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第五章 アストラ編
第五十一話 やはりこの世界はどこかおかしい。
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――――俺達は魔王軍が篭城しているダンジョンからすぐ近くの雑木林の中にいる。ここは木々が生い茂り、身を隠すのに絶好の場所だ。
俺達は各自の目標を達成した後、この場所に集合する事にしていた。
まあ、そんなわけであれから時間も経って、俺とデイモス、ヴェルデの3人が集まったのを確認する。
「よし、これで全員揃ったな」
俺は2人の顔を見ながら、なるべく小声で言った。敵拠点が近いからね、バレにくい場所にいるとしても気を付けないと。
2人もコクリと頷き、報告を受ける。
「俺は言われた通りガスマスクを2つ持ってきて、ヴェルデもお前の持ってる殺虫スプレーと同じタイプのスプレーを持ってきた」
「『超特大消臭除菌スプレー(バズーカタイプ)』買ってきたよ!これ一本でなんと標準的なスプレー約120本分(当社比)の量が入ってるんだって!」
「ほへぇ……120本分かぁ、すげえや。そんでこっちはガスマスクと。……うん、完璧だな」
気の抜けた声でヴェルデの持ってきたスプレーとガスマスクを眺めながら呟いた。
そんな中、デイモスから疑問の声が上がる。
「……んで太郎、俺らがこれを探し集めてた時、お前は一体何をしてたんだ?」
「俺は作戦の成功率を少しでも上げるために、ここら辺にちょっとした細工をしてきたんだよ。こっちも準備はバッチリだ」
そう言ってニタリと笑う俺。そんな俺にヴェルデからも質問が飛んでくる。
「それで、肝心の作戦をまだ聞いてないんだけど。そろそろ教えてくれるんでしょ?」
「分かってるよ。それじゃあ作戦内容を説明していくぞ――」
◆◆◆◆
作戦を伝え終えると、いつも通りデイモスが呆れたような苦笑を浮かべ、ヴェルデはいつもなら考えられないポカーンとした間の抜けた顔で俺を見つめていた。
そんな中、デイモスがその苦笑を残しながらしみじみと語る。
「お前は、本当に博打じみた作戦ばっかり考えるよなぁ」
「だって相手はほとんどぶっ壊れのチート能力持った化け物だぞ!?まともに戦ったら勝ち目のない相手に勝つってんだよ!?そりゃ嫌でも博打にもなりますって!だが、何はともあれ!これで準備は整ったわけだ!さあ行くぞっ!」
俺はこれ以上の追撃を避けるように、さっさと必要な物を持ち、足早に敵拠点の入口へと向かっていった――――。
――――で、入口に着き、ダンジョンの中へと入っていく。
そしたら出るわ出るわ、前も見た事のあるショッカー戦闘員そっくりな見た目の下っぱさんたちが。
とはいっても、事前に敵の下っぱは10数人ほどだったという情報を掴んでいたので、必要以上に怯える事なく、この辺はサクサクと進んでいけた。
…………え?俺も戦ったのかって?
んなこと出来るわけない。まともな戦闘能力を持たない俺とヴェルデはもう、ぜーんぶデイモスに任せた。
そのためにデイモスには、俺の相棒であるヒノキの棒を渡しておいた。
俺は一撃でも入れられたら、冗談でもなんでもなく、本当に死んじゃうんで。
スライム相手に死にかけてる奴が勝てるわけないし、戦ったらほぼ間違いなく瞬殺されるに決まってるんだよなぁ……。
その点デイモスは力も強いし身体能力も高い、おまけにほぼ無敵といっていい再生能力もある!
ほ、ほら、役割分担って事だよ!得意分野は一人ひとり違うんだから、攻撃が得意な人は攻撃で、防御が得意な人は防御で、って感じでそれぞれが100%の実力を発揮できるように考えていく!チームで行動する時はこれ大事!
そんなわけで。
ついに到着しました。ダンジョン最深部。
今、俺達の目の前には不気味な彫刻が施された大きな両扉が行く手を阻んでいる。
「ひゃー、でっけぇなぁ!?」
孫悟空みたいな反応をしつつ、試しに俺一人で押してみる。
恐る恐る押してみると、わりとアッサリと開くことが出来た。
「あ、結構軽いな。俺一人でもわりといける。こんな重そうな見た目なのに」
そんなことを呟きながら扉を開き、中へと足を踏み入れた。
その中は決して広いとはいえず、壁や床も薄汚れていた。空気も澱んでおり、洞窟を利用したダンジョンなだけに通気性は最悪な場所である。
そうして周囲の状況を確認していくと、部屋の奥に人の背丈ほどもある真っ赤なてるてる坊主があるのが目に入った。
「なんだこれ」
思わず素で呟いた俺。
「初めて会った第一声が『なんだこれ』とは随分失礼ポヨね?今すぐお前らを八つ裂きにしてぶっ殺してやりたい衝動が湧き上がってきたポヨ」
「うおおおお!!てるてる坊主が喋ったァァァァァァ!!!しかも、語尾と言動がミスマッチすぎて怖ぇよ!!」
「あれが町を襲った魔王軍の親玉だろうな、気ぃ付けろよ」
デイモスが普段より数トーン低い声でそう言った。
俺も気を引き締め、てるてる坊主を真っ直ぐに見やると、左手が鎌状になっており、殺る気満々なのはひしひしと伝わってくる。
帰りたい。
しかし、俺は逃げ出したい衝動を何とか堪えて勇者っぽく振る舞う。
「町をあんなにボロボロにしたのはお前達だよな?」
「そうだポヨ。で、それを知ったお前らはどうするポヨ?この『ノーヴァ』様に文句でも言うポヨか?」
「町の人たちを元に戻すんだ。……ダメならせめて治す方法を教えてくれると助かるんだけども……」
ここで教えてもらわないと完全に解決とはならないわけなんで、あんまり上から言わないように気を付けつつ、若干控えめに尋ねる。
「お前ら、馬鹿ポヨ?そんなこと言われて教える奴なんて普通いないポヨ。……だけど、このノーヴァ様が持つ特殊能力の効果は普通じゃないポヨ。治す方法を教えたところで成し遂げるのは絶対に不可能なんだポヨ。……そうポヨ、お前らの絶望に歪む表情を眺めるのも楽しそうだし、特別に教えてやるポヨ」
表情には一切変化はないが、こいつがかなりのゲスなのは分かった。これは早急に決着をつけたほうがいい敵だ。俺の勘がそう叫んでいる。
次の返答次第で、こちらがどう動くかが決まるだろう。
「解決法はただひとつ……このノーヴァ様を倒す事だけポy」
「先手必勝!!今だデイモス!!!いけぇぇぇ!!」
まだノーヴァが話している最中だったが、前にも言った通り俺はそんな隙だらけの瞬間を、みすみす逃してやるほどご都合主義者じゃない。
聞きたいことは聞けた、だったらあとは隙だらけの脳天に不意打ちでもぶち込んでやる。
俺の声を受けたデイモスは、その驚異的な身体能力と瞬発力を生かし、一気に接近し事前に渡しておいたヒノキの棒を握り締め、ノーヴァの脳天めがけて振り下ろした。
瞬間、ガキンッという硬質な音が、この部屋に反響する。
「っしゃあ!!直撃ぃ!ナイスだデイモス!」
ガッツポーズを決めて喜ぶ俺。しかし、見るとノーヴァはまだ倒れていない。
どうやら左腕の鎌で攻撃を防いだらしい。
……だが、これはマズイ。
デイモスの攻撃速度に対応できるだけの身体能力をノーヴァも持っているということは、俺はまっっったく想定していなかった。
てっきり特殊能力に頼りきりで直接戦闘するのは不得意系の奴だと思ってた。
そう、完全にそう思いこんでいた。
…………肉弾戦まで平然とこなすとか、そんなのありなの?
チート能力にチートの重ねがけ?は?何それ、ふざけてんの?パワーバランスどうなってんの?
「……やっぱりこの世界は、どっかおかしいって……」
デイモスとノーヴァが肉弾戦による激闘を繰り広げる光景を、俺はまるで他人事のように呆然と眺めながら、もはや何度目か分からないほど呟いてきたこの言葉を、喉の奥から繰り返し絞り出した。
俺達は各自の目標を達成した後、この場所に集合する事にしていた。
まあ、そんなわけであれから時間も経って、俺とデイモス、ヴェルデの3人が集まったのを確認する。
「よし、これで全員揃ったな」
俺は2人の顔を見ながら、なるべく小声で言った。敵拠点が近いからね、バレにくい場所にいるとしても気を付けないと。
2人もコクリと頷き、報告を受ける。
「俺は言われた通りガスマスクを2つ持ってきて、ヴェルデもお前の持ってる殺虫スプレーと同じタイプのスプレーを持ってきた」
「『超特大消臭除菌スプレー(バズーカタイプ)』買ってきたよ!これ一本でなんと標準的なスプレー約120本分(当社比)の量が入ってるんだって!」
「ほへぇ……120本分かぁ、すげえや。そんでこっちはガスマスクと。……うん、完璧だな」
気の抜けた声でヴェルデの持ってきたスプレーとガスマスクを眺めながら呟いた。
そんな中、デイモスから疑問の声が上がる。
「……んで太郎、俺らがこれを探し集めてた時、お前は一体何をしてたんだ?」
「俺は作戦の成功率を少しでも上げるために、ここら辺にちょっとした細工をしてきたんだよ。こっちも準備はバッチリだ」
そう言ってニタリと笑う俺。そんな俺にヴェルデからも質問が飛んでくる。
「それで、肝心の作戦をまだ聞いてないんだけど。そろそろ教えてくれるんでしょ?」
「分かってるよ。それじゃあ作戦内容を説明していくぞ――」
◆◆◆◆
作戦を伝え終えると、いつも通りデイモスが呆れたような苦笑を浮かべ、ヴェルデはいつもなら考えられないポカーンとした間の抜けた顔で俺を見つめていた。
そんな中、デイモスがその苦笑を残しながらしみじみと語る。
「お前は、本当に博打じみた作戦ばっかり考えるよなぁ」
「だって相手はほとんどぶっ壊れのチート能力持った化け物だぞ!?まともに戦ったら勝ち目のない相手に勝つってんだよ!?そりゃ嫌でも博打にもなりますって!だが、何はともあれ!これで準備は整ったわけだ!さあ行くぞっ!」
俺はこれ以上の追撃を避けるように、さっさと必要な物を持ち、足早に敵拠点の入口へと向かっていった――――。
――――で、入口に着き、ダンジョンの中へと入っていく。
そしたら出るわ出るわ、前も見た事のあるショッカー戦闘員そっくりな見た目の下っぱさんたちが。
とはいっても、事前に敵の下っぱは10数人ほどだったという情報を掴んでいたので、必要以上に怯える事なく、この辺はサクサクと進んでいけた。
…………え?俺も戦ったのかって?
んなこと出来るわけない。まともな戦闘能力を持たない俺とヴェルデはもう、ぜーんぶデイモスに任せた。
そのためにデイモスには、俺の相棒であるヒノキの棒を渡しておいた。
俺は一撃でも入れられたら、冗談でもなんでもなく、本当に死んじゃうんで。
スライム相手に死にかけてる奴が勝てるわけないし、戦ったらほぼ間違いなく瞬殺されるに決まってるんだよなぁ……。
その点デイモスは力も強いし身体能力も高い、おまけにほぼ無敵といっていい再生能力もある!
ほ、ほら、役割分担って事だよ!得意分野は一人ひとり違うんだから、攻撃が得意な人は攻撃で、防御が得意な人は防御で、って感じでそれぞれが100%の実力を発揮できるように考えていく!チームで行動する時はこれ大事!
そんなわけで。
ついに到着しました。ダンジョン最深部。
今、俺達の目の前には不気味な彫刻が施された大きな両扉が行く手を阻んでいる。
「ひゃー、でっけぇなぁ!?」
孫悟空みたいな反応をしつつ、試しに俺一人で押してみる。
恐る恐る押してみると、わりとアッサリと開くことが出来た。
「あ、結構軽いな。俺一人でもわりといける。こんな重そうな見た目なのに」
そんなことを呟きながら扉を開き、中へと足を踏み入れた。
その中は決して広いとはいえず、壁や床も薄汚れていた。空気も澱んでおり、洞窟を利用したダンジョンなだけに通気性は最悪な場所である。
そうして周囲の状況を確認していくと、部屋の奥に人の背丈ほどもある真っ赤なてるてる坊主があるのが目に入った。
「なんだこれ」
思わず素で呟いた俺。
「初めて会った第一声が『なんだこれ』とは随分失礼ポヨね?今すぐお前らを八つ裂きにしてぶっ殺してやりたい衝動が湧き上がってきたポヨ」
「うおおおお!!てるてる坊主が喋ったァァァァァァ!!!しかも、語尾と言動がミスマッチすぎて怖ぇよ!!」
「あれが町を襲った魔王軍の親玉だろうな、気ぃ付けろよ」
デイモスが普段より数トーン低い声でそう言った。
俺も気を引き締め、てるてる坊主を真っ直ぐに見やると、左手が鎌状になっており、殺る気満々なのはひしひしと伝わってくる。
帰りたい。
しかし、俺は逃げ出したい衝動を何とか堪えて勇者っぽく振る舞う。
「町をあんなにボロボロにしたのはお前達だよな?」
「そうだポヨ。で、それを知ったお前らはどうするポヨ?この『ノーヴァ』様に文句でも言うポヨか?」
「町の人たちを元に戻すんだ。……ダメならせめて治す方法を教えてくれると助かるんだけども……」
ここで教えてもらわないと完全に解決とはならないわけなんで、あんまり上から言わないように気を付けつつ、若干控えめに尋ねる。
「お前ら、馬鹿ポヨ?そんなこと言われて教える奴なんて普通いないポヨ。……だけど、このノーヴァ様が持つ特殊能力の効果は普通じゃないポヨ。治す方法を教えたところで成し遂げるのは絶対に不可能なんだポヨ。……そうポヨ、お前らの絶望に歪む表情を眺めるのも楽しそうだし、特別に教えてやるポヨ」
表情には一切変化はないが、こいつがかなりのゲスなのは分かった。これは早急に決着をつけたほうがいい敵だ。俺の勘がそう叫んでいる。
次の返答次第で、こちらがどう動くかが決まるだろう。
「解決法はただひとつ……このノーヴァ様を倒す事だけポy」
「先手必勝!!今だデイモス!!!いけぇぇぇ!!」
まだノーヴァが話している最中だったが、前にも言った通り俺はそんな隙だらけの瞬間を、みすみす逃してやるほどご都合主義者じゃない。
聞きたいことは聞けた、だったらあとは隙だらけの脳天に不意打ちでもぶち込んでやる。
俺の声を受けたデイモスは、その驚異的な身体能力と瞬発力を生かし、一気に接近し事前に渡しておいたヒノキの棒を握り締め、ノーヴァの脳天めがけて振り下ろした。
瞬間、ガキンッという硬質な音が、この部屋に反響する。
「っしゃあ!!直撃ぃ!ナイスだデイモス!」
ガッツポーズを決めて喜ぶ俺。しかし、見るとノーヴァはまだ倒れていない。
どうやら左腕の鎌で攻撃を防いだらしい。
……だが、これはマズイ。
デイモスの攻撃速度に対応できるだけの身体能力をノーヴァも持っているということは、俺はまっっったく想定していなかった。
てっきり特殊能力に頼りきりで直接戦闘するのは不得意系の奴だと思ってた。
そう、完全にそう思いこんでいた。
…………肉弾戦まで平然とこなすとか、そんなのありなの?
チート能力にチートの重ねがけ?は?何それ、ふざけてんの?パワーバランスどうなってんの?
「……やっぱりこの世界は、どっかおかしいって……」
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