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ワカレ
体が離れる………そして…すべてが終わろうとしていた…たとえ心が繋がっていても……
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その日の授業もぼーっとしたままの桜。授業に身が入る訳もなかった。昼休憩に入り、陵透にラインを入れる。
『陵透…ごめんなさい…』
しかしなかなか返事が来ない。押しつぶされそうなまま、返事をまつものの、やはり来なかった。残りの午後の授業が終わった時だ。携帯を出すと、母親からメールが届いている。
『今日はおわったら早く帰っておいで?』
そうして他によるところもないまま、桜は家路に向かった。玄関の前には見慣れた車。入ると見知った靴がきれいにそろえられていた。
「ただいま!!もしかして…!!」
「お帰りなさい。鞄おいておいで?」
「……」
そうして泣きたくなる気持ちを抱えたまま、桜は自室に鞄と上着を脱いで片付け、手洗いをすると急いでリビングに向かった。そこにはやはり、外の車の持ち主である陵透が居た。
「お帰り」
「ただいま…」
「桜もそこ座って?」
「……ん」
「今日ね、早めの時間に美堂君来てくれてね。桜に何かあったのかと思ったら違って…話を聞いたの。美堂先生、今日で天王学園辞任になったそうね。」
「…ん」
「それでその理由もお母さん先生から聞いたわ?1番の理由は先生がホストをやっていた、って事みたいだけど…桜は知っていたの?」
「……コク…」
「それでもよかったの?」
「…ん…何か理由があるんだって…おもったから」
「でも教職はバイトは出来ないの。知ってるでしょう?」
「でも…幼馴染の家の手伝いだって…」
「だけど賃金は発生している。立派なアルバイトよ?」
「…そうかも知れないけど…」
言葉を失った桜。そんな時に桜の母は陵透に問いかけた。
「遊び、だったって事は無いのよね?」
「はい。もちろんです。」
「じゃぁどうして、寄りにもよってそんなリスクを背負う必要があったの?」
「…桜さんにもまだ話していなかった…事なんですが。」
そう前置きをして陵透は話し出した。
「僕には両親が居ないんです。アルコール依存とDVを持っていた父から僕を守ろうとしてくれた母…ある朝に目覚めたら2人揃って自殺していたんです。……正確には、アルコールを飲んで暴力をふるう父から僕と自分の身を守ろうとした母が父を殺し、その後に母が自分自身で命を絶ったんだろう…そう思っています。それから僕は施設で暮らして…その時の恩返しと、そこに通う子供たちの為の援助の為。高校時代からの親友の家がホストクラブの経営をしていたんです。彼もそこのナンバー2に君臨していますが…その事情を知った上で色々な事を考慮、配慮しながらもおじさんたちに支えられて、守られて。今までやってました。そろそろどこかで区切りを付けなくては…そう思っては居ましたが、その前に学園に密告されたみたいで…本当にご迷惑かけてしまって…」
「…その出所がそのホストクラブとは思わなかったの?」
「それは無いです。それで落とし込もうとするならもっと早くに手をうたれていたはずですから。それにクラブ内で僕の2足のわらじを知っているのはさっき話した親友と、親友の父親であるオーナーのみですから。」
そう言いながらも陵透は頭を下げた。
「本当に申し訳ありません。僕がふがいないばかりに…桜さんにも迷惑をかけてしまいました。」
「…先生…そんな事ない…!」
「僕の独断で決めた事なんですが、1度桜さんとの交際も白紙に戻させて頂きたいと思います。」
「……ッツ!なんで?!」
「少し、冷却期間を置こう。僕の為じゃない。君のために。来年は受験の年でもあるだろう、集中するにはある意味良かったのかも知れない。」
「でも……」
「美堂君、あなたはそれでいいの?」
「良いも悪いも僕は事の発端者ですから。」
そう言うとカタンと立ち上がり、頭を下げた。
「本当に申し訳ございませんでした」
「……頭を上げて?」
「桜さんのお父様に挨拶が出来ず…申し訳ありません…」
そうして荷物を持った陵透。玄関に歩き出して、母に見送られながらも玄関を出た。自室に掛け戻った桜はベッドに突っ伏したまま声を押し殺して泣いていた。
「……桜?」
「……ック…ヒック…」
「お母さんは桜が美堂君のお仕事を理解していて、それでも好きだっていいうなら、お付き合いを続けても良いと思うの。でも美堂君が頑なにそれを断ったの。」
「……ックヒッ…エック…」
「桜の事をすごく大事に思ってくれている。確かにやってはいけない事をやっていたのは感心しないのだけれど…それでも事情は分かった。それでも好き、なんでしょう?」
「…コク…」
「ただ、お母さんの欲を言うなら、先に話してくれてたらこんなに驚かなくて済んだかも知れないけどね?」
そう小さく笑うと背中をぽんっと叩いて部屋を出て行った。桜の携帯には結子や望からラインは入ってくる。それでも読む気持ちが起きなかった。何もやる気が起きない…それでもたくさんメッセージはやってきた。どれくらいした頃か…ふと気付いた桜は時計を見ると20時を指そうとしていた。携帯に目をやるとたくさんの件数が入ってきている。そんな中に陵透のラインもあった。
『今日はごめん。学園長たちにああいってくれて…ありがとう』
『愛してる。離れていてもこれからもずっと…』
そのラインは今の桜の心にはただ痛く刺さるだけだった…
『陵透…ごめんなさい…』
しかしなかなか返事が来ない。押しつぶされそうなまま、返事をまつものの、やはり来なかった。残りの午後の授業が終わった時だ。携帯を出すと、母親からメールが届いている。
『今日はおわったら早く帰っておいで?』
そうして他によるところもないまま、桜は家路に向かった。玄関の前には見慣れた車。入ると見知った靴がきれいにそろえられていた。
「ただいま!!もしかして…!!」
「お帰りなさい。鞄おいておいで?」
「……」
そうして泣きたくなる気持ちを抱えたまま、桜は自室に鞄と上着を脱いで片付け、手洗いをすると急いでリビングに向かった。そこにはやはり、外の車の持ち主である陵透が居た。
「お帰り」
「ただいま…」
「桜もそこ座って?」
「……ん」
「今日ね、早めの時間に美堂君来てくれてね。桜に何かあったのかと思ったら違って…話を聞いたの。美堂先生、今日で天王学園辞任になったそうね。」
「…ん」
「それでその理由もお母さん先生から聞いたわ?1番の理由は先生がホストをやっていた、って事みたいだけど…桜は知っていたの?」
「……コク…」
「それでもよかったの?」
「…ん…何か理由があるんだって…おもったから」
「でも教職はバイトは出来ないの。知ってるでしょう?」
「でも…幼馴染の家の手伝いだって…」
「だけど賃金は発生している。立派なアルバイトよ?」
「…そうかも知れないけど…」
言葉を失った桜。そんな時に桜の母は陵透に問いかけた。
「遊び、だったって事は無いのよね?」
「はい。もちろんです。」
「じゃぁどうして、寄りにもよってそんなリスクを背負う必要があったの?」
「…桜さんにもまだ話していなかった…事なんですが。」
そう前置きをして陵透は話し出した。
「僕には両親が居ないんです。アルコール依存とDVを持っていた父から僕を守ろうとしてくれた母…ある朝に目覚めたら2人揃って自殺していたんです。……正確には、アルコールを飲んで暴力をふるう父から僕と自分の身を守ろうとした母が父を殺し、その後に母が自分自身で命を絶ったんだろう…そう思っています。それから僕は施設で暮らして…その時の恩返しと、そこに通う子供たちの為の援助の為。高校時代からの親友の家がホストクラブの経営をしていたんです。彼もそこのナンバー2に君臨していますが…その事情を知った上で色々な事を考慮、配慮しながらもおじさんたちに支えられて、守られて。今までやってました。そろそろどこかで区切りを付けなくては…そう思っては居ましたが、その前に学園に密告されたみたいで…本当にご迷惑かけてしまって…」
「…その出所がそのホストクラブとは思わなかったの?」
「それは無いです。それで落とし込もうとするならもっと早くに手をうたれていたはずですから。それにクラブ内で僕の2足のわらじを知っているのはさっき話した親友と、親友の父親であるオーナーのみですから。」
そう言いながらも陵透は頭を下げた。
「本当に申し訳ありません。僕がふがいないばかりに…桜さんにも迷惑をかけてしまいました。」
「…先生…そんな事ない…!」
「僕の独断で決めた事なんですが、1度桜さんとの交際も白紙に戻させて頂きたいと思います。」
「……ッツ!なんで?!」
「少し、冷却期間を置こう。僕の為じゃない。君のために。来年は受験の年でもあるだろう、集中するにはある意味良かったのかも知れない。」
「でも……」
「美堂君、あなたはそれでいいの?」
「良いも悪いも僕は事の発端者ですから。」
そう言うとカタンと立ち上がり、頭を下げた。
「本当に申し訳ございませんでした」
「……頭を上げて?」
「桜さんのお父様に挨拶が出来ず…申し訳ありません…」
そうして荷物を持った陵透。玄関に歩き出して、母に見送られながらも玄関を出た。自室に掛け戻った桜はベッドに突っ伏したまま声を押し殺して泣いていた。
「……桜?」
「……ック…ヒック…」
「お母さんは桜が美堂君のお仕事を理解していて、それでも好きだっていいうなら、お付き合いを続けても良いと思うの。でも美堂君が頑なにそれを断ったの。」
「……ックヒッ…エック…」
「桜の事をすごく大事に思ってくれている。確かにやってはいけない事をやっていたのは感心しないのだけれど…それでも事情は分かった。それでも好き、なんでしょう?」
「…コク…」
「ただ、お母さんの欲を言うなら、先に話してくれてたらこんなに驚かなくて済んだかも知れないけどね?」
そう小さく笑うと背中をぽんっと叩いて部屋を出て行った。桜の携帯には結子や望からラインは入ってくる。それでも読む気持ちが起きなかった。何もやる気が起きない…それでもたくさんメッセージはやってきた。どれくらいした頃か…ふと気付いた桜は時計を見ると20時を指そうとしていた。携帯に目をやるとたくさんの件数が入ってきている。そんな中に陵透のラインもあった。
『今日はごめん。学園長たちにああいってくれて…ありがとう』
『愛してる。離れていてもこれからもずっと…』
そのラインは今の桜の心にはただ痛く刺さるだけだった…
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