時は満ちた... 〜厨二病少年が英雄になるまで〜

あぷ

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1章

9話 修行すっぞ!

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「それで?坂城くんにバレたって言うのは本当なのかな?」

「・・・はい。大変申し訳ありませんでした。」

俺は今美心の家にいる。そして、自分の部屋の椅子に座る美心の正面で、膝と手の平を地面につき、頭を地面にめり込ませるような勢いで体を綺麗に折り畳みながら謝罪の意を示している。つまり土下座をしているという訳だ。
さながら鈍臭い働きアリが女王アリに呆れられているようだ。

「あなたから電話が掛かってきたから何事かと思ったけど、まさかこんなことになっているとはねぇ。。。」

そう、俺は下校中に起こったことを素直に美心に話したのだった。ここで嘘つかない俺偉い!!

「はい。あの、でも仕方なかったというか、どうしようもなかったというか・・・」

そう言いながら重い頭を上げてみたら、能面を被ったかのように、無の表情を浮かべている美心の顔が目に入った。

(やべぇぇぇえ。絶対怒ってるよ。これ許してもらえるのか?でもしょうがないじゃん!ああでもしなきゃ絶対俺たち死んでたし!)

必死に頭の中で言い訳をしていた俺に対して、美心が優しさを含ませながら語尾を強くして語りかけた。

「はぁ、まぁいいわ。確かにその状況じゃ仕方ないわね。でもこれ以上はダメだからね!坂城くんにもしっかり口止めしといてよ!」

女神だ、女神はここにいたんだ。その時、俺は二度と彼女との約束を違わないと心に決めた。

「何拝んでんのよ、気持ち悪いわね。それより、その化け物みたいなのがこの街にいるなんてね。発生した時期を考えても、恐らくあの現象と関係してるわよね。」

あの現象とは、今の俺たちの関係の原因ともなった視界ピカピカ現象のことだ。

「だろうね。明らかに普通じゃなかった。あんなデカい狼みたいなの見たことないからな。」

「また襲われないとも限らないわね。だとしたらやる事は一つね。」

「ふっ。どうやら美心も僕と同じことを考えていたようだな。」

そうして、次の休みに山で修行をすることに決めた俺たちは無言でお互いの拳と拳を合わせた。


□       □       □       □       □       □       



その後、家に帰った俺は家族と食卓を囲んでいた。

「柊。あれ以降、目の調子はどうなんだ?」

父が魚を口に運びながら、俺にそう聞いてきた。

「悔しいことに何もないんだ。眼科の先生も原因がわからないって言うし。ごめん、、、」

本当のことを言えないことが申し訳なく感じた俺は、躊躇いながらも父に答えた。。

「そうか...何か聞きたいことがあったらいつつでも聞きなさい。」

「ありがと、父さん」

「・・・・」

「・・・・」


「いや、なんで悲しがってんのよ!!確かに原因が分からないのはちょっと怖いけど、何もないんだからもっと喜びなさいよ!父として!」

妹の茜が、椅子から立ち上がりながらナイフのような鋭いツッコミを入れてきた。

「だって何も無かったんぞ!息子が超能力に目覚めるとかなったら激アツだったじゃん!しょうがないじゃん!」


(もうすぐ50を迎える父親が、こんな口調で実の娘に反論しているところなんて見たくなかったよ。。。)

「だってじゃないでしょ!お母さんもなんか言ってよ!」

「お、おい!そうやってすぐに他人を頼るのはやめなさい!」

父がパンドラの箱を開けようとしている娘を慌てて諭した。

しかし、もう全てが遅かったのだ。

「お父さん。黙って食べなさい。」



「・・・はい。」

「ほーら!最初っから反論なんてしなきゃ良かったのに!」

茜が縮こまった父に対して、勝ち誇ったように言い放った。

「茜。あなたもよ。」


「・・・はい。」

こうして、白石家には木の実を齧るように料理を食べるリスが2匹生まれたのであった。


鬱屈とした空気の中、偶々流れていたテレビのニュースに俺は注意を引かれた。

「このニュース最近よく流れるよね。」

「あぁ、全国で発生してるらしいな。ここら辺でも発生してるからお前たちも気をつけた方がいいかもな」

俺がなんとなしに発した言葉に父がそう答えた。そのニュースの内容とは、謎の失踪事件が全国で多発してるというものだ。

「まぁそんなに気にしなくても大丈夫でしょ。。。うん。」

そうは言ったものの、この事件が発生し始めた時期と、自分の身に起きたことの原因となった出来事の時期を考えると、どうしても、心のどこかでこの2つの因果関係を否定することが出来なかった。


□       □        □       □        □       □



「ようやく着いたわね。」

「あぁ。この開けた場所なら誰も来ないし、修行にはもってこいだな。」

約束の日になった俺たちは、電車やバスをいくつか乗り継いで、都市部から大きく離れたところにある目的の山にたどり着いた。

「そうね。ところであなたはなんて格好をしているの。。。」

美心は俺が学校指定のジャージを着たまま、ストレッチをしている様子を見ながらそう言った。

「頼むから触れないでくれ。運動しやすい服で来ようと思ってたんだけど、これしか無かったんだ。。。」

「そ、そう。まぁ動きやすいことには変わりないわね。」

そう言う彼女は、レギンス付きの丈の短いスポーツスカートに、体のラインが浮き出るような薄い素材のパーカーを着ている。

(なんだろう。ものすごく官能的だ!!!)

「あんまり見ないで欲しいんだけど・・・」

柊から向けられる視線に気づいたのだろう。その視線を感じた美心は、ほんのり頬を赤らめた。

「ご、ごめん!」

少し気まづくなった空気を入れ替えるように、俺は修行をするにあたっての目標の確認をした。

「とりあえず今日の目標は、僕が自由自在に焔を動かせるようになること。美心が水の形状を自由自在に変えられるようになることかな?」

「そうね。あとは、この身体能力が上がった体をもっと上手く使いこなす事ね。」

お互いの課題を確認し終わった俺たちは、ようやく修行を開始することにした。

迫り来る恐怖の塊に気づかないまま・・・

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