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battle65…あなたの愛で繋いで(前編)
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三蔵との結婚式を終えて、数日経った頃。もう大晦日…というある日だ。着いた街で年越しをし、たまにはのんびりしようかと宿を長めに取っていた。最近は二人部屋というのは少なくなってきている。三人部屋と一人用、もしくは、一人用と二人部屋に布団を一組。もしくは大部屋乃至各個人部屋四部屋、が多い。
「相変わらずだな…雅チャン!」
「何が?」
「気付いてねえのか?」
「……何が?」
そう、雅は無意識だったものの、横にずっと座っている悟浄は気付いていた。
「それ」
「え?」
「リングくるくる回してっといつか落とすぞ?」
「……あ」
「気付いてなかったの?マジで…?」
「……ん」
そう話していた。しかし嬉しそうににこぉっと笑っていた。
「あぁあ、思い出してますよ?お宅の奥さま」
「……放っておけ」
「新婚旅行も何もねぇよな」
「毎日が旅行みたいなものですけどね?僕ら。」
「確かに!」
「てか、雅?そのリング知ってっか?」
「え?何が?」
「それ、……な?さぁんぞ!」
「何の事だ。」
「やっぱ言ってないのね?」
くはっと笑いあっていた一行。そうしていると、扉をノックする音が聞こえてくる。
「はい?」
「あぁ、お休みのところすみません。うちの娘が少し会いたいと……」
八戒が出て、対応する。わいわいと話している四人をチラリと見ながら宿主に問いかけていた。
「あの、会いたいって……誰にでしょうか」
「ほら、怜音。」
そう促された怜音と呼ばれた女の子がおずっと宿主の後ろから出てきた。
「あの……」
「おや、はじめまして」
「はじめまして……私。」
「何でしょうか?というか、誰に会いたいのでしょうか」
「あの……あの金髪の……」
そう言いながらもチラリと視線を送る怜音。しかし視線を追うこと無く八戒はその対象が三蔵であるということは先にいっていた怜音の特徴でしっかりと見抜いていた。
「少しお待ちください?」
小さく頷いた怜音を置いて八戒は三蔵のもとへと向かっていった。
「三蔵、ちょっといいですか?」
「なんだ」
「こちらの宿主のお嬢さんが三蔵に会いたいと…」
「……理由は」
「知りませんよ。僕が話し聞いた訳じゃないので。どうしますか?」
「ハァ……めんどくせぇ」
そう呟きながらも三蔵は出入り口に向かっていった。
「なんだぁ?三蔵ご指名?」
「えぇ、何か……訳ありというか……」
「訳あり?」
「…いえ、僕の思い過ごしかもしれませんし」
そう言いながらも出入り口に目をやった。出入り口では父親に促されて二人きりになった三蔵と怜音は何やら話していた。
「それで?俺に何の用だ」
「いえ…あの……」
「はっきり言え、なんだ」
「……いつまでこちらに…?」
「宿帳に書いてあるはずだが?」
「あ……そうですよね…」
「話はそれだけか?」
「あ……はい」
「ならもういいな」
そういってくるりと向きを変えて定位置といわんばかりの椅子にどさりと腰かける。
「三蔵?」
「……」
何の反応もないに等しい三蔵を見て、雅は出入り口に目を向ける。
「うっわ……かわいい子……」
そう呟くと怜音からペコリと頭を下げ、扉を閉めて出ていった。
「ねぇ、三蔵?」
「…なんだ」
「あの子かわいい子だったね」
「…どうでもいい」
「で?ご指名の三蔵はなんだったわけ?」
「いつまでいるかを聞かれただけだ」
「……三蔵…」
「なんだ」
「それって……」
悟浄は八戒の方を見て小さくため息を吐く八戒と目を合わせた。小さく首を左右に振る八戒を見て悟浄もまたため息を吐いた。
「どうしたの?二人共ため息吐いて……」
「いや、何もねぇよ」
「そう?」
そんな二人を見て雅は首をかしげた。
「まぁ、三蔵は雅以外の女には全くもって興味がねぇのが救いか?」
「それもそうですね」
悟浄と八戒は顔を見合わせて短い会話をしていた。
……その日の夕飯…
この時からから、怜音は度々一行の前に姿を現すようになってきた。
「あの……」
「おんやぁ?」
「あなたは……」
「あ、初めまして…私、怜音って言います。」
「怜音ちゃんね、よろしく」
「あ…はい!あの……何か足りないものないですか?」
「これと言って特に今のところは…三蔵?あなたは?」
「……特にない」
そう言いながら食事を進める三蔵。食事が終わっていき、それぞれの部屋に向かっていく一行。ベッド四台ある部屋とシングル一部屋で取っているものの、四人部屋はベッド三台しか埋まっていなかった。そう、雅の分が空いている。しかしながらも、今は四人部屋の方にきていた。
「でも、こうして三蔵が部屋跨いでくるのはマジ珍しいよな」
「まぁ、いいんじゃね?」
「そうですね、明日は大晦日ですし。たまにはいいですよね」
「俺も嬉しいよ!三蔵や雅と一緒にいれるのって!!」
「おや?僕らは別ですか?」
「だって、八戒や悟浄は寝る時も一緒だろ?」
「それもそうですね。」
くすくすと笑い合い、外を見ながらも嬉しそうに話していた。
「おい…部屋戻るぞ」
「あ、うん!」
「え?もう行っちゃうのか?三蔵と雅」
「俺は戻る。」
「雅は?どうする?」
「んー……もぉ少しここにいようかなぁ…」
「そうか。」
そう話して三蔵は先に部屋を後にしていった。
「いかなくていいんですか?雅」
「あの!!」
「何?」
「あの……私…みんなに相談したいことあって……」
「なんでしょう?」
「私…三蔵に…」
その時だ。コンコンとノックが鳴る。
「誰だぁ?」
「……失礼します…あの……あっ」
「ん?どうした?悟空…って、怜音ちゃん?」
「あの…三蔵さんって…」
「三蔵なら部屋に戻っていったけど?」
「部屋って…あ、そっか……すみません」
そういうだけ言って怜音は静かに部屋を後にする。
「……なんか、あの子、三蔵の事よく探してるよな!」
「……ッッ…」
「てか雅?三蔵になんだって?」
「そうそう、話途中になっちゃってましたよね」
「あ…なんでも…取り合えず……またにするよ!」
「そうかぁ?」
「あ、悟浄、ちょっと……」
そう呼び出して部屋の外に連れ出した。
「俺的には嬉しいけど、八戒は良いにしても悟空だろ?」
「……今さっき……気付いた」
「…言わなくていい」
「今って……部屋戻ると大変だよね…」
「戻ってもいいと思うけど?三蔵は雅んだろ?」
「……でも…」
「あの怜音ちゃんには靡く事ねぇから心配すんな」
「……」
「もっと言うと、三蔵は雅以外の女に全く以て興味ねぇから安心しろ」
そう笑いかけられた雅は少しほっとしていたものの、悟浄の前から動けなかった。
「雅?」
「私……ダメな子だよ……」
「なんだ急に」
「三蔵と…その、一緒になっても…てか、一緒になったからかな…余計に他の子が三蔵の事好きだって言う感情抱いたの解ると…すごく不安になるし、三蔵取られちゃうんじゃないかなって……そう思っちゃって…」
「あー、雅?それ…普通の感情だ。心配するな」
「でも……女の子が話しかけたりする度に…『三蔵は私の!!』って言いたくなる……こんなの三蔵に知られたら…嫌われちゃうから…」
「そんなことねぇと思うぜ?あ、あれだ。付き合いだした頃の三蔵がそうだったろ」
「え?」
「覚えてねぇ?野宿の途中に出発する直前に『お前らこれ以上手、出すな』とか言ってキスしたろ。あれも相当強ぇ独占欲だ。」
「……」
「だから、雅だけがおかしいとか、特別だなんて事ねぇからさ」
そう言いながらも悟浄は雅の頭をぽんっと撫でた。
「少なくても、俺だったらそう言う感情、大歓迎だけどな?」
「悟浄は…でしょ?」
「だから言ってんだろ?俺だったらって…」
くすりと笑いながらも雅を見つめるその目は優しかった。
「ま、またさっきしかけた相談。いつでも聞くからさ。早く三蔵のとこに戻れば?」
「ん……」
そう答えて雅は向きを変えた。
一方その頃…三蔵のいる部屋では重苦しい空気が立ち込めていた。それは少し前、怜音が三蔵の部屋を訪ねたころからだった。
コンコン…
「ノックなんか要らねぇだろうが…」
そう呟いた三蔵。しかしゆっくりと開いた隙間から覗いたのは雅ではなく怜音だった。
「……なんだ、何の用だ」
「…あの…」
「さっきも言ったが、足りねぇものは無いし、そう言ったものは八戒に任せてある。何か聞くならあいつらのところに行ってくれ」
「……違うんです。」
「…何が言いたい」
「私は、三蔵さんに会いたくて…」
「……何のために」
「私…今日初めて三蔵さん見た時から……すごく気になっていて…」
「俺には関係ないな」
「あの…ここにいる間だけでもいいんです…一緒にいて貰うことはできませんか?」
「断る」
「…即答しなくても……」
「俺はお前と一緒にいる意味が解らん、よって、一緒に過ごすことも無い」
「……でも…会いに来ることはいいですか?」
「だから一体何のためだ」
「好き……何です。初めて見たときから…」
怜音は言い終わるが早いか三蔵の首に巻き付いた。同時に雅は部屋の戸を開けてしまう。
「……ッッ…」
「あ…私…ごめんなさい」
なぜか怜音ではなく、雅がパタンと戸を閉めて廊下に出ていた。そのままドクドクと煩い心臓を押さえきれずにもといた部屋に戻っていった。
「おや?雅……」
「どうした?三蔵の居るとこ戻ったんじゃ……ッ…て」
悟浄の言葉を聞き終わる前に雅は悟浄に巻き付いていた。
「どうしたもんかね……一体…」
「これは……」
泣いているわけでも無い…しかしきゅっと巻き付く雅を放ってなどおける訳も無かった。
「雅?」
「……ッッ…」
言葉にならない思いが止めどなく溢れていく。それを見た八戒は席をたった。
「悟空?悟浄がバカな真似起こさないように見ていてください?」
「解った!」
「お……おい」
「少し三蔵と話をしてきます。」
そう言い残して八戒は部屋を出た。
その頃の三蔵の部屋では、三蔵があからさまな不機嫌をまとっていた。
「言っておくが、俺は女には興味ねえんだよ。離れろ」
「…女性に興味無くても……私に興味抱いてくれたらそれでいい…です…」
「…チッ…離れろ」
「……傍に居てもいいって言ってくれるまで…離れたくない…」
「うるせえよ。女なんて必要ねぇ。退け。殺すぞ」
そう言われた言葉はとても冷たく、冷ややかなものだった。そんな会話の途中で八戒はノックをする。
「三蔵?入りますよ?」
「嫌だ…離れたくない」
「いい加減にしやがれ…退けって言ってんだろうが」
「三蔵?」
「…ッッ………あの…私…」
「あー、そう言うことですか…」
「私……諦めませんから…」
「出ていけ…」
そう言われた怜音は八戒に会釈をしてパタパタと三蔵の部屋を出ていった。
「……ハァ…嫌なところを見られたものですね」
「全くだ…」
「雅なら悟浄のところですよ?」
「…チッ…」
「三蔵?宿を変えますか?」
「恐らく変えたところであの女は追ってくるだろう…今さら面倒だ。それに、一つの街に宿屋なんて二つも三つもねえだろうが」
「それもそうですが……」
「雅は?」
「ですから…悟浄と一緒です。安心してください?悟空も一緒にいてもらってますから」
「……ハァア…」
「抱き合ってる所を見られたのはイタイですね」
「抱き合ってねえよ。勝手に抱きつかれただけだ」
「そうかもしれませんが……」
「全く…面倒くせえ…」
そう呟いては腰をあげた三蔵。
「三蔵?どちらへ?」
「迎えに行くだけだ」
そういって部屋を後にした。
「相変わらずだな…雅チャン!」
「何が?」
「気付いてねえのか?」
「……何が?」
そう、雅は無意識だったものの、横にずっと座っている悟浄は気付いていた。
「それ」
「え?」
「リングくるくる回してっといつか落とすぞ?」
「……あ」
「気付いてなかったの?マジで…?」
「……ん」
そう話していた。しかし嬉しそうににこぉっと笑っていた。
「あぁあ、思い出してますよ?お宅の奥さま」
「……放っておけ」
「新婚旅行も何もねぇよな」
「毎日が旅行みたいなものですけどね?僕ら。」
「確かに!」
「てか、雅?そのリング知ってっか?」
「え?何が?」
「それ、……な?さぁんぞ!」
「何の事だ。」
「やっぱ言ってないのね?」
くはっと笑いあっていた一行。そうしていると、扉をノックする音が聞こえてくる。
「はい?」
「あぁ、お休みのところすみません。うちの娘が少し会いたいと……」
八戒が出て、対応する。わいわいと話している四人をチラリと見ながら宿主に問いかけていた。
「あの、会いたいって……誰にでしょうか」
「ほら、怜音。」
そう促された怜音と呼ばれた女の子がおずっと宿主の後ろから出てきた。
「あの……」
「おや、はじめまして」
「はじめまして……私。」
「何でしょうか?というか、誰に会いたいのでしょうか」
「あの……あの金髪の……」
そう言いながらもチラリと視線を送る怜音。しかし視線を追うこと無く八戒はその対象が三蔵であるということは先にいっていた怜音の特徴でしっかりと見抜いていた。
「少しお待ちください?」
小さく頷いた怜音を置いて八戒は三蔵のもとへと向かっていった。
「三蔵、ちょっといいですか?」
「なんだ」
「こちらの宿主のお嬢さんが三蔵に会いたいと…」
「……理由は」
「知りませんよ。僕が話し聞いた訳じゃないので。どうしますか?」
「ハァ……めんどくせぇ」
そう呟きながらも三蔵は出入り口に向かっていった。
「なんだぁ?三蔵ご指名?」
「えぇ、何か……訳ありというか……」
「訳あり?」
「…いえ、僕の思い過ごしかもしれませんし」
そう言いながらも出入り口に目をやった。出入り口では父親に促されて二人きりになった三蔵と怜音は何やら話していた。
「それで?俺に何の用だ」
「いえ…あの……」
「はっきり言え、なんだ」
「……いつまでこちらに…?」
「宿帳に書いてあるはずだが?」
「あ……そうですよね…」
「話はそれだけか?」
「あ……はい」
「ならもういいな」
そういってくるりと向きを変えて定位置といわんばかりの椅子にどさりと腰かける。
「三蔵?」
「……」
何の反応もないに等しい三蔵を見て、雅は出入り口に目を向ける。
「うっわ……かわいい子……」
そう呟くと怜音からペコリと頭を下げ、扉を閉めて出ていった。
「ねぇ、三蔵?」
「…なんだ」
「あの子かわいい子だったね」
「…どうでもいい」
「で?ご指名の三蔵はなんだったわけ?」
「いつまでいるかを聞かれただけだ」
「……三蔵…」
「なんだ」
「それって……」
悟浄は八戒の方を見て小さくため息を吐く八戒と目を合わせた。小さく首を左右に振る八戒を見て悟浄もまたため息を吐いた。
「どうしたの?二人共ため息吐いて……」
「いや、何もねぇよ」
「そう?」
そんな二人を見て雅は首をかしげた。
「まぁ、三蔵は雅以外の女には全くもって興味がねぇのが救いか?」
「それもそうですね」
悟浄と八戒は顔を見合わせて短い会話をしていた。
……その日の夕飯…
この時からから、怜音は度々一行の前に姿を現すようになってきた。
「あの……」
「おんやぁ?」
「あなたは……」
「あ、初めまして…私、怜音って言います。」
「怜音ちゃんね、よろしく」
「あ…はい!あの……何か足りないものないですか?」
「これと言って特に今のところは…三蔵?あなたは?」
「……特にない」
そう言いながら食事を進める三蔵。食事が終わっていき、それぞれの部屋に向かっていく一行。ベッド四台ある部屋とシングル一部屋で取っているものの、四人部屋はベッド三台しか埋まっていなかった。そう、雅の分が空いている。しかしながらも、今は四人部屋の方にきていた。
「でも、こうして三蔵が部屋跨いでくるのはマジ珍しいよな」
「まぁ、いいんじゃね?」
「そうですね、明日は大晦日ですし。たまにはいいですよね」
「俺も嬉しいよ!三蔵や雅と一緒にいれるのって!!」
「おや?僕らは別ですか?」
「だって、八戒や悟浄は寝る時も一緒だろ?」
「それもそうですね。」
くすくすと笑い合い、外を見ながらも嬉しそうに話していた。
「おい…部屋戻るぞ」
「あ、うん!」
「え?もう行っちゃうのか?三蔵と雅」
「俺は戻る。」
「雅は?どうする?」
「んー……もぉ少しここにいようかなぁ…」
「そうか。」
そう話して三蔵は先に部屋を後にしていった。
「いかなくていいんですか?雅」
「あの!!」
「何?」
「あの……私…みんなに相談したいことあって……」
「なんでしょう?」
「私…三蔵に…」
その時だ。コンコンとノックが鳴る。
「誰だぁ?」
「……失礼します…あの……あっ」
「ん?どうした?悟空…って、怜音ちゃん?」
「あの…三蔵さんって…」
「三蔵なら部屋に戻っていったけど?」
「部屋って…あ、そっか……すみません」
そういうだけ言って怜音は静かに部屋を後にする。
「……なんか、あの子、三蔵の事よく探してるよな!」
「……ッッ…」
「てか雅?三蔵になんだって?」
「そうそう、話途中になっちゃってましたよね」
「あ…なんでも…取り合えず……またにするよ!」
「そうかぁ?」
「あ、悟浄、ちょっと……」
そう呼び出して部屋の外に連れ出した。
「俺的には嬉しいけど、八戒は良いにしても悟空だろ?」
「……今さっき……気付いた」
「…言わなくていい」
「今って……部屋戻ると大変だよね…」
「戻ってもいいと思うけど?三蔵は雅んだろ?」
「……でも…」
「あの怜音ちゃんには靡く事ねぇから心配すんな」
「……」
「もっと言うと、三蔵は雅以外の女に全く以て興味ねぇから安心しろ」
そう笑いかけられた雅は少しほっとしていたものの、悟浄の前から動けなかった。
「雅?」
「私……ダメな子だよ……」
「なんだ急に」
「三蔵と…その、一緒になっても…てか、一緒になったからかな…余計に他の子が三蔵の事好きだって言う感情抱いたの解ると…すごく不安になるし、三蔵取られちゃうんじゃないかなって……そう思っちゃって…」
「あー、雅?それ…普通の感情だ。心配するな」
「でも……女の子が話しかけたりする度に…『三蔵は私の!!』って言いたくなる……こんなの三蔵に知られたら…嫌われちゃうから…」
「そんなことねぇと思うぜ?あ、あれだ。付き合いだした頃の三蔵がそうだったろ」
「え?」
「覚えてねぇ?野宿の途中に出発する直前に『お前らこれ以上手、出すな』とか言ってキスしたろ。あれも相当強ぇ独占欲だ。」
「……」
「だから、雅だけがおかしいとか、特別だなんて事ねぇからさ」
そう言いながらも悟浄は雅の頭をぽんっと撫でた。
「少なくても、俺だったらそう言う感情、大歓迎だけどな?」
「悟浄は…でしょ?」
「だから言ってんだろ?俺だったらって…」
くすりと笑いながらも雅を見つめるその目は優しかった。
「ま、またさっきしかけた相談。いつでも聞くからさ。早く三蔵のとこに戻れば?」
「ん……」
そう答えて雅は向きを変えた。
一方その頃…三蔵のいる部屋では重苦しい空気が立ち込めていた。それは少し前、怜音が三蔵の部屋を訪ねたころからだった。
コンコン…
「ノックなんか要らねぇだろうが…」
そう呟いた三蔵。しかしゆっくりと開いた隙間から覗いたのは雅ではなく怜音だった。
「……なんだ、何の用だ」
「…あの…」
「さっきも言ったが、足りねぇものは無いし、そう言ったものは八戒に任せてある。何か聞くならあいつらのところに行ってくれ」
「……違うんです。」
「…何が言いたい」
「私は、三蔵さんに会いたくて…」
「……何のために」
「私…今日初めて三蔵さん見た時から……すごく気になっていて…」
「俺には関係ないな」
「あの…ここにいる間だけでもいいんです…一緒にいて貰うことはできませんか?」
「断る」
「…即答しなくても……」
「俺はお前と一緒にいる意味が解らん、よって、一緒に過ごすことも無い」
「……でも…会いに来ることはいいですか?」
「だから一体何のためだ」
「好き……何です。初めて見たときから…」
怜音は言い終わるが早いか三蔵の首に巻き付いた。同時に雅は部屋の戸を開けてしまう。
「……ッッ…」
「あ…私…ごめんなさい」
なぜか怜音ではなく、雅がパタンと戸を閉めて廊下に出ていた。そのままドクドクと煩い心臓を押さえきれずにもといた部屋に戻っていった。
「おや?雅……」
「どうした?三蔵の居るとこ戻ったんじゃ……ッ…て」
悟浄の言葉を聞き終わる前に雅は悟浄に巻き付いていた。
「どうしたもんかね……一体…」
「これは……」
泣いているわけでも無い…しかしきゅっと巻き付く雅を放ってなどおける訳も無かった。
「雅?」
「……ッッ…」
言葉にならない思いが止めどなく溢れていく。それを見た八戒は席をたった。
「悟空?悟浄がバカな真似起こさないように見ていてください?」
「解った!」
「お……おい」
「少し三蔵と話をしてきます。」
そう言い残して八戒は部屋を出た。
その頃の三蔵の部屋では、三蔵があからさまな不機嫌をまとっていた。
「言っておくが、俺は女には興味ねえんだよ。離れろ」
「…女性に興味無くても……私に興味抱いてくれたらそれでいい…です…」
「…チッ…離れろ」
「……傍に居てもいいって言ってくれるまで…離れたくない…」
「うるせえよ。女なんて必要ねぇ。退け。殺すぞ」
そう言われた言葉はとても冷たく、冷ややかなものだった。そんな会話の途中で八戒はノックをする。
「三蔵?入りますよ?」
「嫌だ…離れたくない」
「いい加減にしやがれ…退けって言ってんだろうが」
「三蔵?」
「…ッッ………あの…私…」
「あー、そう言うことですか…」
「私……諦めませんから…」
「出ていけ…」
そう言われた怜音は八戒に会釈をしてパタパタと三蔵の部屋を出ていった。
「……ハァ…嫌なところを見られたものですね」
「全くだ…」
「雅なら悟浄のところですよ?」
「…チッ…」
「三蔵?宿を変えますか?」
「恐らく変えたところであの女は追ってくるだろう…今さら面倒だ。それに、一つの街に宿屋なんて二つも三つもねえだろうが」
「それもそうですが……」
「雅は?」
「ですから…悟浄と一緒です。安心してください?悟空も一緒にいてもらってますから」
「……ハァア…」
「抱き合ってる所を見られたのはイタイですね」
「抱き合ってねえよ。勝手に抱きつかれただけだ」
「そうかもしれませんが……」
「全く…面倒くせえ…」
そう呟いては腰をあげた三蔵。
「三蔵?どちらへ?」
「迎えに行くだけだ」
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