チートがなくても最強です!?〜最弱勇者はハードモードの異世界を策略と悪知恵で必死こいて生きていく〜

ソリダス

文字の大きさ
63 / 81
第六章 カラマス編

第五十九話 グリーンハーブは用法・用量を守って正しくお使いください

しおりを挟む

 あれからしばらく周辺を探し回ってみたが、正常な人間は見当たらなかった。


 「こりゃダメだな、多分この街の奴らは全員やられてるぞ」


 デイモスは冷静にそう言った。それを聞いた俺は力なく項垂れて、ひとつため息をついた。


 「だろうなぁ……もしかしたらあの賢者もやられてるかもしれないし……っていうか、それよりもあの訳のわかんない化け物たちだよ!なんだよあれ!これじゃまんまゾンビ映画の世界じゃんか!ちょっと!誰かショットガン持ってきて!」


 ギャーギャーとやかましく騒ぐ俺のことは完全スルーで、ヴェルデがデイモスに問いかける。


 「アンデッドのデイモスなら、同じアンデッドのゾンビたちとも意思疎通が出来るんじゃないの?」


 しかし、これにデイモスはゆっくりと首を横に振った。


 「いや、無理だった。何度か試しては見たんだが全く反応がなかった……あいつらはゾンビでも、ましてやアンデッドでもない。――ただの人間だ」


 「んなわけあるか!思い出してみろ、あいつらどっからどう見ても完全にゾンビだったじゃねぇかよ!」


 「でもよ、それしか考えられねぇんだよ。どれだけ低能なアンデッドでも、こっちが問いかければ必ず何かは返すんだ。……太郎、ドラゴンゾンビは覚えてるか? 」


 突然出てきた『ドラゴンゾンビ』というワードに一瞬ピンと来なかった俺は一旦首を傾げたが、すぐにデイモスと初めて出会ったゾムベル共同墓地で遭遇したあの化け物のことだと思い出した。


 「……あぁ、はいはい!墓地で戦った時のやつでしょ?覚えてる覚えてる!」


 「あいつは意思疎通が出来なかったけど、返事は返ってきたって言っただろ?『かゆい……うま』って。あのレベルの知能のやつでもできることなのに、出来たてホヤホヤのゾンビが全く反応しないのはおかしいだろ」


 深刻な表情でデイモスは言った。


 ……うん、まぁ言いたいことは分かる。

 つまり、街中に溢れているゾンビ……デイモスの話からいくと、ゾンビと呼んでもいいのだろうか?

 そんな疑問が頭をよぎるが、呼び方はとりあえずゾンビにしておく。彼らがアンデッドである可能性は、デイモスの話を聞く限り、非常に低いといえるだろう。

 であればだ。一体何が原因で、この街の人間はあのような状態になっているのか。


 今、俺が考えている可能性としては、ざっくり2通りある。

 1つ目は、未知のウイルスによる感染が人々をゾンビのような状態にした、という……まぁ、ゾンビ映画とかアニメにありがちなパターンがひとつ。

 そして、2つ目の可能性が――


 「――麻薬に何か仕込まれてた、とか?」


 ヴェルデは軽く首を傾げながらそういった。


 「……先に言われちゃったけど、俺も麻薬が怪しいんじゃないかと思う」


 俺もヴェルデの意見には同意だ。

 ここの奴らは街の至るところで麻薬を使用していた。感覚的にはこの街の半分……いや、それ以上の人間が使用していたんじゃなかろうか。

 しかし、疑問は残る。

 それは、今ゾンビのような状態になっている者全てが本当に麻薬を使用していたのかどうか、という点だ。

 もし、ゾンビ全員が麻薬を使用していたということであればこれ以上ゾンビが増えることはなく、討伐隊やらなんやらが直に収束させるだろう。


 だが、ケースとしてもっとも最悪なのは『噛まれたら伝染る』こと。


 万が一、伝染るパターンだった場合はゾンビの数が無尽蔵に増えるだろうし、何より俺も噛まれたのが非常にヤバい。死ぬのは嫌だが、死ぬまで死肉を貪り食らうゾンビにはなりたくない。


 加えて、『噛まれたら伝染る』が仮に正解だったとして、その原因は一体何なのか。

 ゾンビが対象を噛むことで体内の麻薬を流し込んでいるのか?それとも『噛み付く』という行為を通して対象に魔法や呪いをかけている?


 ……これ以上考えてもきりがない。


 そう判断した俺はこれらの可能性についてはきちんと2人と共有し、その後で、


 「ああああああ誰かああああああ助けてえええええええええ」


 絶望しすぎて思わず叫んじゃった。


 「うるせぇぞ!!あいつらにばれたらどうすんだ!!」


 「そうだよ!!もうちょっと静かにして!!……そんなに不安なら、感染してるかどうか私が調べてあげようか?」


 「え!?調べられるの!?」


 ヴェルデからの思わぬ提案に俺が目を大きく見開いて、驚きの表情を浮かべる。


 「できるよ~!……まだ1回も試したことないけど……。んじゃ早速やってみよう!」


 「あれ?今なにか聞こえたような?あれ?ちょっ、ま――」


 制止を呼びかける俺の声などまるで聞こえていないヴェルデは、そのままの勢いで――なぜかやたら嬉しそうに――俺に向かって魔法を詠唱した。


 「――ヴェルデ魔法!『トゥルーアンサー』!」


 その直後、俺の頭上には


 『〇』『✕』


 が、突如として浮かび上がった。


 唖然とする俺とデイモスをよそに、ヴェルデは「やったー!成功だー!」とピョンピョン飛び跳ねて喜んでいる。

 その喜んでいる様子を見て、ヴェルデは俺を実験台として魔法がきちんと発動するかを試したのだろうとすぐに察した。
 肝心なことにちーっとも気が付かない恋愛漫画の鈍感主人公じゃないんだから、さすがに気付くって。

 しかもヴェルデ、俺を魔法の実験台にしたのこれが初めてじゃないから。ちょいちょい俺を実験台にしてるからね。


 …………それについては考えてもしょうがないので、さっさと本題に入ろう。


 俺は思わず頭上の〇✕を2度見して、ポカンとした表情のままそれを指差した。


 「あの……すいません、ヴェルデさん。俺の頭の上にあるこれは……なんですかね?」


 わりとザックリした質問をヴェルデに投げかけた。若干混乱した俺の脳では、これ以上詳細に言語化することは難しかった。これはしょうがない。

 そんな俺に対し、ヴェルデはニッコリと笑ってハキハキ答えた。


 「これ?私の魔法!」


 うん、それは知ってる。

 俺が求めている答えとはだいぶ違う答えが返ってきた。やっぱり少し抽象的すぎたと思った俺は、少しだけ落ち着いた頭を動かしてもうちょっと具体的な質問をする。


 「ヴェルデが発動させた魔法なのは分かった。それで、この魔法ってどんな効果があるのかなーってことも聞きたいんだけど……」


 「あ、そっちか!この魔法を簡単に説明すると、どんな質問にも1問だけ〇✕で答えてくれる魔法だよ!」


 「なにそれすごい!そんな便利な魔法があったのかよ!どんな質問にも答えてくれるとか、めっちゃ使える魔法じゃん!」


  やたらと大きな声で興奮気味に喋る俺とは対照的に、ヴェルデは目を左右に泳がせながらボソボソとした小さな声で話し始めた。


 「……その魔法、実は一ヶ月に一回しか使えないの。しかも、成功率が50%しかないから『ダメかもしれないな~』とか思ってたんだけど、まぁ成功したから終わりよければすべてよし!ってことで!」


 「まだ終わってねぇけどな。……で、なんて質問するんだ?太郎の体内に人間をゾンビのような状態にする麻薬があるか、とかか?」


 デイモスの冷静な指摘が入る。


 「いや、まだ噛んだ相手に麻薬を流し込んでいると決まったわけじゃないから、その質問だと――」


 『正しい結果は得られないんじゃないか?』、俺がそう言いかけた時。


 「――あぁ、内容は別に『太郎はゾンビみたいになる何かに感染してますか?』くらいで問題ないよ」


 「……えらくザックリしてるな」


 「ザックリしてても大丈夫、これは魔法だからね。魔法がこっちの意図を察知して、なんか、こう、良い感じの答えをくれるから」


 「……あぁ……魔法か……」


 ………………。ご都合主義?いえ、知らない子ですね。


 とにかく!俺は余計なことはこれっぽっちも考えず、頭上の〇✕を見上げてこう呟いた。


 「『俺はゾンビみたいになる何かに感染してますか?』」


 俺が言い終えたその瞬間、〇が激しく点滅した。


 「あ、感染してるね」


 ヴェルデがボソッと呟いた声が、やけに響いて聞こえた。


 ………………。


 

 ………………。


 

 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!太郎が観葉植物食い始めやがった!気をしっかり持て!」


 目の前のグリーンハーブに思い切りかぶりついた俺を、デイモスが必死の形相で引き剥がそうとする。やけに硬いがそんなことは気にしてられない。今は回復することが最優先だ。

 俺はデイモスを振りほどき、視界に入った2つ目のグリーンハーブに飛びついて豪快にむしゃぶりつく。


 「うるせぇ!!もっとグリーンハーブ持ってこい!……やべぇ、目を瞑ると赤色の心電図が見えてくるような気がする。あ、ハンドガン装備しなきゃ」


 「やべぇぞ、幻覚まで見えてやがる!……コイツっ!こんな時だけ馬鹿力出しやがって!一旦冷静になれ!」


 俺を羽交い締めにしようとするデイモスをそのまま振り回し、フードファイターも真っ青の勢いで次々とグリーンハーブを食していく。


 そんな時だった。俺たちの背後から、どこかで聞いたことのある女性の声が聞こえてきた。


 「――おっ。……って、なんだあんたたちか。てっきり死んだかと思ってたんだけど」


 俺たちは声が聞こえた方向を振り向き、その声の主を見たヴェルデが思わず驚きの声を上げた。


 「……ッ!だ、ダリルさん!?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...