拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜

N

文字の大きさ
8 / 24
第1章 転生編

第8話 友達ができた、多分

しおりを挟む


 夕方になり、ユリア達を家に送るために、俺と彼女たちは一緒に外に出る。あ、もちろん俺が率先して送ろうとしてるわけではない。父さんに送ってやれと言われ、俺は何度も断ったのだが、剣を壊した罰だと言われ、無理やり外に出された。まあ、罰が暴力じゃないだけマシか。

 ユリアとは絶妙な距離を保ちながら歩く。父さんはユリアに「チーと仲良くしてやってくれ」と言って送ってくれた。俺は嫌だけどな。

 俺はユリアの少し前を歩く。なぜって、ユリアの後ろを歩いたら、「触った」とか「ストーカー」って言われるかもしれなくね。前にいれば安全だ。前世から俺は女の後ろを歩くのも立つのも避けていたしな。

 前世は、男性が女性に声かけるだけで通報される世の中だったからな。いやこれガチの話だからな?ここまで慎重になる俺は正常……だよな?

 ユリアは俺の後ろから気さくに話しかけてくる。

「優しいお父さんだったね」

「え?あ、はい」

 確かにこの世界の俺の父さんは優しい。ただの親バカなのかもしれないが。母さんも今のところは優しい。

「なんでチー君のお父さんとは普通に話してるのに、私と話す時はどもるの?やっぱりまだ距離感があるのかな……」

 少しユリアはすこしぷく~っと頬を膨らませる。ちょっと可愛いな畜生。

 そりゃチー牛だし、女子と話したこともほとんど無いし、俺のしゃべり方とか気持ち悪いし、容姿はキモ……今はイケメンだからキモくはないか。

 未だに自分の顔が昔の気持ち悪い顔だと思っている癖みたいなものがある。17年もチー牛で過ごしてきたんだぜ?そのチー牛顔が俺の脳内で根付いてしまっている。

 そもそも顔以前に、家族とは普通に話せるのは普通じゃないの?ただ、あくまで親子なのによそよそしいと怪しまれそうだから、俺なりに頑張って話しているつもりだ。それに父さんとは男同士だしな。

 あ、別に前世もまともに親と話してはいなかったか、アッハッハ。

「いや、家族なら普通に話せるし……そういうのとは違うとおもうんすけど」

「私とは友達、じゃないのかな……」

「逆にいつ友達になったんすか?」

「ひどくない!?」

 ユリアが雷に撃たれるようにショックを受けた。だが、すぐに立ち直り、俺に再び聞いてくる。

「あ、諦めないで、私……。チー君、そのね、私と友達になってほしいんだけど……。私の事、そんなに嫌?」

「え?いや、えっと……」

 そう言われると、断れない。俺だって友達は欲しい。今までオタク仲間以外の友達はいなかった。あと、さっきからメイドの視線が怖い。友達になってあげろオーラを感じる……。

 男友達なら、人生を失うほどのリスクがないから、ここまで警戒しなくて済むのだが……。

 この世界の初めての友達が女ってのは、社会的リスクが怖い……。でも俺を見つめ続けるメイドも怖い……。クソ、イケメンの俺を信じろ!

「……はい。別に、なっても、いいです……」

 それを聞いて、ユリアの目がキラキラと輝く。

「本当?良かった……。今まで私ね、友達って作ったことなかったから」

 意外だ。こんなにかわいい容姿をしているのに。

 あ、違うな。たしか、最近この村に来たんだっけ。それまでは、どこにいたんだろう。そこでは友達は作れなかったんだろうか。そういえば両親は?メイドが付いてるってことは貴族?よくわからん。

「それにしても、すごいなあ、チー君は。剣だけじゃなくて、魔法もできちゃうんだもん」

「でもまだ初級ですし」

「もう、普通は学園に行ってから魔法を習うんだからね?もっと自信持っていいんだよ?」

 自信を持て。父さんにもユリアにも言われる。

 前世が自己肯定感の欠片も持てないような人生を送ってきた分、今更、いくら転生したところで、変わることなどできない。

 俺の自己肯定感は無に等しい。無に何を掛けても何も生まれない。俺は前世でチー牛に生まれた時点でもう、転生しても変われない。

「もう、下向かないで顔上げてよ」

「……はあ。優しいんすね。前世でもこんな優しい人がいればな」

「それはもちろん、”どんな人にも優しく”、というお母様の教えなので。ところで、”前世”ってどういうこと?」

 ユリアは不思議そうに俺の顔を覗き込む。

 俺は心臓が止まるかと思うほど焦った。さすがに失言だった。転生したことはできるだけバレたくない。

 特に、父さんには。俺を混ざりものだと、紛い物だと思われて、気持ち悪がられる気がする。親として接してくれなくなるかもしれない。ユリアも気味悪がってしまうかもしれない。俺はシラを切る。

「いや、なんでもないっす」

「そうなの?何かあれば頼ってね?友達なんだから!」

 ユリア特に問い詰めることもなく、俺に手を振って家に帰っていく。こんな無邪気な子供が俺を社会的に殺す、やっぱそんなことあり得ないよな。

 にしても、ユリアの家ってこんな近かったんだな。俺の家から1分も経っていない。

 どおりで今まで俺の剣の稽古を見られていたわけだ。恥ずかし、今度から反対側の庭でやるか?

 すると、メイドは俺に近づいてきて、一言。

「チー様、あなたは”誰”なんですか」

 真顔で(メイドは基本ずっと真顔だが)急にそんなことを聞かれ、一瞬だけ緊張してしまう。だけど、俺は冷静に答える。

「……チー・オンターマです」

「……そうですね。失礼しました」

 メイドはそのまま礼をして、家に向かって行く。

 今の意味深な言葉は、やっぱり、俺は疑われている?少し不安になる。だ、大丈夫だ、きっとバレない。

 にしても、俺の今世初めての友達がまさか女子とは。

 しかも、あんなにかわいい。もしかしたら、あの子を彼女に、なんて期待してしまう。あれ、でも幼馴染って、その関係が当たり前すぎてあんまり恋に発展しないんだっけか、知らんけど。

 ただ、どちらにしても、俺の性格じゃ無理だろう。

 ユリアも、俺との関わり方に困っているところもある。いや俺の捻くれのせいだけど。とにかく、この性格が治らない限りは、無理だろうな。

 別に無理でもいい。俺はちゃんと”現実”を見て”慎重に”考える。

 前世の俺調べでは、恋愛での“顔”って、就活の”履歴書”みたいなもんなんだよな。

 最初に見て分かる容姿(履歴書)でふるいにかけて、そこで落ちたら面接で中身なんて見てもらえない。

 今世の俺は顔で履歴書審査をクリアできても、性格がチー牛のままなので、女子を楽しませるという面接突破は難しい。それくらいは分かってる。

 まあ、前世はチー牛だから、女はもちろん、男にすら気持ち悪がられて、近づかれなかったが。

 これが容姿に恵まれなかった弱者男性やチー牛が、恋愛市場の土台にすら立てない現実だろう。

 ……別に、期待するくらいは良いじゃないか。どうせ無理なんだからさ、夢みるくらいは……。

 あとは、調子に乗った行動だけはしないようにしないと。俺は現実を分かっているから。慎重に生きて、人生をぶち壊されないように。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

異世界最底辺職だった俺、実は全スキルに適性Sだった件~追放されたので田舎でスローライフしてたら、気づいたら英雄扱いされてた~

えりぽん
ファンタジー
最底辺職「雑用士」として勇者パーティーを支えていたレオンは、ある日突然「無能」と罵られ追放される。 だがその瞬間、封印されていた全スキルの適性が覚醒。 田舎でのんびり生きるつもりが、いつの間にか魔物を絶滅させ、王女を救い、国を動かす存在に――? 本人まったく自覚なし。にもかかわらず、世界が勝手に彼を「伝説」と呼びはじめる。 ざまぁ有り、ハーレム有り、そして無自覚最強。 誰にも止められない勘違い英雄譚が、いま動き出す。

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

処理中です...