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第80話 聖間戦争2 不気味な静寂
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重量と重力が加算された一撃は、先程ライズが起こした物よりも更に大きな轟音を鳴り響かせた。
恐らく、結界によって轟音という名の音属性のエレメントの分子の侵入を拒まれたことで、余計に激しいものとなっているのだろう。
もしかしたら、城下街の建物は音と衝撃によりとんでもないことになっていてもおかしくはない。
……普通ならば。
クリアは、この【ギ岩トレット】という術式に更に細工を重ねていた。
従来、物質系統のエレメントは術式を行使した後はそのまま物体として残る。
つまりそれは、クリアの【吸収】と【放出】が同時にできないという欠点を補うにはとても相性がよかったのだ。
【ギ岩トレット】に【無属性】の力を纏わせ放つ一撃。
その名は——。
「【引石による執行の一撃】‼︎」
通常のエレメントによる術式に【無属性】を付与する試みは、クリアの思っていた以上の結果を見せた。
まず、城下街への衝撃と音は【無属性】で覆い、拡散する事を防ぎ結界のみに集約させられた。
更に、【分解】により結界を作るエレメントの結び付きを強固にしている聖属性を吸収し綻びを作った。
そこに叩き込まれる【ギ岩トレット】の威力を前に、流石のほぼ無限にエレメントを生成できるルーツによって作られたであろう結界も耐え切る事はできず。
クリアの一撃は、結界を貫くことに成功した。
「やりました! しかしすぐに再構成されてしまうかもしれないので今すぐ城内へ足を運んでください!」
『あいよぉ!』
通信機でライズ達に指示を出すと、今度は勢いよく落ちて行く【ギ岩トレット】が王城を本当に潰してしまわないようにクリアは吸収して再び保持へと戻す。
「さてと」
王城に結界を貫いた時と速度が変わらないまま落下するクリアは、着陸するために破壊された結界に含まれていた風属性のエレメントを利用して術式名を唱える。
「【空を往くもの】」
空を飛ぶその術式は、意外にも王の聖属性の能力によって妨害されることもなく。
クリアは無事王城のテラス——謁見の間から出られる場所で、国民が集まりなんらかの式典を行う際に王族が民に姿を見せる場所だ——に降り立った。
——さて、ライズさん達は無事入れたかな?
他の味方を気にしつつ、クリアはテラスの出入り口の扉に手をかけ中に入ろうとする。
……あの道具の部屋の時と同じく、扉はうんともすんとも言わず。
「王城全体も結合して強化したのか。それなら【引石による執行の一撃】をぶつけても問題無かったかなー?」
もちろん、クリアなりの冗談だ。
本当にぶつけていれば、全損はせずともかなりの被害は出ていただろう。
今回の目的はあくまで『所有者』込みの戦力を持ってしても、『ディールーツ』には敵わないということを知らしめるための戦争だ。
相手の居住区を破壊することに、意味などない。
むしろそれをきっかけに人が命を落としたら……等、クリアには耐えられない事態に陥るかも知れないのだ。
「……それにしても」
——あまりに静かすぎる。
「静寂」という言葉がぴったりと当てはまるほどに結界の内部に入ったにしてはクリア自身が立てた音や声以外物音一つしない。
『クリアぁ! こっちはダメだ、人っ子一人いやしねえ上に城ん中にも入れやしねえ!』
「そっちもですか? それはまた面倒な……」
ライズからの通信に、多方面から侵攻した他のメンバーもクリアと同じく状況だと把握する。
——結界外には戦力を配置しておいて中には誰もいない……?
クリアは現状の理解に苦しんだ。
初めから結界の中に外に配置していた王国騎士達を配置しておけば、結界を破るのに消耗したかもしれない『ディールーツ』側の人間を万が一にも打ち取れたかもしれない。
何より、結界が破られなければ外に倒れている人々も無傷で済んだかもしれない。
少なからずとも意識を奪うためには苦痛を味わわせなければならなかったクリアにとって、王の意図が読めない。
「…………!」
——むしろ消耗させて結界を破れなければ良しとした、とか考えているなら……流石に許せないぞ?
もっとも、レッドやグリーンがその案に乗るかといえば、むしろ反対すると思うが。
もしかしたら、聖属性の能力が意識や記憶を奪ったりすることもできる以上、中の『所有者』達も同じように利用されているかもしれない。
そう思ったクリアは、事の緊急性を再確認し、通信機で叫ぶように言った。
「ライズさん、ロザリアさん、シングさん! 嫌な予感がするので、今すぐボクのところに集まってください!」
集まり次第扉を破って侵入する旨を伝え、扉に被せるように【不可視疑の一部】を押し付け【分解】を既にし始めた。
恐らく、結界によって轟音という名の音属性のエレメントの分子の侵入を拒まれたことで、余計に激しいものとなっているのだろう。
もしかしたら、城下街の建物は音と衝撃によりとんでもないことになっていてもおかしくはない。
……普通ならば。
クリアは、この【ギ岩トレット】という術式に更に細工を重ねていた。
従来、物質系統のエレメントは術式を行使した後はそのまま物体として残る。
つまりそれは、クリアの【吸収】と【放出】が同時にできないという欠点を補うにはとても相性がよかったのだ。
【ギ岩トレット】に【無属性】の力を纏わせ放つ一撃。
その名は——。
「【引石による執行の一撃】‼︎」
通常のエレメントによる術式に【無属性】を付与する試みは、クリアの思っていた以上の結果を見せた。
まず、城下街への衝撃と音は【無属性】で覆い、拡散する事を防ぎ結界のみに集約させられた。
更に、【分解】により結界を作るエレメントの結び付きを強固にしている聖属性を吸収し綻びを作った。
そこに叩き込まれる【ギ岩トレット】の威力を前に、流石のほぼ無限にエレメントを生成できるルーツによって作られたであろう結界も耐え切る事はできず。
クリアの一撃は、結界を貫くことに成功した。
「やりました! しかしすぐに再構成されてしまうかもしれないので今すぐ城内へ足を運んでください!」
『あいよぉ!』
通信機でライズ達に指示を出すと、今度は勢いよく落ちて行く【ギ岩トレット】が王城を本当に潰してしまわないようにクリアは吸収して再び保持へと戻す。
「さてと」
王城に結界を貫いた時と速度が変わらないまま落下するクリアは、着陸するために破壊された結界に含まれていた風属性のエレメントを利用して術式名を唱える。
「【空を往くもの】」
空を飛ぶその術式は、意外にも王の聖属性の能力によって妨害されることもなく。
クリアは無事王城のテラス——謁見の間から出られる場所で、国民が集まりなんらかの式典を行う際に王族が民に姿を見せる場所だ——に降り立った。
——さて、ライズさん達は無事入れたかな?
他の味方を気にしつつ、クリアはテラスの出入り口の扉に手をかけ中に入ろうとする。
……あの道具の部屋の時と同じく、扉はうんともすんとも言わず。
「王城全体も結合して強化したのか。それなら【引石による執行の一撃】をぶつけても問題無かったかなー?」
もちろん、クリアなりの冗談だ。
本当にぶつけていれば、全損はせずともかなりの被害は出ていただろう。
今回の目的はあくまで『所有者』込みの戦力を持ってしても、『ディールーツ』には敵わないということを知らしめるための戦争だ。
相手の居住区を破壊することに、意味などない。
むしろそれをきっかけに人が命を落としたら……等、クリアには耐えられない事態に陥るかも知れないのだ。
「……それにしても」
——あまりに静かすぎる。
「静寂」という言葉がぴったりと当てはまるほどに結界の内部に入ったにしてはクリア自身が立てた音や声以外物音一つしない。
『クリアぁ! こっちはダメだ、人っ子一人いやしねえ上に城ん中にも入れやしねえ!』
「そっちもですか? それはまた面倒な……」
ライズからの通信に、多方面から侵攻した他のメンバーもクリアと同じく状況だと把握する。
——結界外には戦力を配置しておいて中には誰もいない……?
クリアは現状の理解に苦しんだ。
初めから結界の中に外に配置していた王国騎士達を配置しておけば、結界を破るのに消耗したかもしれない『ディールーツ』側の人間を万が一にも打ち取れたかもしれない。
何より、結界が破られなければ外に倒れている人々も無傷で済んだかもしれない。
少なからずとも意識を奪うためには苦痛を味わわせなければならなかったクリアにとって、王の意図が読めない。
「…………!」
——むしろ消耗させて結界を破れなければ良しとした、とか考えているなら……流石に許せないぞ?
もっとも、レッドやグリーンがその案に乗るかといえば、むしろ反対すると思うが。
もしかしたら、聖属性の能力が意識や記憶を奪ったりすることもできる以上、中の『所有者』達も同じように利用されているかもしれない。
そう思ったクリアは、事の緊急性を再確認し、通信機で叫ぶように言った。
「ライズさん、ロザリアさん、シングさん! 嫌な予感がするので、今すぐボクのところに集まってください!」
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