チートがなくても最強です!?〜最弱勇者はハードモードの異世界を策略と悪知恵で必死こいて生きていく〜

ソリダス

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第五章 アストラ編

第五十話 【急募】チート能力を持ったモンスターの倒し方

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 そんなわけで避難所に到着しました。

 連れてきてもらった場所は、日本でもよくあるような感じの大きな体育館だった。避難所として解放される場所は、やはり異世界といえども体育館が基本なのだろうなと、ふとそんな事を思う。


 早速中に入ってみると、そこには避難してきた大勢の人々が俯き、言葉を発さず静かに待機していた。

 避難者の表情はあまりにも暗く、空気も重く澱んでいるように感じる。


 ……まぁ、無理もない。自分たちが生まれ育った町や家があれほどめちゃくちゃになり、人々も魔王軍のせいで大変なことになったのだ。精神的にもかなりキツイだろうというのは、俺でも分かった。


 しかしながら、情報を収集しなければ俺達も彼らもどうしようもない。

 とりあえずあまり刺激しないように手分けして話を聞いて回った。

 だが、さっきの男達から聞いた情報と同じような情報ばかりで、これといって参考になりそうな事はなかった。

 ……強いて言えば『ガスの色が赤かった』という「そんなのどこで役に立つんだ?」ぐらいの情報しか新しい情報は得られなかった。


 俺達三人はここの施設にあるちょっとしたミーティングルームを借り、対策を考え始めた。


 俺はホワイトボードに今の俺達が把握している情報を全て記入していく。


 「……さて、どうするかなぁ……魔王軍の下っぱのことは一旦置いておくとして、問題なのは催眠ガスを使ってくるボスモンスターだよなぁ……」


 立ったまま腕を組んだ俺はホワイトボードに書かれた文字を読むが、これといって効果的な対策を思いつかない。

 デイモスとヴェルデは机を挟んで、向かい合う形で椅子に腰掛けている。

 少しすると、書かれたものをみつめながらヴェルデが話を始めた。


 「吸引した者の凶暴性を増加させ、その後に昏睡状態にする赤いガス……。どんな身体構造してるんだろう、1回でいいから解剖して中を見てみたいなぁ。……じゃなくて、かなり厄介な能力だね、私の魔法でもガスを無効化させるような能力を持った魔法はないし……」


 「えっ……『ぎゃくふう』とか『おいかぜ』みたいなブレス……じゃなくて、ガス攻撃を跳ね返す技ってないの?」


 ヴェルデのサイコパス発言には一切触れずに、淡々と俺が疑問に思った点をぶつける。


 「うーん……風属性魔法のエキスパートなら、跳ね返す事も出来るかもしれないけど……。そんな超がつくほど一流の魔法使いなんて、ここにはいないんじゃない?」


 ヴェルデの言葉を聞いた俺は、ブレス攻撃を跳ね返す技はないのか……と少なからずショックを受けた。

 某RPGの感覚では割と簡単に出来るイメージだったけど、実際はかなり高度な技術が要求されるんだな。

 こうして、知りたくなかった過酷な異世界の現実をまたひとつ思い知らされた俺は、発狂しそうになりながらも話を続ける。


 その時、デイモスからある意見が挙げられた。


 「ガスだったらお前らはガスマスクを付ければいいんじゃねぇのか?俺はアンデッドだからそもそも呼吸しなくても活動できるし、準備するならお前らの2つ分だけで足りっからよ。探せば2つくらいは手に入るだろ」


 …………あっ、そっか。ガスを吸わないためにはガスマスクを付ければいいんじゃないか!なんで今まで思いつかなかったんだ!


 早速、その意見を採用しよう!と言いかけたが、ヴェルデから「ちょっと待って」が入る。


 「いや、多分ガスマスクは効果がないよ。昏睡状態になった人の中には、ガスマスク付けてる人もいたらしいからね」


 「はあ!?ガスマスクが効かないガスなの!?何それ!!チートじゃん、ずりーよ!!そんな事されたら俺らに勝ち目ないじゃんか!」


 ずるいずるい!!とまるで駄々っ子のように文句を言う俺。異世界転移した勇者の俺にすらチート能力なんてないのに、魔王軍の、それも幹部を名乗っていない奴もチートを持ってるとか、不平等にも程があるだろ!


 しかし、今更そんな分かりきっている事でぶつくさ文句を垂れてもしょうがない。

 はぁ……と一度小さくため息をついて、気持ちを切り替える。


 「ガス……ガスか……何かないかなぁ……」


 俺が頭を抱えてブツブツ呟き、デイモスも目を瞑って腕を組み微動だにせず考え込んでいる中、唐突にヴェルデが俺に話しかけてきた。


 「ガスで思い出したけど、無駄にデカいガスボンベみたいなの持ってるよね?……ほら、その後ろに置いてあるそれだよ」


 ……ガスボンベ?と一瞬何を言っているのか分からなかったが、ヴェルデが指差した先を見て何のことかようやく分かった。


 「いやいや、だからガスボンベじゃないって。これは超強力殺虫スプレーなの」


 俺の後ろに置いてあった特大の殺虫スプレーを近くに引き寄せ、それをぺちぺちと叩きながら言った。


 「それの残量ってどのくらいなの?」


 「残量?……えーと、今は3分の2くらい残ってるよ。……なんか気になる事でもあったか?」


 俺がそう尋ねると、ヴェルデは何かを考えるようにしばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。


 「ちょっと思いついたんだけど、そのスプレーの中身と魔王軍のガスをぶつけたら混ざり合って効果が相殺されたりしないかな?」


 期待半分くらいで聞いていたが、俺の想像斜め上の意見が飛び出た。


 「……いくらなんでも、そりゃ無理だろ」


 んな事できるわけないだろと内心では思いながらも、なにかが引っかかる。……上手く言葉には表せないが、俺は何かを見落としているような気がしてならない。


 ぐぅぐぅとイビキのような呼吸音がデイモスから聞こえてくるが、俺はそれを完全に無視して思慮を巡らせる。


 ――考えろ、今持っている情報や使える物、現在の状況、全てを活かせば何が出来る?俺達はこれらをどう使えば魔王軍に勝てるのか……?

 現状、考えられる可能性は全て捨てちゃいけない。どこに勝ち筋が潜んでいるか、それを見つけるんだ。

 主観的な思い込みは排除して、客観的に全てを見るんだ――。


 しばらく無言で必死の形相で考え込んでいると、俺の頭にある作戦がポンと浮かび上がった。


 …………しかし、この作戦はたったひとつの条件がダメなら成立しない。だがもし、俺の考えた通りに進んだとしたら……ッ!


 それを考えた瞬間、俺の中にあった点と点が繋がり一本の線になった。


 「いや、ちょっと待てよ……いけるかもしれない!いけるかもしれない!!!」


 「んあっ!?……なんだよ太郎、急にでけぇ声出しやがって!」


 ビクッ!と体を跳ねさせたデイモスは、そのまま椅子からずり落ちながら叫んだ。


 「デイモスお前、やっぱり寝てやがったな?……ヴェルデに確認なんだが、さっき使った『チャッカス』とかいう名前の魔法……あれの射程ってどのくらいだ?」


 次にヴェルデが言う発言で、全てが決まるといっても過言ではない。そんな緊張から若干声を震わせながら、俺はそう訊いた。


 「射程?……『チャッカス』は私の目視できる範囲でしか魔法陣は展開できないけど、一回魔法陣が展開したら、後はどれだけ離れても大丈夫だよ?」


 ヴェルデは「何故そんな事を聞かれるのだろう?」と言いたげな表情で説明した。


 「能力だけじゃなく発動条件もえらくしょっぺぇなぁ!?……けど、それで充分だ!」


 それを聞いた俺は、ニタァ……と邪悪な、かつ意味深な笑みを浮かべた。……なんか俺、最近こんな笑い方しかしてないような気がする。気のせいだろうか。


 「……次はどんな作戦を思いついたんだ?」


 ニヤリと笑うデイモスに、俺もさっきの笑顔で笑い返しながら指示を出す。


 「……詳しい事は後でちゃんと言う!とりあえず今から作戦で使う物を言うから、それを急いで手分けして集めてくるぞ!3人がかりならあっという間だろ!」


 これを聞いたデイモスとヴェルデは、不思議そうな表情をしながらも、俺の言葉にこくりと頷いた。
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