薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない

くまだった

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3 看病する

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 二日後に、熱が下がると、どこか夢みがちな瞳を開けて「帰ります」と言ってきた。
 「そんな体でどこに帰るんだ」
 「妹が、妹が待っているんです」
 おれは面白くない気持ちで聞いた。
 実はレイモンドが寝ている間に調べさせた所、平民街の民家を間借りして彼は妹と暮らしていた。彼の父親はとうの前に亡くなっていた。

 妹と言っても実は病弱で、行き場のない従姉妹をレイモンドが引き取った形だ。何をやっているんだといいたい。
 妹の看病をする人間を雇うこともできないため、レイモンドが毎日看病をしていた。
 そのためレイモンドは定職につくことが出来ず、より貧困になっていた。
 昨日の出来事は、レイモンドが知人に薬代を借りにいった先で、体を要求されたようだ。

 どうして虫ケラに金を借りにいって、おれにはこない。

 「悪いが調べさせてもらった。今は看病ができる人間をやっている。薬も持って行かせている」おれがいうと、レイモンドはほっとした顔をした。
 「ありがとうございます。マクガイル公爵様」
 「おれを覚えているのか」
 「あなたを覚えていない人はいないと思います」
 「そうか。おれのことはアーノルドといえ。許す」
 アーノルドの気分が浮上する。
 レイモンドは微妙に微笑んだ。

 「ゆっくり休め」
 レイモンドは白い顔を更に白くさせながら、大人しくベッドに戻り目を閉じた。
 
 何日か経って体調が戻ったレイモンドがおれに合うや否や
 「もう帰ります」というのを「まだ早い」と宥める。
 「妹が」
 「報告によると、君の妹も体調は安定しているようだ」
 「おれがみないと」
 「看護のプロをやっている。君より世話がするのがうまいと思うが」
 レイモンドは、あきらめてソファに座り込む。

 「・・どうやってお礼をすれば」
 おれはレイモンドを眺める。こないだの虫ケラと同じことを要求すればこの男はどうするのだろうか。
 「同窓のよしみだ」
 おれはそう言うと彼から目を逸らした。虫ケラと同じにならないように。

 「よかった。あなたも僕の体を要求するのかと思った」
 「どういう意味だ」
 おれはジロリと彼に視線を戻した。
 「あなたに助けられた時そうでした」
 おれは目を眇めた。
 「それでお前はどうしたんだ」
 「嫌だって」
 「一体いくら借りたかったんだ」
 「1000ガイルです」
 「ふざけているのか」
 おれは机を拳で叩いた。ひどい音がして、机の上にあったものが飛び散った。
 「そんな子供の小遣いみたいな値段で」
 「私にとっては大事な薬代です」
 
 もう一度おれは机を拳で叩いた。

 彼の言葉がイライラする。押さえつけていた欲望に蓋ができない。

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