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第七章 サダルア編
第七十三話 ヤバい時ほど感じる報連相の大切さ
しおりを挟む「――え、あんた魔法使えないの?」
人のいない町の通りを並んで歩くダリルから、呆気にとられたような声が上がる。
というのも、これから仲間として旅をするにあたり、俺が魔法も特殊能力も使えないことを話しておかなければと思ってカミングアウトしたからだ。
――俺は自分が相当足手まといな存在であることは自覚している。
だからこそ、こういうヤバい情報ほど早めに共有しておきたかったのだ。
もし、いざという時に
「あ、ごめーん!今まで黙ってたけど俺、実は魔法も能力もなーんも使えないんだよネ!^^だからサッ!俺を助けてくれないカナ?」
なんて言った日には、相手に芽生えるのは俺に対する純度百パーセントの殺意だけだろう。
一瞬でソウルジェムも真っ黒に濁るに違いない。
……とまあ、色々御託を並べたが、『なんで今さらそんな大事なことを話すんだ!』とか『ダリルが仲間になる前に話しておくべきことでしょう!』なんて意見もあると思う。
いや、もう全くもっておっしゃる通り。
正論すぎてぐうの音も出ません。
何を言っても言い訳になってしまうんですが、しいて話してなかった理由をあげるとすれば。
完全に忘れてました。
というのも、俺はてっきり言ったもんとばかり思ってたんです。そんな重要な話をしてないわけがないと。
しかし、よくよく思い返してみると、『多分俺言ってないっぽい』という不安に駆られ、ダリルに聞いたら案の定『初耳なんだけど』との回答を得るに至ったわけです。ハイ。
「あの、本当、すいませんでした」
俺は額を地面に接吻させながら、許しを乞う。
そんな俺を無言で見つめるダリルと、ヤバいんじゃないかという表情であたふたしているデイモス、ヴェルデ。
「す、すまん!別にわざと言わなかったわけじゃないんだ!」
「そうなの!本当にうっかり忘れてただけで!」
……2人とも、俺のフォローに入ってくれるのはすごく嬉しいんだけど、3人揃って「わざとじゃないよ!」は、なんだか余計に怪しく見えないか……?
そんな不安を感じる間、ダリルは無言のまま。
それになんだか俺への視線も、ドンドン鋭くなってる気がする。
……こうなったらしょうがない。
ダリルから「仲間になるのは無かったことに」と言われても、俺たちは何も言えない。
沈黙の時間が続くにつれ、俺たちの中で諦めの気持ちが大きくなっていく。
そして、そんな空気も限界に達しようとしていた時、ダリルから不意にプッと吹き出したのが聞こえた。
え?と目をまん丸にした間抜け面で、ダリルを同時に見つめる俺たち。その顔が余程ツボに入ったのか、今度はケラケラと軽やかに笑った。
何が何だか分からない俺たちは、目をパチクリさせてお互いを見やる。
そんな困惑する俺たちをよそに、ダリルはひとしきり笑い終えると嬉しそうな笑みを浮かべた。
「やっぱりあんたら面白いわ。……あんたら2人にとっちゃ『魔法が使えない』ことはうっかり忘れちまう程度のことなんだね。今までそんな奴ら見たことないよ」
ダリルの予想外な反応を受け、デイモスとヴェルデは二人揃ってひょっとこみたいな顔になる。
「それに、この2人にそこまで思わせるあんたにもさらに興味が湧いた」
ニヒと笑ったダリルが、スッと手をこちらに差し出してきた。
「それじゃあ改めて、これからもよろしく」
「ウ、ウィッス」
ダリルが差し出してきた手を、俺は困惑と照れがないまぜになった、ひょっとこみたいな表情を浮かべながら握手した。
その後、俺は照れを隠すようにぎこちなくはにかみながら軽口を叩く。
「い、いやぁー!けど賢者とゾンビと魔法使いか~!より一層、勇者パーティっぽくなってきたな!まぁ一人、ジャンルがだいぶ違うのがいるけどな」
そういってニヤニヤとデイモスを見ると、デイモスもなんだとコノヤロウと食いついてくる。
そんな俺たちの様子を微笑みながら見つめるヴェルデと、眉間に皺を寄せて困惑した表情を浮かべるダリル。
その表情が気になった俺は訊いてみた。
「ん?……どうしたの?なんか気になることでもあった?」
「今の話のゾンビってなんのこと?」
「あぁ、実はデイモスはゾンビなんだ。だから、さっき首チョンパされたけど、こうしてピンピンしてるのは……あっ」
ここまで話したところで、俺は今の今まで『デイモスがアンデッド』だと伝えるのを忘れていたことに気が付いた。
というか、アンデッドって人類の敵みたいな扱いじゃなかったか……?
アンデッドへの認識がどの程度かも分からないのに、こんなサラッと伝えていいものだったのか……?
途端にサーっと血の気が引く俺。
見るとデイモス、ヴェルデもハッとした後に『完全に忘れてた……!』みたいな顔をしている。
そして、ダリルに至ってはピクリとも表情を変えずに俺を見て
「初耳なんだけど」と、一言。
あっ、ここさっき見たのと同じだ!と、場面のデジャブに思わず進〇ゼミの生徒みたいな感想が、一瞬だけ頭の中をよぎる。
だがすぐに、今直面している危機的状況に頭がいっぱいになった俺は、目を左右に激しく泳がせながら
「あ、あぅ……」
と、言葉にならない呻き声をあげることしか出来なかった。
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