拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜

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第1章 転生編

第18話 少女の意外な一面を見てしまった

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 食堂の中に入ると、食堂独特の香ばしい匂いが鼻をつく。焼いた肉やパン、スープの香りなどが混ざり合っていて、朝の小腹が空いた体に食欲がそそる。

 内装はいかにも異世界って感じのほとんどが木製のような感じ。テーブルには椅子が4つセットでいくつも並んでいて、お客さんで埋まっている。

 天井はシャンデリアのような光の魔道具がつるされていて、店内は明るく照らされている。

 剣や杖、ローブを纏ったり簡易的な鎧を付けた冒険者っぽい人が多い印象。奥はキッチンになっていて、シェフが料理を作っている様子が見える。

 匂いからも分かるが、料理は色々あるっぽい。日本でもあったパンや米はこの世界でもあるようだ。周りを見るが、麺類は残念ながら見当たらない。

 なんだかラーメンが恋しいな。異世界だし、文化も違っているのも当たり前なのだが。

 食堂のスタッフは忙しそうで、せっせと料理を運んだりオーダーを取っている。

 1人のスタッフがこちらに気づき、人数を確認した後、適当な空いている席に案内された。席に着き、メニューをみる。

「チー君は何にする?」

「ユリアと同じもので」

「チー君まだメニューすら見てないよね!?」

 いや、だってこの世界の食べ物はよくわからんからな。ユリアに合わせたほうが無難だろう。

 否定されてきた人生のせいで、いつしか人に合わせるクセが染みついたのだ。優柔不断にもなってしまうさ。

 店員が注文を受けに来て、ユリアが俺の分も一緒に頼んだ。しっかりしてるなあ。ユリアは頬杖をついて呟く。

「チー君も話せるようにならないとね~」

「いや、その、話せなくても、ユリアが代わりに話してくれるし……」

「も、もう、私はずっと一緒じゃないんだからね?……頼ってくれるのは嬉しいけどさ」

 いいのさいいのさ。どうせいつかしゃべれるようになる。

 ……みたいに前世もいつかはーとか言って、結局全部行動に移すことなく人生終わったんだよな。このさぼり癖みたいなのが染みついてしまった俺は変われるのかは心配だ。

 失敗だらけの人生だったし、しゃあない。それに、今世はイケメンなんだからいつか変われるさ。



 ------



 しばらくして料理が来る。スープとパンのセットのようなものだ。

 スープは、香りからして、オニオンスープに近いような感じか。木製のスプーンですくって飲んでみる。うん、美味しいが、地球のものに比べて少し味が薄い。

 パンは柔らかさも味も、日本のパンには敵わない……まあ俺は貧乏舌なので特に問題はなかった。

 正直、よほどまずくなければ、食えればいいと思っているからな。家が貧乏だったからだろうか。恵まれたやつは良いな。

 にしても、地球の食べ物は格が違う。美味すぎたから、異世界食は少し物足りなく感じる。仕方ない。2度目の人生をイケメンで送れてるだけマシだよ。

「おいしかったね」

「あ、はい」

 うん、食えればなんでもいいけど、ラーメンが恋しい。地球は偉大だった。



 ------



 そのあとは学園の寮に部屋の申請書を提出しにいく。

 道案内はユリアに任せているので、ユリアは地図を見ながら寮まで歩いている。俺は距離を開けて付いていくだけだ。なぜって、後ろ付いてったらストーカーみたいじゃん。

 にしても、王都は広すぎて分かりにくい。しかも人も多いんだよな。

 空飛べれば速いんだけど、こんな人混みの中で飛ぶと目立つからしたくない。とにかくユリアを頼って歩くしかない。

 ……あ、前に女が歩いてる。最悪尻触られたとかストーカーされてるとか言われて人生詰みかけない。しかもこの世界に繊維鑑定なんてものもない。言われた時点で、完全な詰みだ。

 俺は女の後ろを避けて、あえて男の真後ろを歩く。これが弱者が生き残るための行動さ。ユリアはきょとんとした表情で俺を見て、何かをぼそぼそと呟いていたっぽいが、気にしないでおこう。

「チー君って、男の人が好きなのかな……私に触れられることも避けるし……あ、そしたら男装したら普通に接してくれるかも?」



 ------



 あれからユリアの斜め後ろを歩き続けているが、なかなか学園につかないのだ。
 そんなに遠いのか?出発した宿から徒歩10分くらいなはずなんだが。

 すると、歩いていたユリアは突然ぴたっと足が止まる。そして、ユリアが思いっきり笑顔で俺に振り向いた。

「ねえチー君!」

「あ、はい」

 めっちゃきらきらとしたオーラが出ているが、何かいいことでもあったのだろうか。ユリアは指をもじもじしていたと思ったら、満面の笑みで答えた。

「その……ね?迷っちゃった!」

「あ、はい。……え?」

「迷っちゃった!」



 ------



 はあ。クソデカため息がでる。

 仕方ないので、俺が地図を見ながら、さらに俺の目の前に女がいないか確認しながら、先頭を歩く。

 しっかり者のユリアに、こんな可愛い面があるとは。ギャップ萌えしそうだぜ。でもまあ、これが男女逆なら迷うなんて頼りないとか情けないとかいろいろ言われんのかね。

 王都は広いが、地図を見ながらそれっぽい目印の店の看板や、何度か現れる十字路の数などを確認しながら、慎重に歩く。

 すると、学園に近づいてきたのか、だんだん、同年代の人も増えてきた気がする。同年代くらいの視線ってほんと怖い。

 なぜか見られてる気がするし、すれ違った瞬間に笑われたりすることもなぜか多い。なんでなんだろうな。

 自意識過剰になっても仕方なくね?

「チー君、あれじゃない?」

 ユリアが俺の肩をトントンと指で軽くつつき、俺はめちゃくちゃビビりながら振り向く。ユリアが東側に指を指す。俺もそちらを見たが……。

「でか」

 まるで城くらいの大きさの、白や緑を主体とした立派な建物が見えた。正面の壁には、剣と杖が交差した意匠──学園の紋章だろうか──が五角形の中に刻まれていた。恐らく、ここが学園なのだろう。

 でかすぎて逆に気付かなかった。いやこの敷地全部が学校なのか。公立の高校をこれでもかと大きくしたらこうなる、って感じかなあ。

 5mはあるだろう校門を通り抜けると、一本道になっていて、ところどころに道が開いていて、その先には本校舎っぽい建物や、体育館や道場などの施設っぽい建物、コンビニの様な小さな商店など、もろもろすべてが学校の敷地内にあるってことか?

「3番寮はあっちですね」

 ユリアはルンルンと楽しそうに歩き始める。ほんとにそっちか?俺は念のため地図を確認するが、普通に逆だった。

「違う違うそっちは1番寮だって」

「え?あ、ごめんね!?」

 ユリアはすぐに気づいて俺の後ろについてくる。騎士とか関係なく、今後ユリアを一人で外を行動させるの心配すぎるんだが。

 まあそれはいいとして、一応、申請とは言っても、すでに厳密には申請自体は数か月前に終わっている。

 その申請時に、学園のほうで事前に部屋が決められているので、申請書の控えを出して本人確認するだけだ。

 早速受付の人に控えを渡し、手続きが終わると、自分たちの部屋の鍵を手渡され、寮内マップもくれた。後は自分で行けということだろう。ユリアに任せるとあれなので、俺が先頭に寮の中へと向かった。



 ------



 自分の部屋を見つけ、俺はユリアから鍵を受け取り、すぐに自分の部屋に入った。

 まずは内装を見る。部屋は白一色で、壁紙も綺麗に張られている。まるで現代のようだ。それに、宿屋の部屋なんかよりも数倍広かった。部屋に入って正面に窓、その窓からの帯状の陽ざしを浴びるテーブル、玄関のすぐ左にキッチン、すぐ左にトイレと風呂、部屋奥の左側にベッドも完備。金かけてんなあ。

 あと、ここは3階なので窓からは町並みの景色も見える。豆粒とまではいかないが、王都の街の建物が小さく、意外とらせん状にキレイに並んでいて綺麗だ。ほええ、良い場所だな。

 ちなみにユリアとは隣の部屋だ。一応護衛だからな。

 メイドにユリアと一緒の部屋にされかけたがさすがに断った。俺の理性が死ぬ。あと、1人の方が居心地がいい、誰の迷惑も考えなくて済む。

 メイドからは『常にユリア様から目を離さぬよう。どうか、よろしくお願いします』と言われていたが、流石に物音などでユリアが隣にちゃんといるかくらいは分かる。

 まあできるだけ部屋以外では護衛として付いていくつもりだが、どちらにしても、俺一人だとこの世界で何もできないし、お互いWINWINだろ。

 にしても、なんだろ、壁になぜか扉が設置してある。この扉はスライド式のようだ。でもトイレも風呂場も寝室もキッチンも確認したし、じゃあこの扉の先には何が?

 俺は好奇心でその扉を開けた。

 広い部屋だなあ。俺の部屋と同じくらいある。しかも、ベッドもあるし、と見渡していたのだが……

「……」「……」

 だれかと目が合う。そこにはなぜか下着姿のユリアが着替えていた。ユリアはすぐに腕で体を隠し、肩をぴくっと上げて赤面する。そのまま後ずさる。

 は?なんでユリアが?……あ、わかった。つまり、俺の部屋とユリアの部屋は扉一枚でつながっていると。

 うん。なるほど。俺は今、社会的にかなりまずい状況だ。目の前が真っ白になりそうな上、呼吸が速くなる。

 え、ここでゲームオーバー?俺まだ転生して15年くらいしかたってないのに。いや、十分生きたかな、前世を含めれば30代は生きてるし。

 じゃあ、悔いはない。俺はすぐにガチで土下座した。

「殺してください」

「なんで!?ちょ、顔を上げてよチー君!!!!」



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