チートがなくても最強です!?〜最弱勇者はハードモードの異世界を策略と悪知恵で必死こいて生きていく〜

ソリダス

文字の大きさ
53 / 81
第五章 アストラ編

第四十九話 終わらぬ策略

しおりを挟む
 ようやく町の入口へと辿り着いた俺達は、周囲の様子をゆっくりと見回しながら、一歩一歩を慎重に踏み出して、黒煙の影響でうっすらと靄が掛かったような状態の町へと足を踏み入れた……。


 そうして無言で町を見て回った後、俺達は一周して入口に戻ってきた。

 俺は呆然としながら思わず呟く。


 「……なんか、とんでもないことになってるな」


 俺が思わずそう言ってしまうほど、町は荒廃した様子だった。

 ほぼ全ての建物のガラスは割れ、瓦礫の山と化した建物も見受けられた。そして、火災によって炭化したため原型を留めていない建造物が町のあちこちにあり、そこからどす黒い黒煙が上がっている。この町に向かう途中で遠くから見えた黒煙は、これらが原因だとすぐに分かった。

 そして、これと同じような光景が町のあちこちに広がっていた。


 「ただ事じゃねぇのは見たら分かるが……一体何があったんだ?火事にしちゃあ範囲が広すぎるし、民間人の暴動にしてもここまでやる事なんざ考えらんねぇよなぁ……」


 「まぁ、魔王軍絡みなのは間違いないんじゃない?」


 「うーん……考えてもさっぱり分かんないな」


 俺達が話をしていたその時、前方から煤でボロボロになった服を身に付けた数人の男達が歩いてくるのが見えた。

 同時に彼らも俺たちを見つけたらしく、目が合うと彼らはホッとしたような笑みを浮かべてこちらに駆け寄ってくる。


  「やっとだ……!ついにハルマから救援が来てくれたのか!」


 「これで助かったぞ!」


 彼らはそう言って喜びを爆発させ、中には涙を流している者までいた。

 状況がサッパリ分からない俺達は、どういうことだと彼らに訊いてみた。

 話を聞くと、この町が何故このようなひどい状態になっているのか、そして彼らの言っていた言葉の意味もだんだんと分かってきた。


 

 ――――どうやらアンパン魔人がハルマを襲撃した時とほぼ同じタイミングに、この町『アストラ』にも魔王軍が攻めてきたらしい。

 そいつらは下っ端が10数名と、奴らをまとめる親玉らしきモンスターが1人いたそうだ。


 それだけ聞くと、敵の人数もそこまで多くないしなんとか出来そうな気もする。


 ……しかし、その親玉モンスターがかなりの強敵らしく、皆はそいつにやられたらしい。

 親玉モンスターは抵抗する人々に、容赦なくガスを噴射したという。それを吸ってしまった人は途端に辺り構わず暴れ出し、しばらくすると意識を失ってしまったそうだ。

 その人達は今も目覚めないままだが、不幸中の幸いにも今回の件で死者は出ていないという。


 そして、魔王軍の奴等は町の中を散々好き放題荒らした後、はるか昔に洞窟を改良して作られたと思われるダンジョンを占拠し、そこを拠点にして立てこもっているという。


 「……だけど、一つ気になる。なんで俺たちをハルマから来た救援だと思ったんだ?」


 デイモスがそう尋ねると、どうやら各市町村には、魔王軍等の明確な敵意を持った組織が襲撃に来た場合、近くの討伐隊に速やかに救援信号を送る装備があるという。

 今回もすぐさまそれを使用したが、一向に応援がなかったので見捨てられたんじゃないかと思ってた、と彼らは言った。


 ここまで話を聞いていた太郎は、すぐにピンと来た。


 恐らくはアンパン魔人が電波塔を完全に占領した後に、彼らは救援信号を送ったのだろう。

 そしてタイミング的にも、魔王軍はこの町を襲撃することは予め計画されていた。

 奴らも馬鹿じゃないのは、実際に戦った俺達は身をもって知っている。

 外部からの無線などの比較的弱い通信電波を妨害する事は、当然あいつらなら考えていたはずだ。

 さらに付近の討伐隊はハルマの事で手一杯になり、周辺の町の警備が手薄になることも簡単に想像がつく。

 ハルマという大きな本拠点が取れなかったとしても、そこに近い拠点を確保して徐々に端から崩していこうとでも考えていたのだろう。


 「本当にふざけやがって……アンパン野郎がっ!俺でもここまではやらねぇぞ、多分……!」


 と、デイモスの腹の中で消化されているであろうアンパン魔人に恨み言を言ってもしょうがないので、今は近くのダンジョンに立てこもっているとかいう魔王軍のモンスターのことを考える。


 心配そうに表情をくもらせる彼らに、俺は日々培ってきた営業スマイルでニッコリと笑いかけながら、こう言った。


 「私、魔王を倒す為の旅に出ている勇者の山田太郎といいます。私とここにいる私の仲間が来たからにはもう大丈夫です!安心してください!」


 俺がそう言うと、先程まで強ばりを見せていた彼らの表情が、若干だがほぐれたのが分かった。

 だが、すぐに魔王軍の所に向かう訳ではない。準備は必要だし、情報も多少は把握しておかなければならない。


 「……ですが、ここは一旦落ち着いて状況を確認したいので……うーん、そうですね……例えば避難所になっているような場所はありませんか?」


 「避難所、ですか?えぇ、それならこの近くにあります」


 「では、ひとまずそこに向かいたいのですが可能でしょうか?避難してきた方々からも貴重な情報を得る事が出来るかもしれませんし、それらを元に作戦も考えていきたいとも考えています。……もちろん、無理にとは言いません」


 ……まぁ、本心は全然違う。正直言うと、すぐにでも避難所に行って魔王軍についての詳しい話を聞きたい!!が本音だが、自分のしたいことを前面に出して必死に主張しても、ダメなものはダメだし、それにあんまりしつこく言うと彼らに不信感を抱かれかねない。

 ここは一歩引いて無理強いはしない大人の対応ってヤツで乗り切ることにした。


 「そうですね!分かりました、では近くの避難所まで案内します!」


 ……想像以上にアッサリと認めてくれた事に、思わず鳩が豆鉄砲を食らったような顔になってしまったが……まあ、ラッキーだったってことにしておこう。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...