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第59話 知るべきこと1
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クリアとヒカリが中に入れば、そこには必死な形相で文献を次々と読み漁るガウスの姿があった。
どうやらあまりに読み漁ることに夢中で、返事はしたものの入ってきた二人が誰なのかを認識するのが遅れたらしい。
かけられた声の主にはっと気付いたガウスは、恐る恐るこちらに視線を向け視界に二人を入れる。
——瞬間。
ガウスは自らの手をバンッと大きな音を立てるほどの勢いで机につき立ち上がる。
その拍子に机の上に読み終わったことで雑に重ねられていた文献は幾つか床に落ちてしまった。
しかし、そんなことはどうでもいいと言わんばかりにクリアを見てガウスは声を震わせながらも声をかけてくる。
「クリア……! 目を覚ましたのか! そうか、そうか……!」
「おとう……ボス、ご心配をおかけしました!」
ガウスの声色と言葉から、必死に文献を読み漁っていたのはミヤとクリアの為だとわかり、クリアはつい「お父さん」と呼びそうになる……が、ヒカリの前なので何とか抑えて返した。
しかし、クリアは本気で心配してくれていたらしいガウスの気持ちに喜びを感じ、心の中では若干泣きそうになっていた。
だが今は時間が一秒でも惜しいクリアは感動するのもそこそこにし、本来この部屋に来た目的を果たすために話を切り出した。
「ボス、お気持ちはとても嬉しいのですが、今はミヤのことについて報告と聞きたいことがあって参りました」
「おお、何かわかったことがあるのか⁉︎ ……そして、彼女がそれに関係あると?」
ちらりとガウスがヒカリの方に目をやれば、ヒカリは緊張しながらもペコリとお辞儀をして返した。
(クリア、流石にボスの前では恥ずかしいよ……!)
小声でヒカリに言われ、ここではじめてヒカリと手を繋いだままだったことをクリアは思い出し、慌てて彼女の手を離した。
「そ、そうです。ヒカリもまた、ミヤと同じ被害にあっているので」
「ふむ、それでミヤが目を未だに覚まさない理由はわかったのか? それと同じようにヒカリ君が被害に遭ったのにも関わらず普通に過ごせている理由も」
ガウスの目はいつも以上に真剣な眼差しだった。
それほどミヤのことに対して真摯に考えているのだろう。
「確証は無いのですが、原因自体は判明しました。今のミヤには、あの娘を構成する上で必要なエレメントの一部が欠如しているのです」
「それはどの属性のエレメントだ?」
「それがわからないのです……。ボクが人を再構築する際に唯一詳しく知らない種類のエレメントでした」
「ほう……未だにこの『ディールーツ』の研究でも触れたことの無いエレメントがあると言うのか」
ガウスの言葉に、クリアは頭を縦に振って返した。
現在クリアが知識として知っているエレメントの属性は、十六種類である。
物理系統と呼ばれるエレメントである、水・木・氷・岩・土・金・生。
そして現象系統といわれるエレメントである、火・風・雷・力・光・闇・音・間・負。
ちなみに、間属性は空間を司る属性で、クリアが多用する『どこへでもドア』の動力源になっているエレメントである。
そして負属性は、体の痛みなどを生み出す詳しい研究が進んでいない、とりあえず人の体に良くない影響を与えるエレメントの暫定的な名前だ。
そしてそれらとは別に、今回の件で上がっている未知の属性と、『セインテッド』王家に伝わるつい最近味わったあの謎のエレメントの存在があることはわかっているのが現状だ。
「今回、ヒカリが同じような被害に遭い何故無事だったのかはひとまず申し訳ないですが置いておいて。それより重要なのは、ヒカリのとある証言でした」
「それは?」
「ヒカリも、攫われた時の前後の記憶が無いと言っていました。つまり、ボクが知らない今回のエレメントは恐らく、人の記憶や意志に関わるものなのでは無いかと」
クリアの発言に、ガウスだけではなくヒカリも驚いた表情でクリアを見る。
そんな二人の反応を気にせず、クリアは話を続ける。
「これはボクの推測にしか過ぎないのですが……ボスなら何か知っているかもしれないと思いここにきた次第です」
「……なるほど。しかし悪いが思い当たるような文献や知識は私も持っていないな。すまない」
「いえ、ボクもいきなり聞きに来てすみません……」
クリアはボスの返事に少しだけ間が空いたことが少しだけ気になったが、何か引っかかる知識がないか考えていたのだろうと流す。
「いや、気にしないでくれ。ともかく『セインテッド』での件、クリアにもヒカリ君にも苦労をかけてしまったな。すまなかった」
「い、いえそんな! 私の場合は社長が関わっていたわけでは無いので謝られることなんてありません!」
ガウスの謝罪に慌ててヒカリは手を振りながら否定する。
「そういえば、ボスは『セインテッド』とはこれからどう接していくおつもりなんですか?」
ふとクリアは遅れながらも、重要なこの話題のことを思い出し確認する。
あの時は流れで逃げるようにこの場所へと飛んできたが、祭りなどで『セインテッド』にいた他の組織の面々は無事なのだろうかとクリアは考えたのだ。
「向こうからの一方的な協定破棄だったからな。後日、正式にその件について一度確認するつもりではある。
……まあ、多数の国や領土と協定を結んでいる以上、
敵対した場合かなり面倒な相手になりそうではあると踏んでいる」
ガウスの返答に、クリアは一つ問題を懸念した。
「戦争を……するつもりですか?」
「それは『セインテッド』の動き次第だ。ただ手を切るだけなのか、我々を潰すために争いを仕掛けてくるかによる。それに、今はそれどころではない。ミヤのことが最優先だ」
とりあえず、今はこちらから争いを仕掛けるつもりが無いことにクリアはほっと胸を撫で下ろす。
「それならよかったです。……ボス、お願いがあります」
不意に言われたガウスは、不思議そうな顔でクリアに返す。
「頼み事か、珍しい。……して、内容は?」
「ヒカリに、ルーツとそれに関わる組織のことを教えてあげて欲しいのです。ボクがミヤの状態改善の為に『セインテッド』に行っている間に」
そのクリアの言葉に、先程まで蚊帳の外にいたヒカリは突然自分への話をされたことでクリアの方へ視線を向けざるを得なくなった。
どうやらあまりに読み漁ることに夢中で、返事はしたものの入ってきた二人が誰なのかを認識するのが遅れたらしい。
かけられた声の主にはっと気付いたガウスは、恐る恐るこちらに視線を向け視界に二人を入れる。
——瞬間。
ガウスは自らの手をバンッと大きな音を立てるほどの勢いで机につき立ち上がる。
その拍子に机の上に読み終わったことで雑に重ねられていた文献は幾つか床に落ちてしまった。
しかし、そんなことはどうでもいいと言わんばかりにクリアを見てガウスは声を震わせながらも声をかけてくる。
「クリア……! 目を覚ましたのか! そうか、そうか……!」
「おとう……ボス、ご心配をおかけしました!」
ガウスの声色と言葉から、必死に文献を読み漁っていたのはミヤとクリアの為だとわかり、クリアはつい「お父さん」と呼びそうになる……が、ヒカリの前なので何とか抑えて返した。
しかし、クリアは本気で心配してくれていたらしいガウスの気持ちに喜びを感じ、心の中では若干泣きそうになっていた。
だが今は時間が一秒でも惜しいクリアは感動するのもそこそこにし、本来この部屋に来た目的を果たすために話を切り出した。
「ボス、お気持ちはとても嬉しいのですが、今はミヤのことについて報告と聞きたいことがあって参りました」
「おお、何かわかったことがあるのか⁉︎ ……そして、彼女がそれに関係あると?」
ちらりとガウスがヒカリの方に目をやれば、ヒカリは緊張しながらもペコリとお辞儀をして返した。
(クリア、流石にボスの前では恥ずかしいよ……!)
小声でヒカリに言われ、ここではじめてヒカリと手を繋いだままだったことをクリアは思い出し、慌てて彼女の手を離した。
「そ、そうです。ヒカリもまた、ミヤと同じ被害にあっているので」
「ふむ、それでミヤが目を未だに覚まさない理由はわかったのか? それと同じようにヒカリ君が被害に遭ったのにも関わらず普通に過ごせている理由も」
ガウスの目はいつも以上に真剣な眼差しだった。
それほどミヤのことに対して真摯に考えているのだろう。
「確証は無いのですが、原因自体は判明しました。今のミヤには、あの娘を構成する上で必要なエレメントの一部が欠如しているのです」
「それはどの属性のエレメントだ?」
「それがわからないのです……。ボクが人を再構築する際に唯一詳しく知らない種類のエレメントでした」
「ほう……未だにこの『ディールーツ』の研究でも触れたことの無いエレメントがあると言うのか」
ガウスの言葉に、クリアは頭を縦に振って返した。
現在クリアが知識として知っているエレメントの属性は、十六種類である。
物理系統と呼ばれるエレメントである、水・木・氷・岩・土・金・生。
そして現象系統といわれるエレメントである、火・風・雷・力・光・闇・音・間・負。
ちなみに、間属性は空間を司る属性で、クリアが多用する『どこへでもドア』の動力源になっているエレメントである。
そして負属性は、体の痛みなどを生み出す詳しい研究が進んでいない、とりあえず人の体に良くない影響を与えるエレメントの暫定的な名前だ。
そしてそれらとは別に、今回の件で上がっている未知の属性と、『セインテッド』王家に伝わるつい最近味わったあの謎のエレメントの存在があることはわかっているのが現状だ。
「今回、ヒカリが同じような被害に遭い何故無事だったのかはひとまず申し訳ないですが置いておいて。それより重要なのは、ヒカリのとある証言でした」
「それは?」
「ヒカリも、攫われた時の前後の記憶が無いと言っていました。つまり、ボクが知らない今回のエレメントは恐らく、人の記憶や意志に関わるものなのでは無いかと」
クリアの発言に、ガウスだけではなくヒカリも驚いた表情でクリアを見る。
そんな二人の反応を気にせず、クリアは話を続ける。
「これはボクの推測にしか過ぎないのですが……ボスなら何か知っているかもしれないと思いここにきた次第です」
「……なるほど。しかし悪いが思い当たるような文献や知識は私も持っていないな。すまない」
「いえ、ボクもいきなり聞きに来てすみません……」
クリアはボスの返事に少しだけ間が空いたことが少しだけ気になったが、何か引っかかる知識がないか考えていたのだろうと流す。
「いや、気にしないでくれ。ともかく『セインテッド』での件、クリアにもヒカリ君にも苦労をかけてしまったな。すまなかった」
「い、いえそんな! 私の場合は社長が関わっていたわけでは無いので謝られることなんてありません!」
ガウスの謝罪に慌ててヒカリは手を振りながら否定する。
「そういえば、ボスは『セインテッド』とはこれからどう接していくおつもりなんですか?」
ふとクリアは遅れながらも、重要なこの話題のことを思い出し確認する。
あの時は流れで逃げるようにこの場所へと飛んできたが、祭りなどで『セインテッド』にいた他の組織の面々は無事なのだろうかとクリアは考えたのだ。
「向こうからの一方的な協定破棄だったからな。後日、正式にその件について一度確認するつもりではある。
……まあ、多数の国や領土と協定を結んでいる以上、
敵対した場合かなり面倒な相手になりそうではあると踏んでいる」
ガウスの返答に、クリアは一つ問題を懸念した。
「戦争を……するつもりですか?」
「それは『セインテッド』の動き次第だ。ただ手を切るだけなのか、我々を潰すために争いを仕掛けてくるかによる。それに、今はそれどころではない。ミヤのことが最優先だ」
とりあえず、今はこちらから争いを仕掛けるつもりが無いことにクリアはほっと胸を撫で下ろす。
「それならよかったです。……ボス、お願いがあります」
不意に言われたガウスは、不思議そうな顔でクリアに返す。
「頼み事か、珍しい。……して、内容は?」
「ヒカリに、ルーツとそれに関わる組織のことを教えてあげて欲しいのです。ボクがミヤの状態改善の為に『セインテッド』に行っている間に」
そのクリアの言葉に、先程まで蚊帳の外にいたヒカリは突然自分への話をされたことでクリアの方へ視線を向けざるを得なくなった。
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