確かに愛はあったはずなのに

篠月珪霞

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アドリエ嬢の養子縁組、後宮入りは滞りなく行われた。
他でもない、私が主導で手続きしたのだから、不備などあるわけがない。
当の本人は、議会の決定を告げられ、諦めたように受け入れたらしいと聞いた。この期に及んで反発するほど、愚かでなくて幸いだ。
彼女の代わりの秘書官、王太子妃教育に携わる教師も手配済み。
しばらくは様子見かしら。たぶん、私の見る限り、予想を超えることはないだろうけれど。

社交界の方も、思った以上に反響があったようで、巡り巡って私にも詳細が届いているほど。
第二側妃の王子と王女たちは肩身の狭い思いをしているとか。面罵されるより、陰で何を言われているか分からない方が精神的にダメージを受けるだろうし。
なまじ優秀なだけに、周囲に鈍感にもできていないのが却って仇になったのかもね。
王位を狙っていただろうに、今回の件で王位から遠ざかったことに、第二側妃は歯噛みしているとかいないとか。
噂は噂でしかないが、事実無根ならともかく、紛れもなく事実であるから、評判だとか人望とかに割と響いたりする。
第二側妃の元に、どれだけの人が残るのか。私は高みの見物といきましょう。

そして、殿下はというと。
アドリエ嬢に想い人がいるというのと、王太子という立場から、彼女は決して手に入らない花だと理解はしていた。
私との婚姻も、自身の責務故に拒否しなかった、いや、できなかったことが、その表れでもある。
通常、側妃でさえ、伯爵以上の身分が必要とされる。子爵家では、王家に嫁す妃の後援には権力、財力共に不足だからだ。

それ以上に、相愛の相手がいるというのが、フィリクにとっては大きかっただろう。
思いがけず、密かに愛している相手を迎えることになり、浮かれる気持ちになるのは分からないでもない。彼女を悲しませたくない一心で、側妃に反対していたとしてもだ。
多少の後ろめたさや罪悪感より、彼女を迎える喜びの方が大きいのね。結果的に苦しめることになっても。

「──この書類、すべて王太子執務室に返却して」
「かしこまりました」

とはいえ、回ってきた書類の不備が多すぎる。気分が高揚するのはいいとしても、仕事に支障をきたすようでは話にならない。
今までは、多少の誤字や数字の間違いは、私の方で訂正して各所に回していた。
しかし、これからはそんなフォローをしてやる義理も義務もない。仕事が滞ろうが、私の知ったことでもない。
自分の仕事以上のことは一切しないと決めている。

今日は、フィリクとアドリエ嬢の初夜だ。
…本当に、もう何とも思わないものね。














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