チートがなくても最強です!?〜最弱勇者はハードモードの異世界を策略と悪知恵で必死こいて生きていく〜

ソリダス

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第七章 サダルア編

第七十四話 魔導帝国サダルア

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 あれからダリルに、これまでのかくかくしかじかを話した。
 俺が話している時は時折頷いたり、目をまん丸にしたりしながら基本は静かに聞いていた。
 だが、話し終えると、これ以上ヤバい話はもうないよね?もうないよね?と軽く5回は確認された。

 それに対し、多分大丈夫!と自信満々な表情で不安になる発言を放ち、サムズアップする俺。
 「こりゃあ私が考えてたより、よっぽどヤバい船に乗っちまったなぁ……」という呟きは聞いてないフリをして、話を進める。

 「それにしても、よく今まで生きてこれたね」
 
 唐突にダリルから投げかけられた言葉に、思わず顔を見つめるが、ダリルの視線の先はデイモスがいた。
 どうやら俺ではなくデイモスに言っているようだ。デイモスはスッと目を細めて問いかける。

 「……どういう意味だ?」

 「賢者はアンデッドをそれはもうバチバチ敵視してるから、私じゃなかったら多分有無を言わさず殺し合いだったと思うよ。……というより、世間一般からも敵として思われてることがほとんどだし」

 それに、と付け加え、今度は俺の方を向く。

 「中には能力を持ってなかったり、魔法を使えない者を人間とすら思わない国も少なくないってのに、ここまで旅を続けてこれたって相当運がいいよ」

 それを受けたデイモスはフンと鼻を鳴らす。

 「随分とまぁ、分かりきったことを言うんだな。……だが、安心しろ。どうやら賢者とやらはアンデッドと人間の判別がつかないらしいからよ」

 そう言ってデイモスはまっすぐにダリルを睨みつける。

 いやあああああああ!!!ヤバいって!ギスギスが!ギスギスがマジヤバい!!どのくらいヤバいかというとマジヤバい。

 一触即発の状況にパニックに陥る俺。
 ヴェルデも、やべぇぞやべぇぞと2人の顔を交互に見つめ右往左往する。
 そんな俺たちの様子に気が付いたダリルは、ハッとした表情の後に慌てた様子で首を横に振る。

 「ちょ、待って!違う違う!別に喧嘩を売ってる訳じゃないから!ただ、こういうめちゃくちゃ絶望的な状況の中で、魔王軍たちとも戦ってきて生き残ってるってヤベェなーっていう雑談をしたかっただけで!!」

 だとしたら、あんたのコミュニケーション能力の方がヤバすぎだろ。雑談力皆無じゃねぇか。
 そりゃデイモスとヴェルデも唖然とするわ。

 思わぬ所でコミュ力が死んでることが露呈した新メンバー。

 思わず「おい!物理的に死んでる奴とコミュ力が死んでる奴!死んでる者同士仲良くしろよ」と言いかけたが、タコ殴りにされて死人が一人増えかねないなと思った俺は、口から出かかった死の呪文を飲み込んだ。

 んな事してるうちに町の出口へと辿り着いた俺たち。
 出口へ着いたはいいが、次の目的地を決めていなかったことに気付いた。

 出口の門をくぐりながら
 「ねぇ、次はどこに行こうか」
 と言いかけたその時。

 一体どこに潜んでいたのか、黒装束に身を包んだ20人近い集団に一瞬で囲まれた。

 「――まるで気配を感じなかったね」
 「恐らく隠密系の魔法ですね。隠密系はそこそこ珍しいですから、もう少しデータの収集を……」
 「お前は魔法が絡むと本当におかしくなるよな」

 話をしながらも、すぐさま戦闘態勢に入る俺以外の3人。
 一方、情けなく甲高い悲鳴をあげて、3人の後ろにササッと隠れる俺。
 …………。
 おい、そんな目で俺を見るな。分かってる。俺が一番よく分かってるから。泣きそうになるからもうやめて。

 そうして俺が仲間たちに冷たい視線を注がれていると、黒装束の中のひとりが1歩前に出てきた。
 
 「勇者殿御一行とお見受けする。我々と一緒に来てもらおう」

 ……こいつら、俺たちを勇者だと分かって接触してきたのか。
 その時点で警戒度は俺の中で数段階跳ね上がる。
 だけど、話は通じそうな雰囲気があるので、ダメ元で恐る恐る聞いてみた。

 「……あの、どちらさまですか?」

 「我らは魔導帝国サダルアの使いである。そして、これは皇帝陛下の御命令であり、拒否権は認められない」

 「何勝手なことを言ってんだ……ッ!」

 「あっ」

 デイモスがキレてるその横で、国の名前を聞いたダリルは何か思い当たるものがあったらしく声を上げる。

 「『あっ』て何。……なんだろう、めちゃめちゃ嫌な予感がするんだけど」

 「さっき魔法を使えない奴を人間と思わない国があるって言ったでしょ?その代表例が、まさにサダルア」

 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!」
 
 これ以上ないってくらい最悪の展開に、思わず頭を抱えて絶叫する。
 なんだろう、やっぱり『力を持ってない奴が魔王軍幹部やらを倒せるわけがないだろう!はい嘘松!』とか『魔法とか能力を使えないということ自体が罪である!』っつー言いがかり的なことを言われるのだろうか?
 考えれば考えるほど想像は最悪の方向へと進んでいく。
 そんなテンションだだ下がりの俺を見て、何故か困惑した雰囲気の黒装束達。

 「何か勘違いしているのかもしれないが、皇帝陛下は罰を与えるために呼んでいるのではない。むしろその逆。魔王軍に対するこれまでの功績を称え、褒美を取らせるとのこと」

 「あ、そうなの?マジで?」

 「……だが、もしこれ以上抵抗するようであれば――」

 「――我々も力ずくで連行しなければならない」

 そう言うと黒装束たちは手のひらを俺たちに向けた。すると、その直後に魔法陣が展開し俺たちを照準に捉える。

 「……どうするの、太郎?」

 ヴェルデが背後に隠れている俺に振り返り、訊いてくる。

 俺は顎に手を当ててうーんと唸り、少し考える。

 「ま、まぁ?ここで争うのもお互い望まないことだろうし?それに、皇帝陛下のご好意を無下にするのも申し訳ないし?俺はいいかな~と思うんだけどね?」

 そう、これは仕方なくだ。
 相手一人ひとりの戦力が分からない上、単純に数的にも不利だ。

 だったら、ここは丸く収めて皇帝陛下から褒美をチャチャッと貰って終わりにした方がいいでしょ?
 無用な争いは避けるに越したことはないからね。

 ね?ね?と同意を求める俺を見つめる3人の視線がやたら冷たかった気がするが、それはきっと気のせいだろう。

 ――そんなわけで、サダルアへと向かうことになった俺たち。
 だが、この時は知らなかった。
 
 これから待ち受ける未だかつてないほどの絶望と大事件を。

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