俺のことが嫌いなお前に、好きって言ってほしいだけ

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6 俺だけが知っている秘密

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「ピリョリリリ」

『もう朝になりました。お前らはいつまで寝る気ですか』

目が覚めた瞬間ランプが視界に入ってきて、悪い夢が始まったかと思った。現実だった。現実の方が悪夢みたいだ。

「なんかすげえ眠たいんだよ…ところで洗面所ねえの…」

『外に川があります』

「また小屋に鍵掛けてんじゃんお前…」

昨日は谷川が本を燃やして、異世界人が嫌われる理由を聞いて、谷川が意味分からん花を取ってきただけで──列挙すると酷いな。俺何もしてない。
とにかく、それだけなのに、やけに疲れてすごく眠たい。谷川はまだ寝ている。

…本を燃やして、花を取ってきただけなのに、1日が過ぎてた?花に精神力取られて10時間くらい気絶してたか?

「谷川、起きろよ」

「………んん」

声をかけただけじゃ全然起きる気配がない。
……揺さぶって起こす、のは、無理だ。あんなに掴み合いのケンカしといて何言ってんだと思うかもしれないが、俺は、俺から谷川に触れない…!

「ランプの最後の願いって何なの?」

『朝ごはんをあげましょう』

「昨日の保存食か…これボソボソしてるんだよな」

『上に畑があります。野菜でも食べればいいでしょう』

「じゃあ鍵掛けるのやめろよな」

『無理、君、外出、不可』

「またそれかよ」

俺の思い描いてた異世界ってこんなんじゃないんだけどな…と思いながら適当にランプと話す。
小屋の天井に野菜があるらしい。といっても、俺は小屋に入ってから一切外に出ていないのでまだ見てない。

なんか面白い話してよ、と無茶振りすると『我からの好感度が足りません』と返された。
そうこうしていると、後ろでもぞもぞと動く気配がした。


「杉原……?」

「おせえなお前起きんの」

「……うるせえ……」

ようやく谷川が起きてきた。目はしょぼしょぼしていて、放っておいたら2度寝しそうだ。

「ほら、朝ごはんだってよ」

「んー……あんがと……」

空いている手で保存食を指差す。

……今、谷川にお礼言われた。


俺のことは大っ嫌いだから言ってくれねえけど、人当たりのいい谷川はちょくちょくありがとーと言っていた。

それを聞いて、いいなあと思っていたんだ、俺は。

谷川とただ話してみたい。
ケンカなんて、本当はしたくないのかもしれない。
ケンカでもしないと俺のこと見てくれねえから煽るような事を言うしかないけど、俺は、本当は、ただ。


──突然、すっ、と手の中が空っぽになって、ん?と思った。


「これあんま……美味しくねえな……」

「……ん?」

俺が食べてた携行食を、谷川が食べてる。
つまり、つまりだこれは、間接キス…!?

頭の中が沸騰しそうになる。慌てて目をそらして何でもないようなフリをする。赤くなった顔がバレたら死ぬしかない。
…いやでも食べ物取られてんのに反応無しなのはおかしいか?どうすればいいんだ、俺は!

「ちょ、谷川、それ俺のなんだけど」

顔を見ないようにして、出来るだけ自然に、普通に、咎めるような声で谷川に声を掛けた。


「あ?……紛らわしいんだよ、お前」

ぐい、と突き返され、谷川は新しい方の保存食を開けていく。

理不尽すぎるだろ!…でもそんな所が好きなんだよな。

我ながらどうかしている。恋ってのはどうしようもないものだ。
すげなく対応されても、嫌いだと言っているような目で見られても、それすら好きだと思ってしまう。
本当は優しく笑いかけて、好きだと言って欲しいのに。


はあ、とため息をつくと突き返された保存食が目に入ってきた。

…食べるべきか、食べないべきか。

心拍数が上がり始めるのを知らないふりをする。
迷ってるのがバレたらキモイよな…?気にしないように、気にしないように完食するしかないか。

「何か他に食べ物ねえのかよ、ランプ」

『我は存じ上げません』

「肉とか食べてーな…焼肉行きてえ…」

………ん?
何かがおかしいなと思ったけど、口元の保存食に気を取られてそれどころじゃない。
ぼそぼそしているのに、さっきよりも美味しく感じる。自分は本当にどうかしている。

「焼肉とか言うなよ、想像しちゃっただろ」

「俺らのクラス打ち上げ予定あっただろ、あーあ…昨日の夜に皆焼肉食べ放題してたのか…」

「マジで言うなよなそういうこと…異世界転移、何も楽しくねえ…」

関節キスの味の保存食も、ぞわぞわするほど美味しいけど、谷川の話を聞くうちに口が焼肉の味を求め始めた。
カルビ食べたい。牛タン食べたい。とにかく肉をたくさん食いたい。
異世界にあるんだろうか。あるんだろうけど、俺らの手が届くような金額じゃないんだろうな。


保存食を食べ終わって、俺らはようやくランプの方に向き直った。


『これが最後の願いです。小さい方の異世界人、お前が担当をしなさい』

「……俺のことか?小さい方?」

ぶふぉっ、と吹き出す音が聞こえて、見ると谷川が笑っていた。身長は大体同じくらいだし、まあ体格的には谷川より細いだろうけど、にしても小さい??
憮然としてランプのことを睨む。


『お前だけが知っているこの場所の秘密を、2個、考えながら鍵を探しなさい。大きい方に秘密を伝えることは禁じます』

──はあ?

ーーーーー

「お前だけが知ってるって何だよ。…いや、言っちゃダメだったな。早く終わらせろよ」

「んなこと言われたって…俺だって分かんねえのに」

俺だけが知っている、この場所の秘密……?

最初に小屋を物色していた時に俺だけが見たような物でもあったか?
…いや、どれもよく分からないガラクタばかりで、必要そうなものは全部谷川に伝えた。
これは秘密じゃない。


それじゃあ、谷川がいない間にランプが話していたことか?何かおかしな事は言ってなかったかと思い返してみる。


あっ!!記憶力が上がる魔法?のことか!?


確か、何の話をしてたんだって聞いてきた谷川に対して『秘密厳守』と言っていた気がする。
本当に記憶力が上がったかどうかは知らないけど、あれは俺にしか伝えられていない。

1つ目は記憶力が上がる魔法!
よっしゃ、すぐに思いついた!

この調子で2つ目、と思うがマジで何も思い当たるものがない。

「2つ目、2つ目……本当に2個もあんの?1つだけじゃなくて?」

『お前は知っているはずです』

「んー…」

2つ目を思いつかない状況で鍵を探すことも出来ず、唸ることしか出来ない。

適当なことを話した記憶しかない。ランプからの好感度が足りないとか?言うほど秘密だろうか。

「ランプ、ヒントくれよヒント」

『我からの好感度が足りません』

「またそれか」

…狙ったわけではないけど、谷川がいる前でこう言うってことは、これは秘密じゃないで確定だ。


「あーーくそ、秘密ってなんだよ…」

谷川は手持ち無沙汰で暇そうにしている。時折、早くしろよ、と声を掛けてくる。暇らしく俺のことをずっと見てる。それしかやることがないんだろうな。
緊張するからずっと見ないで欲しい。



この小屋について俺が知ってることなんて、谷川と同じくらいだろう。秘密って、マジで何なんだ。

1人が寝られるぐらいのソファーがあって、ガラクタばかり置いてあって、3日分くらいの保存食がある。木刀は2本。
トイレは備え付けられていて、それはマジでありがたかった。町のどこにもトイレが無くて、泣く泣く草むらでしていたから。
天井には畑がある。野菜が食べられるらしい。でも俺は全然外に出してもらえないから、見てない。


…人質にされていたとか?俺が出ようとすると、大抵鍵が掛かって外に出られなかったのは谷川は知らないはずだ。


よし、ちょっと怪しいがこれで2つ。鍵を探し始めようと思って机に向き合う。ガラクタが山ほどあるから、まずはここから探そう。

「ピリョロリリリリィィ」

『お前はアホですか。お前を人質に取っていたことは秘密ではありません』

「は!?…てかお前、何で俺の考え読めてんの」

『我は魔法のランプです。人の役に立ちます』

「答えになってねぇ…」


…どうやら違ったらしい。


じゃあマジで何なんだよ!?鍵を探そうと動かしていた手を止める。

「俺は答えに近いことを思い浮かべてる?それとも全く候補に上がってない?」

『我からの好感度が足りません』

「お前の願いを叶えるためだろ、融通利かせろよ」

『全く仕方がない異世界人ですね。思いついてるのに気が付かないとは』

「いちいち腹立つなあ!…でも考えたものの中に答えがあるんだな」


考えたことの中に答えがある。
これでだいぶ絞られたか?俺の頭はそんなに良くないせいで、答えには辿り着いてねえけど。

あー…と言いながら天井を見上げる。

何が秘密なんだ?早く願いとやらを終わらせたい。終わったら何になるんだって話だけど。

願いを叶えたら俺らの願いも叶えてくれるんだろうか。攻撃出来る魔法とか欲しいな。あと屋根があるのと無いのでは大違いだから、出来れば小屋に住み続けさせてほしい。野菜も手に入るらしいし。


……野菜。



畑のこと、ランプは谷川に言ってたっけ!?



──言ってない気がするぞ!?

それにそうだ、朝保存食を食べてる時に、他に食べ物が無いか聞いてた谷川に、畑があること伝えて無かった気がする!それどころじゃなかったせいで、ちゃんと聞いてなかったけど!

「ランプ、俺が今思いついてるのが2つ目か?」

『そうです。我はずっとヒントをあげていました。我は人の役に立つランプです』

「っしゃあ!!よし、鍵探すぞ!」
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