異世界を救え~善なる8人の転生者の中に1人の偽善者が紡ぐ世界~

ヒビキ タクト

文字の大きさ
38 / 50

第38話 力試し

しおりを挟む
皆が後一人のパーティメンバーを待っているとレイが一人の女性を連れてやってきた。

「彼女を仲間にしようと思うのだがどうだろうか?」

「レイ様、まずは自己紹介をしてもいいですか?」

「ああ、そうだな頼む」

「レイ様から仲間に誘われました、獣人族のシオンです。スキルは守護神と仲間の盾でございます」

シオンの自己紹介が終わるとアイリスが質問する。

「二つ聞いてもいいかしら?」

「ええ、もちろんです」

「獣人族なのに何故そんなに丁寧な言葉で話しているの?」

「私達の街では、獣人族は立場が低いことからこのような喋り方になりました。乱暴な口調で話すと殴られることもしばしば」

「そ、そう。人族がごめんなさいね。もう一つは貴女自身がこのパーティに加わりたいと思っているか聞いてもいいかしら?」

「現状、私を必要としてくれたのがこのパーティだけでした。他のパーティには壁役などいらないや獣人族など邪魔だと言われましたので、できれば加入させていただければ嬉しいです」

「そ、そう。私は賛成よ。」

「私も」

「うむ、そんな酷いやつらがいるのか。私も賛成だ」

次々に賛成し、皆の視線がリアムに集まる。

「シオンさんは犬族になるのですか?」

「私はリカオン族になります。」

確か日本ではリカオンって仲間思いな種族だったような…。

「このパーティでは最初はゆっくりとしかダンジョン攻略をしないけど、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」

その言葉を聞いた瞬間、リアムは頭を下げた。

「是非、このパーティに加わって下さい」

誰もがリアムの行動に驚き、目を見開いた。

「えっ、えっ」

リオンも驚き困っている。

「わ、私なんかでよければ、こちらこそお願いします」

リオンは目元に涙を溜めながら同じようにお辞儀をした。

「これでパーティが揃ったわね」

「ああ。パーティ名は何にする?」

何故か皆リアムの方を向く。

「俺?俺は何でもいいよ。一つルールを決めたいからチーム名は任せるよ」

「何よ、ルールって?」

「これからは仲間になるのだから丁寧語は禁止にしたいと思って」

「ああ、なるほど。いいと思うわ。マリアにシオンもそれでいい?」

「えっ、えっ、無理です。リアム様を呼び捨てにするなんて」

「私も、いきなりは難しいと思います」

「まあ、徐々にでいいわよ。ねぇ、リアム?」

「そうだね。それに戦闘中はできるだけ短い言葉の方が伝わりやすいから戦闘中だけでも頑張ってみてね」


こうしてついに6人が揃い、今後の話へと切り替わった。

「ちなみに班が決まれば一週間後にはパーティのみでダンジョンに入ることが出来るようになるけどどうするの?」

リアムは躊躇なく答える。

「まずは一週間の間に効率のよい狩場を過去のデータや書物から探してもらいたい。念のため神のダンジョンの初級の階層もね」

「神のダンジョンには行かないって言ってなかった?」

「当分は行く予定はないけど、学院のダンジョンより安全に経験値を稼げる場所があるならば話は変わってくるから念のためにね」

「了解」

「ちなみにリーダーはリアム様でいいのですよね?」

シオン以外の全員が頷く。

「てっきりレイ様がリーダーをするのかと思っていました。レイ様と一度剣を交わした時に驚くほどの強さと冷静さを兼ねそろえていましたので…」

「あ~、シオンはまだリアムの強さを知らないんだったね。丁度いいから皆の実力を共有するのもいいんじゃないか?」

「うむ。なら私は再度リアム殿と戦わせてもらおう」

リアムは戦うつもりはなかったのだが、リリーナにひきずられて訓練場へとやってきた。

リリーナはワクワクしながら木剣を構えた。

リアムはしぶしぶ木剣を構えた。

そして、試合が開始したと同時にリリーナの猛攻がリアムを襲う。

リアムはその斬撃を子供を相手するかのようにいなす。

あまりの戦闘内容にシオンは驚愕する。

「な、なんて速さなの」

あまりの出来事にリオンの素が垣間見える。

「ちっ、これでも強くなったと思っていたのにまったく通用しないのか」

「ねぇ、そろそろ終わりにしない?」

「まだだ、せめて一撃入れ…」

リリーナの言葉を遮るように周囲一面に色鮮やかな魔法の槍が宙に浮いていた。

「な、なに、いつの間に」

「こ、これはどうなっているの?」

「まさかこれ程までに次元が違うのか」

「ああ、やはり美しい」

「リアム、あんた何て魔法を使えるのよ」

それぞれが思い思いの言葉を綴る。

リアムが木剣を下すとアイリスが凄い勢いでリアムの元へ駆けつけた。

「な、なんで、4属性の魔法を一瞬で構築できるのよ」

「まあ、サクラのおかげかな」

「妖精がいるのは知ってるわよ。でも、属性の相性があるわよね?正反対の属性はどんなに頑張っても無詠唱はできないはずよ」

「それもサクラのおかげかな」

「意味が解らないわ。教えて、お願いだから教えて」

アイリスがここまで感情を露わにするのは初めてである。

「まあ、いいけど。サクラは桜属性なんだ。苦手な属性がないんだよ」

アイリスはガタガタと小刻みに震えている。

「何よそれ。ズルイ、ズルイ、ズルイ。チートじゃない」

「まあ、そうかも」

それからはアイリスの愚痴を聞きながら模擬戦は終わるのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件

☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。 しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった! 辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。 飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。 「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!? 元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...