ある日、森の中で彼女に出会った

レイちゃん

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本当の本編(出会い)

逃がした魚はクジラ級に大きかった

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「ん…」

朝になり、ゆっくりと脳が覚醒していく。
ここはお嬢様の寝室、その主の姿は無い。
シーツにも布団にも乱れが無く、静謐せいひつな空気が流れている。

脇机を見ると、丁寧に畳まれた私のメイド服。
身を起こし立ち上がろうとして。

「うわ、凄…」

胸からお腹にかけてビッシリと刻まれたアザ。
おそらく背中も凄いことになっているだろう。

(昨夜は激しかったな…)

人心掌握のプロである元性奴のキャティと、私の何もかもを知っているお嬢様。
猛禽もうきんにヒヨコが敵う道理は、ない。
まぁ欲を言うならば、キスマークよりも吸血の跡を残して頂く方が数倍嬉しい。
それは従者のあかしであり、お嬢様からの首輪だ。
ただ残念ながら、そんな牙の跡を首筋に残して街などに行けば騒動になりかねない。

(さて…)

本当は微睡まどろみながら、昨夜の余韻に浸りながら慰めたいところではある。
ただ、主が既に起床しているのに従者が怠けるわけにはいかない。
シーツもメイド服も整えられているのは『ゆっくりして良い』とのことなのだろうけれど。

「『浄化』」

本当は顔も洗いたいし湯浴ゆあみもしたいが、時間が無い。
一瞬で体を清めると、まず下着に手を伸ばす。
そしてメイド服を完璧に着こなし、髪を結いあげシニヨンキャップを被る。
既に太陽は高い位置にある。




「おはよう。」

「おはようございます。
 遅くなり申し訳ございません。」

既にお嬢様は少女から事情を聴かれたようだ。
キャティが食器を片付けている。

「そなたの分は残しておる。
 食べたら、あの少女を街まで送ってやれ。
 帰りにビスケットと紅茶を忘れずにの。」

「はい。」

椅子に腰かけると、キャティが紅茶を差し出してくれる。

「おはようパティ。
 昨夜は髪を振り乱して、すっごくわよ。」

「五月蠅い。」

キャティはニヤニヤしているし、お嬢様もニヤニヤされている。
私の気持ちを知っての所業、少々嫌らしい。

「ご馳走様でした。
 …では、あの少女を送ってまいります。」

「我も見送ろう。」

手早く食器を片付け、玄関でお嬢様とキャティの見送りを受け、王都の路地裏で少女と別れた。
記憶操作すらせずに放免するのは無謀かとも思ったが、お嬢様の決定に間違いなどあろうはずない。
もし他言されたところで、所詮は戯言たわごとと笑われるだけだろう。
一瞬後には少女のことなど興味を無くし、いつもの店で品を買い求め、お嬢様の元へと戻った。




夕刻、あの少女がピュアバージンで、お嬢様もキャティも腰が抜けるほどの美味な血を持つ者と聞いて、私は膝から崩れ落ちた。
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