16 / 24
第1章 転生編
第16話 馬車の中でも緊張しまくる俺
しおりを挟む「ねえ、もしかして学園、不安?」
馬車の中、俺の隣に座るユリアは心配そうな顔で、俺を覗き込む。
そりゃ、不安で仕方がない。前世のクソみたいな体験を言うわけにはいかないが、学校に良い思い出なんてないからな。
あとは、お前が無駄に可愛すぎるせいで意識して仕方ないんだよ。いつお前が裏切って俺を嵌めようとするかなんてわからんからな。ついでにユリアの騎士とかいうめんどくさい役割も与えられて、いつ死ぬか分からないという不安。つまり全部お前のせい。
正直に不安と言いたいところだが、ユリアに気を遣われるのもあまりよろしくない。俺は冷静を装って不安を否定する。
「だ、だだ……大丈夫、でですよ?」
「あーうん、大丈夫じゃなさそうだね……。でもね、心配しないで!もしチー君に友達が出来なくても、私がいるから!」
うん。いいこと言った!ふんす!みたいな顔してるけど、なんか言い方ひどくない?
いや、嬉しいんだけどさ、俺が友達できないみたいな言い方はね?心に刺さるで?うんまあ、事実なんだけどね?
前世からの人間不信は未だ消えない。村にいても家族とユリア以外との関わりはひたすら避けていた。
そんな俺が、人が大勢いる学園で急にコミュニケーションできるはずがない。
そもそも、人ってどうやって会話してんの? 何をどう切り出せばいいかすら分からん。ユリアとすら、俺からの話題は何もないのだ。ユリアから話しかけてくれる上、1対1だからなんとかなっている。
あと、俺が話しかけたとして、相手がどう思っているのかが分からないってのが怖い。なんでこいつこんなこと話してくるんだ?的な。
さらに、学校のように、大勢になったとたんに、ただでさえちゃんと話せない俺は、全く話せなくなる。固まる。急に人目を気にしてしまう。
はあ。だりい。人を見たくない。最近ネガティブな想像しかできないよおおお。俺は頭を抱えるが、ユリアはそんな俺を見て何度も慰めてくる。
「あ、あと、チー君はもっと自信持ってね!私はチー君がすごいってこと、知ってるから!きっと学校のみなさんもすごいと認めてくれるよ!」
「いや、俺よりすごい人はいっぱいい……!?」
むくれ顔のユリアは急に俺の口に人差指を置いた。俺は反射的に速攻ユリアから距離をとる。何なんだよマジで……ちょっとドキッてして、さすがに焦っておろおろしてしまう。
「もう、また自分をそうやって卑下する……そんな口を閉じさせただけだよ」
「いや、その、逆に誇示するのも良くないじゃん」
「ま、まあそれはそうだけど、そこまで卑下する事ないのに」
ほんと難しいよな、人間って。卑下しても誇示しても、文句を言われる。そういうバランスを上手く取れる人が世渡り上手なんだろうさ。
俺は卑下してばかりだからな。というか、俺の場合、本気で自分がキモくてダメ人間だと思ってるだけなんだけど。
-----
そんなこんな雑談していたら、いつの間にか、俺は疲れて眠っていた。
外は夕暮れ時だ。空は夕焼けで透き通ったオレンジ色に染まっている。綺麗だなあ、俺も歳なのかなあ、こんな景色見てちょっと感動を覚えるとか。ゲームとか無い分、こういう景色とか見る機会が多くなっているのもあるのかな。
しばらく経つと、王都の城壁らしきものも見えてきた。王都の巨大な石造りの城壁が、夕暮れの空に黒く影を落としていた。
めっちゃたけえ……そしてでけえ……。あれが王都か……。なんだか壮大で、ラスボスに挑む前みたいな気持ちになる。今まで住んでたオンターマ領ってのはかなり田舎だったんだなと思えるほど。
うええ、人がいっぱいいそうで緊張してきた。
……あれ、それにしても、肩が少し重いんだよな。そう思って俺は横を見てみると、ユリアが俺の肩に頭を乗せて寝ていたのだ。
「!?」
うう、やめてくれよ……。
すごい、安心したようにすやすやと眠っていて、穏やかな寝息がかすかに聞こえる。まつ毛は長く、肌は透き通るように白い。無防備な寝顔が妙に色っぽい。
もし俺が慎重すぎない理性のない野獣だったら襲ってるぞ。まあ社会的に死にたくないから絶対に襲わんが。
女と付き合うのはリスクしかない。この世界では知らんが、少なくとも前世はそうだった。
ただの女性への声かけすら、人生が終わるかもしれないリスクが伴っていたのだから。
はあ。とりあえず、起こすのも悪いし、このままにしておくけど、なんか、落ち着かない。早く王都に着いてくれ……。
------
「えっと、ユリア?着きましたよ?」
俺は寝てるユリアを起こそうとするのだが、なかなか起きない。そういえば学園が楽しみであんまり眠れなかったとか言ってたっけ。遠足前の小学生かよ。
無理やりでも起こしたいのだが、少しでも触れば社会的に死ぬ。……でも、気になる。
顔をつねってみるか?ひっぱたいてみるか?くすぐってみるか?……うん。ダメ絶対。
そうだ、触らなければいいじゃないか。例えば、軽く風魔法でユリアの顔めがけて発射したりとか。……いや、なんかそれは、綺麗な顔を汚しかねない罪悪感が……。
と考えているとユリアの瞼がゆっくりと開く。
「ん、んん。あ、おはよう……」
「え、あ、はい」
とりあえず冷静を装うが、逆にユリアが急にハッとして取り乱し始める。
「ってごごごめん!わざとじゃないから!いつの間にか寝ちゃって、倒れたところにちょうどチー君の肩だっただけだから!」
「分かってますから訴えるのだけはやめてくださいね」
「そうだよね!分かってま……ってなんで私が訴えることになってるの!?」
「早く降りましょうか」
「急に冷静!?」
ぐ、焦ってるユリアも可愛い!俺は冷静を装っていても、心臓はバクバクである。俺は急いで馬車から降りる。
ユリアも俺に続いて降りていく。
すでに辺りは薄暗くて、かなり肌寒い。1月の冬だからな。でもみたところ、雪はほとんど積もっていない。王都は雪が降らない地域なのか。
建物のところどころに街灯らしいものが浮かんでいて、辺りを照らしていた。恐らく光魔法を閉じ込めている魔道具か。もちろん、店は全部閉まっていて、開いているのは宿屋くらいだ。
ちなみに、夜は学園も閉まっているので、今から寮に行っても意味がない。そういえば父さんに、「もし夜に王都に着いたなら宿屋に行け」と言われた。入学式は明後日だ。トラブルがあったときのために早めに着くようにしていた。
「遅くなっちゃったし、宿探そっか」
「あ、はい」
こうして俺たちは王都に無事に着き、暗い街の中、宿探しが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います
リヒト
ファンタジー
不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?
「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」
ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。
何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。
生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。
果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!?
「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」
そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?
自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
異世界最底辺職だった俺、実は全スキルに適性Sだった件~追放されたので田舎でスローライフしてたら、気づいたら英雄扱いされてた~
えりぽん
ファンタジー
最底辺職「雑用士」として勇者パーティーを支えていたレオンは、ある日突然「無能」と罵られ追放される。
だがその瞬間、封印されていた全スキルの適性が覚醒。
田舎でのんびり生きるつもりが、いつの間にか魔物を絶滅させ、王女を救い、国を動かす存在に――?
本人まったく自覚なし。にもかかわらず、世界が勝手に彼を「伝説」と呼びはじめる。
ざまぁ有り、ハーレム有り、そして無自覚最強。
誰にも止められない勘違い英雄譚が、いま動き出す。
木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!
神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。
そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。
これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる