最強スキルを考え異世界を謳歌する~傲慢な世界を食いちぎれ~

ヒビキ タクト

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第24話 奇跡

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さてさて、キーシュ達は生きているといいな。

前方の戦場を見ながら俺は急いで駆けつけた。

日も昇り、最低でも1日以上耐えていないといけない状況の中で未だに戦闘音が聞こえる。

戦場を見渡せばガーウィンが必死に耐えている状態だった。

さらに見渡すとキーシュと1人の女性が天を向いて諦めの境地に入っているように見える。

そこに一際でかい悪鬼の剣が振りかざそうとしていた。

ヤバイヤバイ、駆けつける時間もないか…。

「天より木霊する轟音よ、響けサンダーボルト」

一際でかい鬼に落雷が見事に命中して焼き倒れたが、未だに息をしているようだ。
その瞬間俺は剣に高温を使った後に衝撃波を放つ。

さらには、雷纏を使い鬼の元へ移動し滅多切りを行った。

スキルレベルが上がった現状で、ここまでスキルを乱用してやっと倒せたことに驚愕する。

おいおいマジか。こんな鬼がごろごろいたら流石に魔力がもたねぇぞ。


そんな中、キーシュと1人の女性が茫然としているのが分かる。

「キーシュ、茫然としてないで帰るぞ」

「ア、アカツキ、来てくれたのか?」

「見てわかるだろう。他の劣勢の場所に行くから早く逃げろよ」

「無理だ。村人達が逃げるまで戦うと言って、誰も戦いを止めないんだ」

「どなたかは知らないけど、キーシュの言う通りよ。私達は死ぬ覚悟はできてるわ」

「じゃあ、勝手に無駄死にすればいいんじゃないか」

「アカツキ、その言い草は流石の僕でもキレるよ」

「無駄死にですって、私達がどんな想いで戦ってるかも知らないくせに」

「ああ、知らないな。戦うことが全てと勘違いした者の想いなんて知るかよ」

「なんですって、頭に来た一発殴ってやる」

「その元気があるなら逃げるんだな。すでに村人達は悪鬼が追い付かない場所まで進んでるだろうからな」

「えっ、どう言うことよ。昨日まではまだ第3の村にも到着してないって聞いたわよ」

「逃げながら確認するんだな。お前らに構ってるほど暇じゃないんでな。他の者を助けないとどんどん人が死ぬぞ」

俺の言葉に正気になった二人は最後の力を振り絞って逃げる算段をしている。

俺は危ない場所にサンダーボルトを落としながら、体に雷を纏い尋常じゃないスピードで兵士達を助けて回る。

助けた者に村人達の逃げる算段がついたから、お前らも逃げろと言い放つ。
次第に戦場から人がいなくなり、俺に警戒している悪鬼と俺だけとなった。

「死にたいやつからかかってきな」

先程のでかい悪鬼が4塊だったのだろうか?現在は5塊より下の悪鬼しかいないようだ。

後で知ったことだが、運がいいことに3塊の悪鬼はアースホワイトの中心部の方に行ったそうだ。

以前の俺ならヤバかっただろうが、今の俺だから無難に倒せたのだろう。

さてさて魔力がいつまでもつかな?

俺の魔力が無くなり逃げるのが先か、悪鬼が絶望し逃げるのが先か、鬼VSアカツキの最終戦が繰り広げられた。



その光景を魔導馬車まで逃げる途中でアクアマリンが唖然とした表情で見ている。

その様子を見た兵士達が、1人、また1人と足を止め見入ってしまう。

「な、なんて光景だ」

「ほ、本当にあれは人か?」

「悪鬼が赤子のように倒されていく」

「お、おい、ついに悪鬼が逃げだし始めたぞ」

「俺達は助かったのか?」

「ああ。逃げる気力も体力もなかったから助かった」

「あのお方は誰だ?」

「もしや神の使徒様?」


そんな声を余所に俺は逃げる悪鬼に追い打ちをかけて行く。

残り魔力もあと僅か。

悪鬼には遠くまで逃げてもらわなくては、今度は俺が逃げる羽目になる。

さらには一匹でも多く仕留めることで、母様のような悲劇を減らせるように…。

余裕な表情を余所に俺の心の中では魔力量も含めてギリギリの戦いに冷や汗を流していた。

悪鬼が後ろを振り向くこともなく逃げる姿を見てようやく俺は腰を下ろした。

運がいいことに初めに全力のライトニングボルトなどで倒した悪鬼がこちら方面のボスだったことで今の状況になりえたのだ。

本当ならば悪鬼が躊躇した瞬間に俺も一緒に逃げる算段だったのだが、今回は運が味方となり一安心である。

流石にスキルレベルが40を超えると、昔A級パーティが必死に倒した悪鬼さえも凌駕できたことで今の実力を実感することができた。

また今回の悪鬼討伐によりスキルレベルも上がるだろう。

俺はそんなことを考えながら微笑んでいると皆がやってきた。

「アカツキー」

「おう?あら、みんな逃げたはずじゃ?」

「逃げる途中でアカツキが悪鬼を翻弄しているのを見て足を止めたわ」

「そうか。まあ、今回は運がよかっただけだ、それじゃあ一旦村に戻ろう」

こうして俺達は疲れた体に鞭を打って、なんとか村まで戻ってきた。

「本当に誰も村人達がいないのね」

ユイと言う女性が話しかけてきた。

「俺が嘘を言ったと思っていたのか?」

「私達を逃がすための嘘の可能性も考えていたわ」

「俺は死にたくないからな。逃げる算段がついたから助けに行っただけだ」

「本当に有り難う。それに酷いことを言ってごめんなさい」

「お前達を助けたのはキーシュ達だ。俺は美味しいとことを持っていっただけだ」

「仮にそれが本当だとしても私達が助けられたことに変わりはないわ」

「そうか。ならお礼の言葉だけ受け取っておくよ」

こうして皆で一晩休んでからゆっくりと歩き、後ろから悪鬼がこないことを確かめながら国境まで俺達は戻ったのである。

俺達が戻ると国境の兵達の歓声と共に出迎えられた。

第1王女もキーシュの元へ駆けより労いの言葉をかけていた。
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