28 / 81
第三章 ゾムベル編
第二十八話 仲間にしますか? ▶︎ はい
しおりを挟む「―――とは言ったものの、勇者のパーティにアンデッドか………。しかもオッサンのゾンビだし……この時点でハーレムパーティの可能性は消え、他の仲間が見つかるまで腐乱臭漂うオッサンと仲良く二人旅確定なわけだ」
俺は腕を組んで独り言をぼやきながら、行きで使用したバス停に向かっている。
その横を怠そうに歩いているのは、ついさっき仲間になったオッサンゾンビだ。オッサンは俺の呟きを聞き、キッと睨み付けてくる。
「おい、誰が腐乱臭漂うオッサンだ。………そこまで腐ってなくねぇか?」
「そうだな、そこまで腐ってはいないな。流石に言い過ぎた。せいぜい蝿が集って微生物に分解され始めてるオッサンってところだな」
「おい、言い方変えても結局意味は変わってねぇじゃねぇかよ。しかもなんかそっちの表現の方が嫌なんだけども。俺、もう死んでるけどその言い方が生理的に受け付けないんだけど」
自分の服や脇の臭いをクンクンと嗅いでいるオッサンを尻目に、俺は再び進行方向の正面を向き直る。そうしたところで不意に、俺とオッサン両方のこれからに関わってくる非常に大切なことを思い出した。
これをおっさんに聞かなければ今後の冒険に支障が出てくる可能性がある、というほどの重要な事だ。
俺は思い出した大切なことについて尋ねる。
「そういえばよ、オッサンの名前ってまだ聞いてなかったよな。出来れば教えてくれない?これから冒険するんだ、知っておいた方がなにかと都合がいいこともあるだろ。それにさ、どうせ呼び合うんだったら名前の方が良くない?」
それにオッサンはポカンと口を開けて、
「………えっ、今更?俺はてっきりそのオッサン呼びが既に定着して、俺の呼び名がオッサンになるのは決定事項と思って諦めてたんだが……」
「まぁ、オッサンがそれでいいなら別に俺はこのままオッサン呼びでいいk」
「いや!俺の名前は『デイモス』!デイモスだから!以後デイモスでよろしく頼む!オッサンは嫌だ」
オッサ……デイモスからのやたらと名前の部分を強調した自己紹介を受け、俺も自己紹介がまだだった事を思い出した。
なので、簡単にだが俺も自己紹介をする。
「そういえば俺も名乗ってなかったな。……俺の名前は山田太郎だ。俺の呼び方候補としては『勇者様』『名前を呼んではいけないあの人』『例のアレ』なんかがある。この中から呼びやすいものを選んでいいぞ。……まぁ、そんなわけでよろしく、オッサ……デイモス」
「んぁ、分かった。よろしくな、タロウ」
………流石にハリー○ッターは分かりにくかった……というか、そもそもそれは別の世界の映画作品だから分かるわけないのか。完全に失念してました、ごめんなさい。
俺の(分かるはずのない)ボケをガン無視した、かつ気の抜けたようなデイモスの返事を聞いて、俺は1度大きく頷いた。
「よし、それじゃあ早速次の目的地に向かうとするか!……それでなんだけどさ、オッ……デイモス。これからどこに行く?」
「………は?次の目的地ってもう決まってるんじゃねぇのか?決まってねぇんだとしたら、お前は今どこに向かって歩いてんだよ」
呆れた様子でデイモスが俺に尋ねる。
「いやね、とりあえず今はバス停に向かって歩いてるところなんだけどさ、問題はバス停に着いてからなんだよ……。そこからどこに行こうかなってさ……」
マジで悩みながらポリポリと頭を搔く俺に、デイモスは片手の人差し指をピンと立てこう言った。
「だったら【ハルマ】に行ってみたらどうだ?」
「【ハルマ】?そこになんかあるのか?」
なんで今人差し指を立てたんだろうと、極めてくだらない事に気が逸れながらも肝心な事をしっかりと聞く。
俺の質問にデイモスは腕を組んでうーんと唸り、
「いやぁ……、俺も噂でしか聞いたことがないんだがな、どうやらその街に『最強の魔法使い』と呼ばれる奴がいるらしいんだ」
「最強の魔法使い!?何それすごい!もっと詳しい情報を!お願いします!」
俺は鼻息を荒くし、デイモスの顔面に詰め寄る。デイモスは迷惑そうに顔をしかめると、無言で俺の顔を押し戻した。
「そいつに関する詳しい情報は俺はあんまり知らねぇ。強いて挙げるなら、そいつは『ギルド』に所属してて―――」
「―――この世界にギルドがあるのか!?」
「あ、あぁ、普通にあるが……いやそこじゃなくて――」
再びデイモスにズイっと近寄って必要以上の大声で叫んでしまったが……まあ、それは俺がこのファンタジー異世界(笑)に来てから今までの惨状を味わってきたためという理由が大きい。
だって『ギルド』なんて正統派ファンタジーでしか聞けないような立派な名称を、このなんちゃって異世界の中で聞くことがようやく出来たんだから!
それにまだ旅に出たばかりなので、これまでの旅の中でファンタジーチックな名前のアイテムもあんまり見つけていないし。
だからつい大きい声を出しちゃったのも仕方がない。そう、仕方がないのだ。
そんなわけで。
「よし決めた、早速そこに向かおう。今行こうすぐ行こう異論は認めん」
「いや、ちょっ、俺の話の途中……」
何か言いたげなデイモスだったが、この時の俺の脳内天秤は完全に【ハルマ】という街に傾き、頭の中はその事一色になってしまっていた。そのためデイモスの話をゆっくりと聞いてはいられない。
「ざっくりとした説明ならバスの中でもできらぁ!さあ!これから勇者タロウと愉快な仲間たちの新しい冒険の始まりだ!」
こんな無理やりな説明をデイモスに投げつけた俺は、狂喜の声をはしたなく喚き散らし、奇行種のようなおぞましい走り方でバス停へと向かった!
後ろから感じる視線が凄まじいが、そんな事を気にしてはならない。
さあ!俺たちの冒険はこれからだ!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます――
金さえあれば人生はどうにでもなる――
そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。
交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。
しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。
だがその力は、本来存在してはいけないものだった。
知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。
その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在――
「世界を束ねる管理者」
神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。
巻き込まれたくない。
戦いたくもない。
知里が望むのはただ一つ。
金を稼いで楽して生きること。
しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。
守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。
金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる
巻き込まれ系異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる