誰からも見捨てられたこの場所で

keye

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一歩踏み出した先にあるのは

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俺は今日、自殺する。

こう言うと心優しい人達は止めたり、励ましたりするのだろうけども、そんな言葉はもう頭に入ってこないと思う。


思えば悲惨な人生だった。
そんなポエミーなことを事実として言える日が来るなんて、この世界で産まれた時には全くこれっぽっちも思っていなかったけど。

二十歳の誕生日。
こんな日に飛び降り自殺なんて、何だか虚しくなるけど。


(もう少しだけ頑張る、なんて…無理なんだよ)


立ち入り禁止と書かれた貼り紙が貼ってある、鍵がかかってない屋上へと続くドアを開けた。

殴られた腹が痛む。傷だらけの手が、足が悲鳴をあげている。
俺の体が今すぐ病院へ向かえと訴えかけている。けれどもそんなのは無視して、歩き出す。

あと三歩だ。
それで俺は、楽になれる。こんなクソみたいな人生から解放される。


俺は、夏の太陽の、まるで責めるような日差しを浴びながら青い青い空へ。…一歩踏み出した。









…痛みは来なかった。一瞬で死ねたのか、それともまだ落ちている最中なのか。


(いや、死んでいたらなんで俺は今考えることが出来ている?
落ちている最中にしたら長すぎだよな…?
というか、何だか背中に違和感が)


ゆっくり目を見開くと、そこは見知らぬ場所だった。
歴史の教科書とかに載ってる、紀元前の神殿みたいな、天井がない古い建物の中。

俺はそこで、仰向けになって倒れていた。
…空へと走り出したはずの俺の体は、冷たい石の上にあった。


(…ファッ?!?!)


そして目の前にいたのは銀髪青眼のイケメン。
彼の手に光が灯り、傷が消えてく。
無表情で…あれだ、ロボットみたいに淡々と仕事をこなしていくようなそんな感じだ。

10階建てのビルから落ちたのに、その時の傷は何一つ存在しなくて、元々あった傷は消えていく。


俺の頭は一つの、有り得ない答えを導き出した。
いやいやまさか。でも、この状況は…


「どうしてこんな所にいるんですか?…死にたいんですか?」

「そうだよ俺は死にたいんだ、なのに何でこんな時に限って異世界トリップしたんだよ!!」


ビルから飛び降りた瞬間に異世界に来てしまったのだと、漠然と理解した。


自殺しようとしていた俺を嘲笑うような、馬鹿みたいな状況。
ついに俺の頭はパンクして、気絶した。
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