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第4話 日常リバーシ〜裏〜
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「ということで、先に向かっている調査隊からの報告通りであれば、『アスラカチミオ』の遺跡で『アレ』が見つかる可能性は高いです。それを今日ボクが回収しに行くという手筈に……なにか気になる点でもありますか?」
あれから、『ディールーツ』の頂点、ガウスの元で任務の計画を報告していたクリアは、コーヒーを口にしながら話を聞くボスの顔が徐々に曇っていくのに気が付いた。
ガウスは基本寡黙で通っているが、クリアの前だと意外と感情をわかりやすく出してくれる。
他の部下の前でそういったことをしているのを見たことも聞いたこともないので、クリアは密かに本当の家族のように扱って貰えてるのではないか、と内心喜んでいたりするのはここだけの話だ。
「うむ。実は先程、別のコーヒーカップが割れてしまってな。有り得ないとは思うが今回の件、十分に心して任務に当たりなさい」
思わず「え、そんな事で心配してくれるんですか?」と声に出そうになったが、なんとか喉元で止めることができたクリアは顔にも声にも出さないで済んだ。
今の言葉を普段のボスを知る他の人が聞いたら、どんな反応をするのだろうか——。
「大丈夫ですよ。ボクの【力】はボスもよく知っているでしょう? でも、その忠告はしっかり頭に入れておきますね!」
意外なガウスの心配は、クリアの気分を高揚させるのに十分だった。
上機嫌でガウスに一礼すると、クリアは部屋を後にした——。
ボスの部屋を後にしたクリアが向かっているのは、空間学部門の研究室だった。
『ディールーツ』は世界的に事業に成功している組織だけあって、設備が充実しており、研究も進んでいる。
特に、上級役職のみ立ち入ることが許されるエリアには、世界中が喉から手が出る様な設備や技術が存在していた。
今回クリアの目的である「空間湾曲装置」も、その中の一つだ。
この装置は、世間ではまだ発見されていないとされる珍しい分子を利用し、その作用で二箇所の空間を繋げて一瞬で本部から目的地へ移動できる、という大変便利な装置なのである。
……数少ない欠点としては、一方通行式なので本部に戻ってくるには普通に移動して帰ってこないといけないことぐらいだろうか。
クリアは、この扉状の移動装置のことを親しみを込めて「どこへでもドア」と呼んでいた。
「さて、今日もよろしく頼むよ、どこへでもドア君」
クリアは友人に声をかけるかの様に言いながら、『アスラカチミオ』の座標を装置に設定し、装置を起動させる。
『アスラカチミオ』は、本部からかなり遠い異国の片隅に存在する森の中の小さな村と、遺跡があるだけの場所だ。
装置は少々時間がかかったが、遠い空間を見事に繋げてみせた。
その成功の証として、毎度のことドン! と大きな音を立てるのだ。
クリアは忘れ物がないか今一度確認をし、準備万端である事に「うん」と頷いた。
「よし、それじゃ行ってきます」
誰がいるわけでもないのに挨拶をしながら、クリアは装置の扉を開き、一歩踏み出してくぐり抜けた。
すると、次の瞬間にはクリアの目の前にいかにもな遺跡が聳え立っていた。
それを見たクリアは、少しだけ調査員としての心をくすぐられた気がしたのだった。
あれから、『ディールーツ』の頂点、ガウスの元で任務の計画を報告していたクリアは、コーヒーを口にしながら話を聞くボスの顔が徐々に曇っていくのに気が付いた。
ガウスは基本寡黙で通っているが、クリアの前だと意外と感情をわかりやすく出してくれる。
他の部下の前でそういったことをしているのを見たことも聞いたこともないので、クリアは密かに本当の家族のように扱って貰えてるのではないか、と内心喜んでいたりするのはここだけの話だ。
「うむ。実は先程、別のコーヒーカップが割れてしまってな。有り得ないとは思うが今回の件、十分に心して任務に当たりなさい」
思わず「え、そんな事で心配してくれるんですか?」と声に出そうになったが、なんとか喉元で止めることができたクリアは顔にも声にも出さないで済んだ。
今の言葉を普段のボスを知る他の人が聞いたら、どんな反応をするのだろうか——。
「大丈夫ですよ。ボクの【力】はボスもよく知っているでしょう? でも、その忠告はしっかり頭に入れておきますね!」
意外なガウスの心配は、クリアの気分を高揚させるのに十分だった。
上機嫌でガウスに一礼すると、クリアは部屋を後にした——。
ボスの部屋を後にしたクリアが向かっているのは、空間学部門の研究室だった。
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特に、上級役職のみ立ち入ることが許されるエリアには、世界中が喉から手が出る様な設備や技術が存在していた。
今回クリアの目的である「空間湾曲装置」も、その中の一つだ。
この装置は、世間ではまだ発見されていないとされる珍しい分子を利用し、その作用で二箇所の空間を繋げて一瞬で本部から目的地へ移動できる、という大変便利な装置なのである。
……数少ない欠点としては、一方通行式なので本部に戻ってくるには普通に移動して帰ってこないといけないことぐらいだろうか。
クリアは、この扉状の移動装置のことを親しみを込めて「どこへでもドア」と呼んでいた。
「さて、今日もよろしく頼むよ、どこへでもドア君」
クリアは友人に声をかけるかの様に言いながら、『アスラカチミオ』の座標を装置に設定し、装置を起動させる。
『アスラカチミオ』は、本部からかなり遠い異国の片隅に存在する森の中の小さな村と、遺跡があるだけの場所だ。
装置は少々時間がかかったが、遠い空間を見事に繋げてみせた。
その成功の証として、毎度のことドン! と大きな音を立てるのだ。
クリアは忘れ物がないか今一度確認をし、準備万端である事に「うん」と頷いた。
「よし、それじゃ行ってきます」
誰がいるわけでもないのに挨拶をしながら、クリアは装置の扉を開き、一歩踏み出してくぐり抜けた。
すると、次の瞬間にはクリアの目の前にいかにもな遺跡が聳え立っていた。
それを見たクリアは、少しだけ調査員としての心をくすぐられた気がしたのだった。
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