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スー、領地へ行く

領地の現状

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「お疲れ様でした、お嬢様。」

領館の書斎にフィアンを連れ込み昔話に花を咲かせる。
伝えるべき内容は伝えたので他の面々は帰宅させた、これからは息抜きの時間だ。

「ところで、人員流出ってそれほど酷いの?」

「酷いというか…まぁ税率が8割になった頃から一気に増えましたね。
 生活が苦しくて人が出て行って、それで残った人の負担が増えて、また人が出て行くんです。
 酷い時には家族を捨てて消える人まで出る始末。
 報告、行ってませんか?」

報告も何も、先代がどこまで興味があったか分からない。
極論、きちんと予定されていた税が納められれば、その背景にまで気にしなかったかもしれない。
正直な話、執事や代官が優秀なら貴族が無能でもある程度回るらしい。
それに先代は家のために資金を得る道具と考えていたスーに重要なことを教えるわけがなかった。
今でも徴税や保安といった重要実務は、隣のミラン子爵に委託している状況だ。

「ミラン子爵の悪口を言うわけでは無いけれど。
 彼らはあくまでもミラン子爵の部下であり、フィッツ男爵に忠誠を従う人間じゃないもの。」

「まぁ私は、その日の生活がきちんと出来ればいいですけどね。
 納税代わりにお屋敷で仕事をすることだって、言い換えれば衣食住は保障されるということですから。」

「…そこまで酷いの?」

スーの問いに、フィアンはただ苦笑を返した。

(現状を確認しておく必要があるか…)

「スーの家って、ここから近いんだっけ?」

「はい、ここから近い集落なので徒歩で数分ですが。」

「今からお邪魔しても?」

「え、えぇ…私は構いませんが…
 でも何の用意も…それに、お見苦しいところを。」

遠慮するフィアンに笑う。

「私が普通の貴族とは違うことくらい、今更でしょう。
 そこの集落なら馬車を出すより歩いた方が早いわね。
 じゃ、行きましょうか。」
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