エレメント・ルーツ〜世界の全ては属性(エレメント)でできていますが【無属性】のボクは何者ですか?〜

星野 大介

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第0話 プロローグ 〜始まりの悪夢〜

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「あ、お母さんだ! 今行くよ~!」

 ある日の夕方、とある山中の村の広場で友達と遊んでいた白髪の少年は、自分を迎えにきた母親を見つけると、すぐに手を振りながら駆け出した。

 その途中、少年は余りにも大袈裟に手を振りながら走っていたせいか、バランスを崩してしまった。

「うわぁ!」

 まあ、幼い子供にはよくある微笑ましい光景だ。
 『あちゃあ、これは泣いてしまうかな?』なんて周りにいた村人も思ったことだろう。

 そのまま少年は手から転んでしまった。

 ——次の瞬間。

 少年を中心に山はその一角を失っていた。

「うぁ……げほっ、ごほっ!」

 少年は気がつけば、一糸纏わない姿になっており、苦しげな呼吸をしながら体を抱きしめるようにうずくまっていた。

「な……に……おき……? っぁ!」

 少年にはいったい何が起きたのか理解できない。

 今わかるのは、体の内側から襲い来る感覚による痛みと苦しみだけ。
 少年はそれらに我慢できず、激しい呼吸を繰り返す。

それはまるで、風船を内側から破裂させてしまう程の空気が注入されるような感覚だった。

 少年の周囲は、何もない・・・・

 先程まであったはずの村の建物や、広場。

 ……そして村人達さえも。

 木々が生い茂り、川がせせらいでいた自然豊かな山の一角は何も無くなってしまっていた。

 正確に言えば、少年を中心にまるで隕石が落ちたような、もしくは大爆発が起きたように大地はえぐれクレーター状になっていた。
 それは直径にして数キロメートルはあろうクレーターである。

 だが、不可解な点があった。
 クレーターとの境目より外には、本来から存在していたであろう木々や岩などが、何事も無かったように・・・・・・・・・・その場に佇む様に存在している。

 更に驚くべきは、クレーターに差しかかっていたであろう木々の枝をはじめ、
岩などあらゆる物がクレーターを境にまるで初めから存在していなかった・・・・・・・・・かのように途切れているのだ。

 少年は、必死に苦しい呼吸を繰り返しながらも、先程まで確かに居たはずの存在を探すために何度も辺りを見回す。

 ……しかし、少年の探すものは何一つ目に入ることはなかった。

「そんな……うそ、うそだぁ! お母さん! 村長! みんなぁ!」

 少年は泣きじゃくりながら、呼吸が苦しいことも体の痛みも無視して必死で何度も叫び続けた。

 ……だが無情にも、音も声も何一つとして少年の元に帰ってくるものはなかった。

「どう……して……こんな……こと……に……」

 ——本当に突然の出来事だった。

 それが起きてしまった原因を、少年は幼いながらも考えようとする。

だが、体中を走る徐々に強まってくる痛みと苦しみはそれすら許してくれなかった。

 唯一少年に理解できたことは、この惨状を引き起こしたのは自分だということ——。

「ボクももうすぐ……そっちに行くのかな……? そうしたら、みんな許してくれるかなぁ……?」

 薄れゆく意識の中。

「ごめんなさい……」

 そう少年は呟くと、完全に意識を手放した——。
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