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始まりは、突然に。
秋人を待つ事三十分…
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その間にも美羽は宮村と様々な話をしていた。仕事内容の最終チェック、スケジュール関係、その他に注意しなくてはならない事等…本当に色々と宮村は教え、美羽もまたそれを必死にメモを取っていた。しかし、このフィードバックもすべてのマネージャーに話して来て居る事と何ら変わりはないのだった。
コンコン
「どうぞ?」
その宮村の返事と同時に『失礼します』の声と共に秋人が入ってくる。美羽の顔を見ると小さくため息を吐いた。
「立ってないで座ったらどうだ?」
「話が済んでいますか?」
「まぁ粗方は?だから座ったらと言ってるんだが」
「それじゃぁ…失礼します」
そう答えると美羽の横に座った秋人。
「で、これが葛城さん用のね?」
「これって…」
「あぁ、持ち歩けってわけじゃない。何か変わった事、職場の日報とかの送信を専用端末的に一つ設けるだけ。自身の使い慣れたノートパソコンがあればそれ使って貰ってもいいけど、持ってる?」
「いえ…持ってないですけど…」
「なら丁度良かった。それ使って?」
「あの…変な事聞いてもいいですか?」
「何?」
「このパソコンの通信料や接続料って…」
「会社持ちだよ?定額制のプランになってるから何にも問題はない。ネットを見て何かを調べても葛城さんのお財布事情には問題ないようにしてるから。」
「そっか…解りました。」
「もしなんなら秋人の給料からその分天引きでもいいけど」
「何でだよ!」
「ね?こうやって怒るから…」
そうして話も終わった美羽と宮村。それと同時に秋人も立ち上がった。
「じゃぁ、お邪魔しました。」
「はいよ。」
「あの、今日はありがとうございます。お時間頂いて…」
「いいよ、またなんかあったらメールして?」
「はい」
ぺこりと頭を下げた美羽。一緒に社長室を出ていく。受付の前を通って行く二人。
「じゃぁ、恭子さん、今日は本当にすみません。」
「いいのよ!」
「置いてくぞ」
「へ?」
「早く来い」
そう呼ばれた美羽はなぜか慌てた。そうして階段を下りていく。『じゃぁ』と別れようとした時だった。
「ちょっと待て。」
「はい?」
「車?」
「いえ、今日は違いますが…」
「だったら来いよ」
「え?」
徐に呼ばれる美羽。車の鍵を開けて秋人は後部座席に荷物を投げ入れる。運転席の扉に凭れたまま『早く!』と美羽を呼ぶ。その声に戸惑いながらも美羽はその車に近付いた。
「乗って?」
「えと…」
「そっち。」
そう示すのは助手席だった。勢いに負けたのか美羽は秋人の横に座る。
「この後行くところは?」
「えっと…特にはないですが…」
「ならこのまま帰っていいか?」
「はい。…え?あの…」
「一か所寄ってから帰るから。」
そういいエンジンをかけて秋人は車を発進させた。車内は秋人の香水にも似たムスクの香りが空気を染めて、耳には心地よい音量で流れてくる洋楽が聞こえてくる。車は直進をして、いくつか角を曲がり、一一軒のマンションに着いた。その前で車は一旦停止をしてハザードランプをたいた。
「ここな?」
「え?ここって…」
「俺の家。ここの1403号だから。」
「あ……はい。」
「じゃぁ行くぞ…」
そうしてハザードランプを消すとまた出発する。隣でマンション名と号室をメモする美羽を横目で見ながらそのまま迷う事もなく、路を進んでいく。そうして車は順調に進み、二十分程した頃か、美羽の家の前に着いた。
「ほら、着いた。」
「え…私家…教えましたっけ…」
「んなの、匠さんに聞けば教えてくれる。普通なら教えてくれなくても当然だけど、マネの居所位は秘密主義の匠さんも教えてくれるよ。」
「だから携帯も…」
「普通だ。」
「あの…本当に今日はすみません…ありがとうございました…」
「いや、これで何かあっても家、解るだろう…」
「はい!助かりました!!」
満面の笑みで笑いかけた美羽。それに手を挙げて応えるとそのまま再度車を発進させた秋人。そうして美羽はこの一日でいくつか得るものがあり、家に帰ってからひたすらにまとめた。そして、初めてのノートパソコンも立ち上げ、早速宮村に報告のメールとテスト送信を行った。こうして初めての秋人のマネージャー任務初日までを実に真面目に、一生懸命向き合い、覚えていったのだった。
コンコン
「どうぞ?」
その宮村の返事と同時に『失礼します』の声と共に秋人が入ってくる。美羽の顔を見ると小さくため息を吐いた。
「立ってないで座ったらどうだ?」
「話が済んでいますか?」
「まぁ粗方は?だから座ったらと言ってるんだが」
「それじゃぁ…失礼します」
そう答えると美羽の横に座った秋人。
「で、これが葛城さん用のね?」
「これって…」
「あぁ、持ち歩けってわけじゃない。何か変わった事、職場の日報とかの送信を専用端末的に一つ設けるだけ。自身の使い慣れたノートパソコンがあればそれ使って貰ってもいいけど、持ってる?」
「いえ…持ってないですけど…」
「なら丁度良かった。それ使って?」
「あの…変な事聞いてもいいですか?」
「何?」
「このパソコンの通信料や接続料って…」
「会社持ちだよ?定額制のプランになってるから何にも問題はない。ネットを見て何かを調べても葛城さんのお財布事情には問題ないようにしてるから。」
「そっか…解りました。」
「もしなんなら秋人の給料からその分天引きでもいいけど」
「何でだよ!」
「ね?こうやって怒るから…」
そうして話も終わった美羽と宮村。それと同時に秋人も立ち上がった。
「じゃぁ、お邪魔しました。」
「はいよ。」
「あの、今日はありがとうございます。お時間頂いて…」
「いいよ、またなんかあったらメールして?」
「はい」
ぺこりと頭を下げた美羽。一緒に社長室を出ていく。受付の前を通って行く二人。
「じゃぁ、恭子さん、今日は本当にすみません。」
「いいのよ!」
「置いてくぞ」
「へ?」
「早く来い」
そう呼ばれた美羽はなぜか慌てた。そうして階段を下りていく。『じゃぁ』と別れようとした時だった。
「ちょっと待て。」
「はい?」
「車?」
「いえ、今日は違いますが…」
「だったら来いよ」
「え?」
徐に呼ばれる美羽。車の鍵を開けて秋人は後部座席に荷物を投げ入れる。運転席の扉に凭れたまま『早く!』と美羽を呼ぶ。その声に戸惑いながらも美羽はその車に近付いた。
「乗って?」
「えと…」
「そっち。」
そう示すのは助手席だった。勢いに負けたのか美羽は秋人の横に座る。
「この後行くところは?」
「えっと…特にはないですが…」
「ならこのまま帰っていいか?」
「はい。…え?あの…」
「一か所寄ってから帰るから。」
そういいエンジンをかけて秋人は車を発進させた。車内は秋人の香水にも似たムスクの香りが空気を染めて、耳には心地よい音量で流れてくる洋楽が聞こえてくる。車は直進をして、いくつか角を曲がり、一一軒のマンションに着いた。その前で車は一旦停止をしてハザードランプをたいた。
「ここな?」
「え?ここって…」
「俺の家。ここの1403号だから。」
「あ……はい。」
「じゃぁ行くぞ…」
そうしてハザードランプを消すとまた出発する。隣でマンション名と号室をメモする美羽を横目で見ながらそのまま迷う事もなく、路を進んでいく。そうして車は順調に進み、二十分程した頃か、美羽の家の前に着いた。
「ほら、着いた。」
「え…私家…教えましたっけ…」
「んなの、匠さんに聞けば教えてくれる。普通なら教えてくれなくても当然だけど、マネの居所位は秘密主義の匠さんも教えてくれるよ。」
「だから携帯も…」
「普通だ。」
「あの…本当に今日はすみません…ありがとうございました…」
「いや、これで何かあっても家、解るだろう…」
「はい!助かりました!!」
満面の笑みで笑いかけた美羽。それに手を挙げて応えるとそのまま再度車を発進させた秋人。そうして美羽はこの一日でいくつか得るものがあり、家に帰ってからひたすらにまとめた。そして、初めてのノートパソコンも立ち上げ、早速宮村に報告のメールとテスト送信を行った。こうして初めての秋人のマネージャー任務初日までを実に真面目に、一生懸命向き合い、覚えていったのだった。
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