのまま死んでたぞ?……ともあれ、ドラゴンゾンビは倒せたんだし、終わりよければなんとやらだ」
「けっ、何がいいもんかよ。冒険に出て早々この調子じゃ、これから先どんな目に遭うか分かったもんじゃない」
俺は苦笑を浮かべながら軽い口調でそう言った。オッサンの話し方や態度から俺を慰めて、ポジティブな方向に持っていこうとしているのだろうという事は分かった。
そんなわけで、いつまでもここで転がってる意味は無い。
「よっこらせっと。……それじゃあそろそろ行くかな」
俺は痛みに耐えてゆっくりと立ち上がる。
「……そういえばお前、この先どこに行くのかは決まってんのか?」
未だ胡座をかいたままのオッサンは、俺を見上げながら質問を投げ掛けてくる。
ここで俺は当初の目的を思い出し、忘れかけていた自分のためとオッサンのために改めて説明を始めた。
「とりあえずゾムベル町の町長の所に行って、このドラゴンゾンビを倒した分の報酬を貰ってこようかなって考えてる。……安心しろよ、独り占めなんて考えてないから。俺とお前で6:4で分けよう」
「おい待てコラ、6:4ってどういう事だ。常識的に考えてここは3:7だろうが。……けどお前、魔法も特殊能力も使えねぇんだろ?だったらやめておけ。後々面倒くせぇ事になるのも嫌だろ?」
「そりゃそうだけど……でも―――」
オッサンは呆れたように首を振り、俺の言葉を遮る。
「―――あのなぁ。ドラゴンゾンビっつったら、本来だと10人がかりで戦っても歯が立たないくらいのとんでもねぇ化け物だ。ついでに付け加えると、ドラゴンゾンビは滅多に現れねぇ。最後に現れたのも今から数十年前だ。その時の討伐隊は歴代討伐隊の中でもトップクラスの実力を持っていたらしいんだが、それでも半分以上の戦力を動員してようやく倒せたんだぜ?」
「け、けど、俺とオッサンの二人で勝ったことには違いないじゃん」
「それを信じる奴が俺以外にどこにいるんだって話だ」
「それは………」
オッサンの正論に俺は口ごもる。
そんな俺の様子を見ながら、さらに言葉を続けた。
「それによ、ドラゴンゾンビが火に弱いなんて事は実際にこの目で見た俺とお前以外、誰も知らねぇんだよ。……お前はどこで知ったんだ?」
「えっ?アンデッド全般って火とか水が弱点なんじゃないの?試しにそこら辺にいるアンデッドを捕まえて確認を―――」
「おい!怖ぇ事言いながらこっち見んじゃねぇよ!それもダメだからな!……アンデッドと言っても色々な種類があって、弱点はそれぞれの種族で違ぇんだよ。特に『ドラゴンゾンビ』みたいな出現する事がほとんど無いアンデッドモンスターの弱点なんて知られてる訳がねぇだろ。……ちなみに、俺の弱点は火じゃねぇから!いやマジで!」
今のオッサンの話を聞き、俺の脳裏にある可能性が思い浮かんだ。
その可能性を確かめるように恐る恐るオッサンに尋ねた。
「それじゃあ、もしドラゴンゾンビの弱点が火じゃなかったら俺達は―――」
「―――今頃、俺たちゃ腹の中だろうな。運が良かったなぁ、俺もお前も」
オッサンは飄々とした様子で言うが、一歩間違えば二人仲良くゾンビの餌になっていたと思うと背筋に冷たいものが走った。
しかし、俺は金が欲しい。
そっとやちょっとじゃ諦められない。
「じゃあオッサンが今回の証人になってくれ。ほら、この世界は魔法とか特殊能力とか色々と発展してるだろ?だったら嘘を見破るなんかがあるはずじゃん。それを使った上で、俺がランプ投げつけてドラゴンゾンビを爆裂四散させたって町長に言ってくれたら解決じゃないか?そうすれば報酬も5:5で平等に……」
俺はそう言って粘り強く食らいつこうとする。だが、それはオッサンが次に放った言葉に掻き消された。
「……お前さ、俺がアンデッドだって事忘れてないか?」
「……………えっ?」
オッサンからの思わぬ台詞に、俺は鳩が豆鉄砲食らったような顔になる。
しばらくの沈黙の後、あぁそういえばオッサンはアンデッドだったと、一瞬忘れていた逃れようのない事実を再び脳内に呼び戻す。
確かにオッサンとのファーストコンタクトの時は、あの垂れ下がった目を見て『あ、こいつは人間じゃない、ゾンビに違いない』って考えたけど、元の位置に目が戻った今は正直言って顔色がめちゃくちゃ悪いオッサン以外の何物でもない。
そんな俺の様子を見たオッサン(アンデッド)は。
「まあ、お前の今の様子だと俺がアンデッドって事は恐らくバレはしないだろう。……と思うが、もし万が一バレたら俺たち二人は仲良く”これ”だろうな」
そう言ってオッサンは手刀を自分の首に当てるジェスチャーをした。それを見ただけでどういう意味か分かってしまった俺は、念の為に確認する。
「そのジェスチャーは『首チョンパ』……つまり『処刑』って事でいいんだよな?」
「ったりめーだろ。人類の敵であるアンデッドと手を組んでた奴なんぞ処刑されるに決まってるだろ。そんで、そんな奴の話を信じる人間がいるか?」
「ですよねぇ……」
困惑する俺を他所に、オッサンは淡々とした口調のまま俺にトドメの言葉を放った。
「オマケに、倒した証拠は爆発で粉々。今じゃあバラバラになった腐肉が辺りに散らばってるだけ、と来た。このザマじゃ捏造やらなんやらと適当にこじつけられて逮捕、そんで………ってオチだろうな。さぁ、これでも気が変わらないようだったら町長の所まで連れてってやるよ」
「いえ、すいませんやめておきますマジすいませんでした」
一番最初に目に飛び込んできたのは、木々の間から見える青空だった。
どうやら既に夜は明けて、かかっていた霧も晴れたらしい。
木々の間から差し込んでいる陽の光に顔を照らされた俺は、まだ目が明るさに慣れていない事もあり反射的に顔をしかめ、目を細めた。
―――俺は一体どれほどの時間、意識を失っていたんだろうか。
俺は体を起こさずに首だけを動かして辺りを見渡すと、俺のそばで胡座をかいてこちらを見ているオッサンと目が合った。
すると、オッサンはそのままわざとらしくクソデカため息をついた。
「……ったく、ようやく目ぇ覚ましたか。随分気持ちよさそうに眠ってたからよぉ、そのまま寝かせてやったらこれだよ。もうすぐ昼だぜ?お前よくこんな場所で熟睡できるな、流石にアンデッドの俺でも無理だ。……ほら、いつまで横になってんだ、さっさと起きろ」
「いやぁ、起きたいのは山々なんだけどよ。なんか全身が痛くて……あ痛たたたたたたた」
起き上がろうとすると俺の全身に鋭い痛みが走り、苦痛に顔を歪めて再び倒れ込む。
俺のそんな様子を見ていたオッサンは、俺の肩をポンポンと叩きこう言った。
「まぁ、墓石にあれだけ勢い良くぶつかったらなぁ……。むしろその程度で済んでよかったじゃねぇか、打ち所が悪かったらそのまま死んでたぞ?……ともあれ、ドラゴンゾンビは倒せたんだし、終わりよければなんとやらだ」
「けっ、何がいいもんかよ。冒険に出て早々この調子じゃ、これから先どんな目に遭うか分かったもんじゃない」
俺は苦笑を浮かべながら軽い口調でそう言った。オッサンの話し方や態度から俺を慰めて、ポジティブな方向に持っていこうとしているのだろうという事は分かった。
そんなわけで、いつまでもここで転がってる意味は無い。
「よっこらせっと。……それじゃあそろそろ行くかな」
俺は痛みに耐えてゆっくりと立ち上がる。
「……そういえばお前、この先どこに行くのかは決まってんのか?」
未だ胡座をかいたままのオッサンは、俺を見上げながら質問を投げ掛けてくる。
ここで俺は当初の目的を思い出し、忘れかけていた自分のためとオッサンのために改めて説明を始めた。
「とりあえずゾムベル町の町長の所に行って、このドラゴンゾンビを倒した分の報酬を貰ってこようかなって考えてる。……安心しろよ、独り占めなんて考えてないから。俺とお前で6:4で分けよう」
「おい待てコラ、6:4ってどういう事だ。常識的に考えてここは3:7だろうが。……けどお前、魔法も特殊能力も使えねぇんだろ?だったらやめておけ。後々面倒くせぇ事になるのも嫌だろ?」
「そりゃそうだけど……でも―――」
オッサンは呆れたように首を振り、俺の言葉を遮る。
「―――あのなぁ。ドラゴンゾンビっつったら、本来だと10人がかりで戦っても歯が立たないくらいのとんでもねぇ化け物だ。ついでに付け加えると、ドラゴンゾンビは滅多に現れねぇ。最後に現れたのも今から数十年前だ。その時の討伐隊は歴代討伐隊の中でもトップクラスの実力を持っていたらしいんだが、それでも半分以上の戦力を動員してようやく倒せたんだぜ?」
「け、けど、俺とオッサンの二人で勝ったことには違いないじゃん」
「それを信じる奴が俺以外にどこにいるんだって話だ」
「それは………」
オッサンの正論に俺は口ごもる。
そんな俺の様子を見ながら、さらに言葉を続けた。
「それによ、ドラゴンゾンビが火に弱いなんて事は実際にこの目で見た俺とお前以外、誰も知らねぇんだよ。……お前はどこで知ったんだ?」
「えっ?アンデッド全般って火とか水が弱点なんじゃないの?試しにそこら辺にいるアンデッドを捕まえて確認を―――」
「おい!怖ぇ事言いながらこっち見んじゃねぇよ!それもダメだからな!……アンデッドと言っても色々な種類があって、弱点はそれぞれの種族で違ぇんだよ。特に『ドラゴンゾンビ』みたいな出現する事がほとんど無いアンデッドモンスターの弱点なんて知られてる訳がねぇだろ。……ちなみに、俺の弱点は火じゃねぇから!いやマジで!」
今のオッサンの話を聞き、俺の脳裏にある可能性が思い浮かんだ。
その可能性を確かめるように恐る恐るオッサンに尋ねた。
「それじゃあ、もしドラゴンゾンビの弱点が火じゃなかったら俺達は―――」
「―――今頃、俺たちゃ腹の中だろうな。運が良かったなぁ、俺もお前も」
オッサンは飄々とした様子で言うが、一歩間違えば二人仲良くゾンビの餌になっていたと思うと背筋に冷たいものが走った。
しかし、俺は金が欲しい。
そっとやちょっとじゃ諦められない。
「じゃあオッサンが今回の証人になってくれ。ほら、この世界は魔法とか特殊能力とか色々と発展してるだろ?だったら嘘を見破るなんかがあるはずじゃん。それを使った上で、俺がランプ投げつけてドラゴンゾンビを爆裂四散させたって町長に言ってくれたら解決じゃないか?そうすれば報酬も5:5で平等に……」
俺はそう言って粘り強く食らいつこうとする。だが、それはオッサンが次に放った言葉に掻き消された。
「……お前さ、俺がアンデッドだって事忘れてないか?」
「……………えっ?」
オッサンからの思わぬ台詞に、俺は鳩が豆鉄砲食らったような顔になる。
しばらくの沈黙の後、あぁそういえばオッサンはアンデッドだったと、一瞬忘れていた逃れようのない事実を再び脳内に呼び戻す。
確かにオッサンとのファーストコンタクトの時は、あの垂れ下がった目を見て『あ、こいつは人間じゃない、ゾンビに違いない』って考えたけど、元の位置に目が戻った今は正直言って顔色がめちゃくちゃ悪いオッサン以外の何物でもない。
そんな俺の様子を見たオッサン(アンデッド)は。
「まあ、お前の今の様子だと俺がアンデッドって事は恐らくバレはしないだろう。……と思うが、もし万が一バレたら俺たち二人は仲良く”これ”だろうな」
そう言ってオッサンは手刀を自分の首に当てるジェスチャーをした。それを見ただけでどういう意味か分かってしまった俺は、念の為に確認する。
「そのジェスチャーは『首チョンパ』……つまり『処刑』って事でいいんだよな?」
「ったりめーだろ。人類の敵であるアンデッドと手を組んでた奴なんぞ処刑されるに決まってるだろ。そんで、そんな奴の話を信じる人間がいるか?」
「ですよねぇ……」
困惑する俺を他所に、オッサンは淡々とした口調のまま俺にトドメの言葉を放った。
「オマケに、倒した証拠は爆発で粉々。今じゃあバラバラになった腐肉が辺りに散らばってるだけ、と来た。このザマじゃ捏造やらなんやらと適当にこじつけられて逮捕、そんで………ってオチだろうな。さぁ、これでも気が変わらないようだったら町長の所まで連れてってやるよ」
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