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第67話 かんせいのつぼ
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スピーカーから聞こえてくる王の言葉にに対し、クリア側から答えを返す術はない故にクリアは黙って話を聞くことしかできない。
——そもそも、イエナ王女から聞いていたから王に気付かれているのは承知の上だ。その上でボクの存在を城内全てに伝える意図はなんだ?
クリアを感知できるなら、共に行動していたブルーの存在もわかっていたはずだ。
そして王女が『ディールーツ』の手の中にある状況でブルーの手引きでクリアが侵入した意図を汲み取れないなど、今までクリアが見てきたセインテッド・アーク・イクスという人物の思考としては信じ難い。
故にクリアは本人なのだろうかと疑いの気持ちを持ったのだった。
「その上、ネズミを手引きした裏切り者もいるようだな。皆のもの、全勢力を持って押収部屋の外にいるブルー・ティアと中にいるネズミを捕らえ我が元に連れて来るのだ」
ブツンとスピーカーの出力を切る音を最後に物音一つ聞こえなくなった。
「…………!」
ブルーに今一度呼びかけようとクリアは声を出そうとするが、それは音にならず口から出すことができない。
それと同時に、声を出そうとした分だけクリアは喉に違和感を感じる。
——【不可視疑の一部】!
指先からそれを細く伸ばし自分の口の中に入れ喉の辺りを触れてみれば、違和感の正体にクリアは気付いた。
声帯を構成するエレメントに、生成された音属性のエレメントが結びつくようにその場に存在していた。
普通に考えればあり得ない状態に少しだけ驚くが、クリアはすぐにそれが王のキャスティングしている聖属性の力の一端であることを悟った。
まさに音属性と声帯のエレメントを結びつけるようにわずかに聖属性と思われるエレメントが存在しているからだ。
——聖属性の結び付ける力をこんな風に使うなんて……!
扉が微動だにもしなかった理由も同じ原理なのだろう。
聖属性の力の応用力と、それをキャスティングする王の実力の高さに驚きながらも、もう一つの事実にクリアは気付いてしまった。
先程本人がと疑いをかけたが、聖属性をキャスティングしている以上、本人であることに疑いの余地が無い。
とりあえず声帯に結び付けられた音を聖属性のエレメントと纏めて吸収して違和感を無くすと、クリアはおもむろに壺の形をした道具を感知能力でどういった物か少しでも手がかりをつかめるよう調べてみる。
——幸い、逆に言えば勢力をこの場に集めるのに時間がかかる筈。ならその時間を有効活用しないとね。
用件が済めば、聖属性の干渉は厄介だが逃げ切ることは不可能ではないだろうと考え、クリアは本来の目的を達成することを選択した。
——……これは。
その道具は表面を形成しているのはごく普通の壺と同じ土属性の分子を火属性の分子反応で固めた物だったが、驚くことにその中身は間属性の術式が仕込まれていた。
それはクリアが以前ヒカリの弁当を保存する事に使用した術式と似ている。
つまり、見た目は普通の大きさの壺だが中は拡張されており恐らく口と呼べる部分に入るものならこの道具の中に見た目以上の容量の物を入れることができるだろう。
——入れてみるべき、か?
【不可視疑の一部】を壺の入り口に入れてみれば術式で構成された空間の内部を探れるかも知れない。
しかし、下手な干渉をして術式が壊れてしまえば、それ以上手がかりを得ることができなくなってしまう。
むしろ、それで二度とミヤの失われたエレメントを取り戻すことができなくなることが余程恐ろしい。
あまり時間が残されていない中、クリアはもう一度だけ手がかりにならないかと札状の紙を全て手に取り、不意に裏を見てみた。
その中に、誰でも読める言葉でそれぞれ『入れる用』『止める用』『出す用』と書いてある三枚が混ざっていた。
——なるほど、そういうことか!
どうやらこの札状の紙自体が、この道具を使用するための鍵のようなものだったらしい。
表面に書かれているのは術式を発動するのに必要な命令であり、文字や暗号では無かったわけだ。
ここまでわかったなら、使ってみるしかないと思ったクリアは『入れる用』と書かれた札を道具にかざしてみる。
すると口の部分から光が漏れ出し、それがクリアに襲いかかるように向かってきた。
とっさにその力を【不可視疑の一部】を広げて受け止めたクリアが得た情報。
それは聖属性のエレメント分子で構成された力だった。
道具からもはや溢れ出したと言い直した方が正しい量の光は、術式に従って対象を探すよう右往左往している。
——聖属性の結びつける力を利用してあのエレメントを人の体から抜き取る術式……ってことか?
今この場にはクリアしかいないため起動したクリアに向かってきたが、もしこれをクリア以外の人物が一人で起動してしまっていたら……とクリアは今回はじめに調べたのが自分でよかったと心底安心する。
——さて、そろそろ実態を掴ませてもらおうかな。
【不可視疑の一部】で光を包み込みはじめると、逃げ場を失っていく光は徐々に自由に動き回れる空間の量に合わせて道具の中に戻って行く動きを見せた。
それに合わせ、クリアは少しずつ光を押し込むように道具に戻していき、最後には道具の口の広さに合うような太さに【不可視疑の一部】を変え、光を押し戻しながら中に突入させる。
光は完全に道具の中に戻され、クリアは能力から伝わる感覚から道具の中に展開された空間に入れたのだと実感した。
その空間は、思っていたよりさほど広くは無いようで、【不可視疑の一部】を内部で広げるとすぐに壁のようなものに行き当たった。
——聖属性のエレメントを感じられない……。同じ道具内に二つ以上の間属性の術式で作った空間が存在するということなのか?
クリアが侵入させた空間は、道具の見た目より少しだけ広いぐらいの大きさだった。
そして、その中で聖属性こそ感じ取れなかったが、ようやく目当ての物に巡り会えた。
クリアが詳しくわからないあのエレメントの分子が、圧縮され丸い塊として幾つも瓶詰めにされたキャンディのようにその空間内に存在していたのだ。
——そもそも、イエナ王女から聞いていたから王に気付かれているのは承知の上だ。その上でボクの存在を城内全てに伝える意図はなんだ?
クリアを感知できるなら、共に行動していたブルーの存在もわかっていたはずだ。
そして王女が『ディールーツ』の手の中にある状況でブルーの手引きでクリアが侵入した意図を汲み取れないなど、今までクリアが見てきたセインテッド・アーク・イクスという人物の思考としては信じ難い。
故にクリアは本人なのだろうかと疑いの気持ちを持ったのだった。
「その上、ネズミを手引きした裏切り者もいるようだな。皆のもの、全勢力を持って押収部屋の外にいるブルー・ティアと中にいるネズミを捕らえ我が元に連れて来るのだ」
ブツンとスピーカーの出力を切る音を最後に物音一つ聞こえなくなった。
「…………!」
ブルーに今一度呼びかけようとクリアは声を出そうとするが、それは音にならず口から出すことができない。
それと同時に、声を出そうとした分だけクリアは喉に違和感を感じる。
——【不可視疑の一部】!
指先からそれを細く伸ばし自分の口の中に入れ喉の辺りを触れてみれば、違和感の正体にクリアは気付いた。
声帯を構成するエレメントに、生成された音属性のエレメントが結びつくようにその場に存在していた。
普通に考えればあり得ない状態に少しだけ驚くが、クリアはすぐにそれが王のキャスティングしている聖属性の力の一端であることを悟った。
まさに音属性と声帯のエレメントを結びつけるようにわずかに聖属性と思われるエレメントが存在しているからだ。
——聖属性の結び付ける力をこんな風に使うなんて……!
扉が微動だにもしなかった理由も同じ原理なのだろう。
聖属性の力の応用力と、それをキャスティングする王の実力の高さに驚きながらも、もう一つの事実にクリアは気付いてしまった。
先程本人がと疑いをかけたが、聖属性をキャスティングしている以上、本人であることに疑いの余地が無い。
とりあえず声帯に結び付けられた音を聖属性のエレメントと纏めて吸収して違和感を無くすと、クリアはおもむろに壺の形をした道具を感知能力でどういった物か少しでも手がかりをつかめるよう調べてみる。
——幸い、逆に言えば勢力をこの場に集めるのに時間がかかる筈。ならその時間を有効活用しないとね。
用件が済めば、聖属性の干渉は厄介だが逃げ切ることは不可能ではないだろうと考え、クリアは本来の目的を達成することを選択した。
——……これは。
その道具は表面を形成しているのはごく普通の壺と同じ土属性の分子を火属性の分子反応で固めた物だったが、驚くことにその中身は間属性の術式が仕込まれていた。
それはクリアが以前ヒカリの弁当を保存する事に使用した術式と似ている。
つまり、見た目は普通の大きさの壺だが中は拡張されており恐らく口と呼べる部分に入るものならこの道具の中に見た目以上の容量の物を入れることができるだろう。
——入れてみるべき、か?
【不可視疑の一部】を壺の入り口に入れてみれば術式で構成された空間の内部を探れるかも知れない。
しかし、下手な干渉をして術式が壊れてしまえば、それ以上手がかりを得ることができなくなってしまう。
むしろ、それで二度とミヤの失われたエレメントを取り戻すことができなくなることが余程恐ろしい。
あまり時間が残されていない中、クリアはもう一度だけ手がかりにならないかと札状の紙を全て手に取り、不意に裏を見てみた。
その中に、誰でも読める言葉でそれぞれ『入れる用』『止める用』『出す用』と書いてある三枚が混ざっていた。
——なるほど、そういうことか!
どうやらこの札状の紙自体が、この道具を使用するための鍵のようなものだったらしい。
表面に書かれているのは術式を発動するのに必要な命令であり、文字や暗号では無かったわけだ。
ここまでわかったなら、使ってみるしかないと思ったクリアは『入れる用』と書かれた札を道具にかざしてみる。
すると口の部分から光が漏れ出し、それがクリアに襲いかかるように向かってきた。
とっさにその力を【不可視疑の一部】を広げて受け止めたクリアが得た情報。
それは聖属性のエレメント分子で構成された力だった。
道具からもはや溢れ出したと言い直した方が正しい量の光は、術式に従って対象を探すよう右往左往している。
——聖属性の結びつける力を利用してあのエレメントを人の体から抜き取る術式……ってことか?
今この場にはクリアしかいないため起動したクリアに向かってきたが、もしこれをクリア以外の人物が一人で起動してしまっていたら……とクリアは今回はじめに調べたのが自分でよかったと心底安心する。
——さて、そろそろ実態を掴ませてもらおうかな。
【不可視疑の一部】で光を包み込みはじめると、逃げ場を失っていく光は徐々に自由に動き回れる空間の量に合わせて道具の中に戻って行く動きを見せた。
それに合わせ、クリアは少しずつ光を押し込むように道具に戻していき、最後には道具の口の広さに合うような太さに【不可視疑の一部】を変え、光を押し戻しながら中に突入させる。
光は完全に道具の中に戻され、クリアは能力から伝わる感覚から道具の中に展開された空間に入れたのだと実感した。
その空間は、思っていたよりさほど広くは無いようで、【不可視疑の一部】を内部で広げるとすぐに壁のようなものに行き当たった。
——聖属性のエレメントを感じられない……。同じ道具内に二つ以上の間属性の術式で作った空間が存在するということなのか?
クリアが侵入させた空間は、道具の見た目より少しだけ広いぐらいの大きさだった。
そして、その中で聖属性こそ感じ取れなかったが、ようやく目当ての物に巡り会えた。
クリアが詳しくわからないあのエレメントの分子が、圧縮され丸い塊として幾つも瓶詰めにされたキャンディのようにその空間内に存在していたのだ。
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