時は満ちた... 〜厨二病少年が英雄になるまで〜

あぷ

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1章

10話 鬼ごっこ開始!

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「じゃあまずは鬼ごっこをしましょ!」

美心は両手のひらを合わせながらそう言った。

「いいじゃん!山の中なら障害物も多いし、ちょうど良さそうだね。」

「じゃあ、ジャンケンで負けた方が鬼ね。」

この案に俺が納得して、じゃんけんをした結果、俺が鬼になることになった。

「じゃあ10秒たったら追いかけるね。」

「分かったわ。」

そう返事をした美心は、あっという間に視界から消えてしまった。

「・・・8、9、10。よし、行くか」

(どこから探そうか。範囲はそれほど大きくないから、とりあえず上の方から下に向かって探してくか。)


作戦を決めた俺は、ダッシュで山の頂上の方へ向かった。

(よし!後ちょっとで頂上k..)

あと少しで頂上というところで、視界の中に腕を組んで、なめくさったような笑みを浮かべながらこちらを見下ろしてる美心の姿があった。

(・・・!こいつ、おちょくってんな!)

その飄々とした態度に一瞬、憤りを感じた俺はもう一段階ギアを上げて、彼女の後を追った。
俺のスピードが上がったことに気が付いたのだろう。今、俺がいる位置とは違う方向から斜面を下り始めた美心を見て、チャンスだと思った俺は、彼女が通るであろう道を先回りするために、斜面を横切って彼女の元に向かうことにした。

(・・・いた!俺の天才的な計算によって導かれた経路通りだ!)

斜面から下ってきた彼女に対して、直角に迫る俺は勝利を確信した。

「捕まえたぁ!!」

そう言って美心にタッチしようとした瞬間、彼女の姿が突然、目の前から消えた。

「あれ!?どこいった!」

そう言って周囲を確認してみても、どこにも彼女の姿は見当たらない。

「ざ~んねん。あと一歩だったね。」

声の聞こえた方向に顔を向けると、空中へと身体を翻し、軽やかに俺の頭の上を飛び越えている美心の姿があった。

「まじかよ!」

彼女のアクロバティックな動きに驚いた俺は一瞬たじろいでしまった。その間に瞬く間に逃げていった彼女を、俺は見ているだけしかできなかった。



「くっそ。どこに逃げたんだよ。」

それから十分ほど周囲を探索したが、彼女を見つけることが出来なかった。

「もしかして私のこと探してたぁ?」

斜面を下に下っていた俺は、首を反転させて頂上の方へ視線を移した。

「おい。君は僕のことを馬鹿にしているのかな?」

彼女に対する憤りがバレないように、必死に笑みを浮かべながら、彼女に言った。

「そんな事ないわ。ただいつまで経っても見つけに来ないから、熊にでも食べられたのかと思って、心配して探しに来たの。」

「あはは、ごめんね。ちょうど今、僕の天才的な計算術によって君の場所を割り出したから、捕まえに行こうと思ってたんだ。」

「そういう事にしといてあげる。」

元々あってないような自分のプライドを傷つけられた俺は、このターンで絶対に捕まえてやると、闘志を燃やした。

最初からフルスピードを出そうと地面を踏みしめた瞬間、なんと彼女の方から俺に向かってきた。





(ふふ。恐らく柊相手なら正面から行っても捕まらなそうね。)

10分前のやり取りからそう判断した美心は、余裕を持ちつつ、全速力で地面を駆け下りた。

(・・・あいつやっぱり俺の事なめてるな。絶対逃がさねぇ)

そう意気込んだはいいものの、正直捕まえられる気がしない。この鬼ごっこが始まってから常に優位を取られている柊は、精神的にも少し弱気になっていた。

(・・・いや、やれるかどうかじゃない。やるんだろ俺!)

そう、今重要なのはやれるかどうかではない。絶対に捕まえてやるという固い意思だ。
そう考え出したら、さっきまでとは比べものにならないくらい視界がクリアになった。

(おぉ!美心の動きがよく分かるぞ!
あれ?ていうかこれ右から来るんじゃない?)

美心が全身を使って俺に対してフェイントを掛けているのがよく分かる。だが、何故か俺は美心が右から抜いてくる気がして、咄嗟にその方向へ手を突き出した。

「え?」

「あれ?」

俺が咄嗟に出した右手が彼女の腕に当たり、あっさり捕まえてしまった。

「ちょっ!どういうこと!なんで全くフェイントに引っかからないの!」

この結果に納得が出来なかった美心は俺に詰めて来た。

「僕もよくわかんないよ!ただ美心の身体の動きを見てたら何となく分かったんだ。」

迫ってくる美心から逃げるように身体を後ろに逸らしながら、そう答えた。

「いや、どんな動体視力してんのよ!!さっきはまるで反応できてなかったじゃない!」

「うーん、なんでだろう・・・」

俺は顎に指を添えて、自分がなぜ美心を捉えることが出来たのか考えてみた。そして一つの結論に辿り着いた。

「そうだ!最初は初めてこの身体を使っての鬼ごっこだったし、油断とか慢心があったんだよ。けど今は絶対に捕まえるっていう固い意思によって僕の隠された能力が発動したんだ!」

「隠された能力・・・?」

美心は少し関心を寄せながら、しかし自分が捕まったことを認めたくないのか俺の事を訝しみながら見てきた。

「そう!僕はこれまでの人生、自分の隠された能力がバレないように人目を気にしながら生きてきたんだ!そして、その過程で培われた動体視力と反射神経がたった今、火を吹いたのさ。」

「・・・ふっ。そういう事ね。中々やるじゃない。じゃあ逆に今のは私が慢心していたっていうわけね。」

柊の隠された能力に納得したのか、美心は負けを認めた。そして、やはりこの手のやり取りには乗り気な美心であった。

(ふぅ。純粋に他人の視線が過剰に気になっちゃうだけなんだけど、何とかなったな。悠にはよくウジウジするなって言われるけど、それが俺の隠された能力を生み出したのさ!)

自身のへっぽこ属性が生み出した能力に惑溺わくできしていたところを美心の一言によって、現実に引き戻された。

「じゃあ、次は私の番ね。10秒数えるから早く逃げなさい!」

そうして俺たちは数時間ほど鬼ごっこを続けて、ようやく次の修行に移ることにした。

「しかし、本当にすごいなこの身体。これだけやったのに少ししか息が乱れない。」

俺は自身の身体を確認しながらそう呟いた。

「そうね。でも喉が渇いたわ。」

汗を垂らしながら、手で顔を仰ぐその姿は何とも扇情的なことか。

(だめだめ!同士に対してそんな感情を抱くとは紳士失格だ!)

急に頭を振りかぶり出したと思ったら、妙にスッキリした顔でこちらを見てくる柊の顔を見て、言いようのない恐怖を感じた美心であった。



「はぁぁああ。水うっっま!!!」

「やっぱり身体を動かした後に飲む水が1番美味しいわn・・・!」




刹那。2人の己の中にある細胞という細胞がここから今すぐ逃げろ、と危険信号を発した。




「な、何よこれ」

「はぁはぁ。何なんだ、この気色の悪い空気は...」




「おいおい。マジでいやがったよ。お前ら俺と同類かぁ?」

2人が後ろを振り向くと、そこには亜麻・・色の瞳を携えた身長190cmを超える大男が、こちらを舐めまわすように見つめていた。
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