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再会、そして・・・
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大きなカラスが、バサバサと羽音を立てて頭上を飛んでいく。
かと思ったら、コウモリが顔のすぐ横を通り過ぎていく。
そして真っ暗な森を抜けたと思ったら、目の前に突然大きな城が姿を現した。
―――何なんだここは・・・・
「つきましたよ」
サクの声に、俺は驚いて目の前の城を見上げた。
「は?着いたって、ここ、お城みたいだけど・・・・」
俺の言葉に、サクは表情を変えずに肩をすくめた。
「みたい、じゃなくて城ですよ。ここが、光輝さんと朱里くんの住んでいるところです」
「こ・・・・ここが?てか・・・・ここ、どこだよ?俺らのマンションは?さっきまでいたよな?」
わけがわからない。
目の前に見える大きな西洋風の城と、後ろには真っ暗な森。
響くのはカラスの鳴き声。
―――こんなところ、俺は知らない・・・・
「―――その説明は、あとで。めんどくさいんで」
「は?」
「とにかく、朱里くんのところへ行きますよ」
「あ・・・・」
そうだ。
俺は、朱里に会いたくて・・・・
サクに手を引かれて、ここまで来たんだ。
サクが先に立ち、城門の前に立つ。
と、ギイーーーーという音とともに、重そうな鉄の扉が左右へと開いた。
砂利道を進むと、甲冑を身に着けた門番らしき男が2人、扉の前に立っているのが見えた。
男たちはサクの姿を見るとこれまた重そうな扉を両側から開き、一歩後ずさって持っていた鉄の槍で石畳の床を二度、叩いた。
それが合図になったかのように、城の中にあった蠟燭に火が灯った。
広間のようなその空間を囲むように蝋燭がともされ、中央には幅の広い階段があった。
中は静まり返っていて、人の気配は感じられなかった。
―――本当にここに朱里が・・・・?
「―――お連れしました」
広間の中央まで俺を連れて進んだサクが、突然そう言った。
と、階段の奥の扉が静かに開き―――
「本当に連れてきたのか」
そう言って現れたのは、黒いマントを身にまとった光輝くんだった―――。
「あの・・・・朱里は・・・・」
光輝くんに通されたのは、中世期の映画に出てくるような、長いテーブルのあるだだっ広い部屋。
テーブルの上には蝋燭が並び、そのテーブルの一番端―――王座のような椅子に光輝くんは座っていた。
そして俺は、その反対側の端っこ。
俺と光輝くんとの距離は軽く5メートルくらいはあった。
ここへ通されてすぐ、サクは部屋を出て行ってしまった。
光輝くんは凝ったデザインのワイングラスを持ち、そこに入れられた飲み物をゆっくり飲んでいた。
「すぐ来る」
一切俺の方を見ず、そう答える光輝くん。
こないだ会った時と確かに同じ人物なのに、まるで違うように見える。
あの時もその鋭い視線に怖いと思ったけれど、今日はもっと―――纏う雰囲気が、まるで違かった。
人を寄せ付けないそのオーラに圧倒され、俺はそれ以上何も聞くことができなかった。
「その前に、あんたに話しておきたいことが―――」
光輝くんがそこまで言った時だった。
ぱたぱたと走ってくる足音が聞こえてきたと思うと、突然部屋の扉が開き―――
「史弥!!」
部屋に飛び込んできた朱里が、満面の笑みで俺に駆け寄り、思い切り抱きついたのだった・・・・。
「しゅ、朱里!?」
「史弥!史弥!会いたかった!やっぱり来てくれた!!」
「お、俺も会いたかったけど・・・・あの、朱里?その羽根は・・・・・?」
ぎゅうぎゅうと俺に抱きつく朱里の体を支える俺の目に飛び込んできたのは、朱里の背中に生えた、黒く大きな羽根だった。
「朱里くん・・・・羽根を見せるのは、垣田さんに事情を話してからって言ったのに・・・・」
朱里の後ろから姿を現したサクが、そう言ってため息をついた。
「あ、そっか、ごめん」
朱里がそう言うと。
しゅるる、と音を立てて黒い羽根が背中に吸い込まれていった。
「え・・・・き、消えた・・・?」
「―――座れ、朱里」
光輝くんの低い声に、朱里はようやく俺から離れると、俺の隣に椅子を引っ張ってきて座った。
「そこに座るのかよ」
呆れたような光輝くんの声に、朱里はぷうっと頬を膨らませた。
「だって、やっと会えたんだよ。こおきくんが会っちゃダメって言うからずっと我慢してたんだよ?」
「当たり前だろ?お前は本来あの世界のものじゃないんだから」
「もう、試験終わったんだからいいじゃん」
口をとがらせてそう言う朱里。
―――試験?
「試験って?」
「ん?ああ、進級試験だよ」
にっこりと笑う朱里。
俺はさらに首を傾げる。
「進級って・・・・なんの?
「悪魔になるための」
「・・・・・・・・・・・・・はい?」
思いっきり呆けてしまった俺に、サクが再び深いため息をついた。
「だから、朱里くん。いきなりそんなこと言ったって、垣田さんわかんないから」
「え、こおきくんまだ説明してくれてないの?」
きょとんとした顔で光輝くんを見る朱里。
今度は光輝くんがため息をつく。
「これからするところだったんだよ。だから、朱里を連れてくるのは俺が呼ぶまで待てって言ったのに」
そう言いながら光輝くんがサクを睨みつけると、サクが眉をしかめた。
「そのつもりだったんですよ、俺だって。でも朱里くんが―――」
「だって史弥が来てるって言うから。早く会いたかったんだよ、史弥に」
口をとがらせてそう言う朱里はすごくかわいい。
久しぶりに会う朱里はちょっと痩せたような気がした。
相変わらず透けるように白い肌、赤い唇は色っぽく―――
じゃ、なくて。
「あの・・・・教えてください。そもそも、ここはどこなんですか?」
俺の言葉に、光輝くんは持っていたグラスを置き、俺をまっすぐに見た。
「ここは・・・・悪魔界だ」
「悪魔・・・・界・・・・?」
悪魔って
あの悪魔・・・・?
背中に黒い羽根が生えてて、矢の先のようなしっぽが生えてて、触角みたいな角がある・・・・・あれ?
そんなこと言われたって、信じられるわけがない。
でも。
さっき、朱里の背中にあったあれは・・・・・
「・・・・朱里の羽根を見たのは、かえってよかったかもな。話が終わってから見せようと思ってたけど―――ケイ」
「はい」
サクが返事をすると、すっと一歩前に出た。
そして。
バサッという音とともに、サクの背中に黒い羽根が現れた。
声も出せずにその光景にくぎ付けになる俺。
そんな俺の真正面にいた光輝くんがまた、おもむろに立ち上がる。
そして、その背中に。
ひときわ大きく、立派な黒い羽根が、姿を現したのだった・・・・・。
かと思ったら、コウモリが顔のすぐ横を通り過ぎていく。
そして真っ暗な森を抜けたと思ったら、目の前に突然大きな城が姿を現した。
―――何なんだここは・・・・
「つきましたよ」
サクの声に、俺は驚いて目の前の城を見上げた。
「は?着いたって、ここ、お城みたいだけど・・・・」
俺の言葉に、サクは表情を変えずに肩をすくめた。
「みたい、じゃなくて城ですよ。ここが、光輝さんと朱里くんの住んでいるところです」
「こ・・・・ここが?てか・・・・ここ、どこだよ?俺らのマンションは?さっきまでいたよな?」
わけがわからない。
目の前に見える大きな西洋風の城と、後ろには真っ暗な森。
響くのはカラスの鳴き声。
―――こんなところ、俺は知らない・・・・
「―――その説明は、あとで。めんどくさいんで」
「は?」
「とにかく、朱里くんのところへ行きますよ」
「あ・・・・」
そうだ。
俺は、朱里に会いたくて・・・・
サクに手を引かれて、ここまで来たんだ。
サクが先に立ち、城門の前に立つ。
と、ギイーーーーという音とともに、重そうな鉄の扉が左右へと開いた。
砂利道を進むと、甲冑を身に着けた門番らしき男が2人、扉の前に立っているのが見えた。
男たちはサクの姿を見るとこれまた重そうな扉を両側から開き、一歩後ずさって持っていた鉄の槍で石畳の床を二度、叩いた。
それが合図になったかのように、城の中にあった蠟燭に火が灯った。
広間のようなその空間を囲むように蝋燭がともされ、中央には幅の広い階段があった。
中は静まり返っていて、人の気配は感じられなかった。
―――本当にここに朱里が・・・・?
「―――お連れしました」
広間の中央まで俺を連れて進んだサクが、突然そう言った。
と、階段の奥の扉が静かに開き―――
「本当に連れてきたのか」
そう言って現れたのは、黒いマントを身にまとった光輝くんだった―――。
「あの・・・・朱里は・・・・」
光輝くんに通されたのは、中世期の映画に出てくるような、長いテーブルのあるだだっ広い部屋。
テーブルの上には蝋燭が並び、そのテーブルの一番端―――王座のような椅子に光輝くんは座っていた。
そして俺は、その反対側の端っこ。
俺と光輝くんとの距離は軽く5メートルくらいはあった。
ここへ通されてすぐ、サクは部屋を出て行ってしまった。
光輝くんは凝ったデザインのワイングラスを持ち、そこに入れられた飲み物をゆっくり飲んでいた。
「すぐ来る」
一切俺の方を見ず、そう答える光輝くん。
こないだ会った時と確かに同じ人物なのに、まるで違うように見える。
あの時もその鋭い視線に怖いと思ったけれど、今日はもっと―――纏う雰囲気が、まるで違かった。
人を寄せ付けないそのオーラに圧倒され、俺はそれ以上何も聞くことができなかった。
「その前に、あんたに話しておきたいことが―――」
光輝くんがそこまで言った時だった。
ぱたぱたと走ってくる足音が聞こえてきたと思うと、突然部屋の扉が開き―――
「史弥!!」
部屋に飛び込んできた朱里が、満面の笑みで俺に駆け寄り、思い切り抱きついたのだった・・・・。
「しゅ、朱里!?」
「史弥!史弥!会いたかった!やっぱり来てくれた!!」
「お、俺も会いたかったけど・・・・あの、朱里?その羽根は・・・・・?」
ぎゅうぎゅうと俺に抱きつく朱里の体を支える俺の目に飛び込んできたのは、朱里の背中に生えた、黒く大きな羽根だった。
「朱里くん・・・・羽根を見せるのは、垣田さんに事情を話してからって言ったのに・・・・」
朱里の後ろから姿を現したサクが、そう言ってため息をついた。
「あ、そっか、ごめん」
朱里がそう言うと。
しゅるる、と音を立てて黒い羽根が背中に吸い込まれていった。
「え・・・・き、消えた・・・?」
「―――座れ、朱里」
光輝くんの低い声に、朱里はようやく俺から離れると、俺の隣に椅子を引っ張ってきて座った。
「そこに座るのかよ」
呆れたような光輝くんの声に、朱里はぷうっと頬を膨らませた。
「だって、やっと会えたんだよ。こおきくんが会っちゃダメって言うからずっと我慢してたんだよ?」
「当たり前だろ?お前は本来あの世界のものじゃないんだから」
「もう、試験終わったんだからいいじゃん」
口をとがらせてそう言う朱里。
―――試験?
「試験って?」
「ん?ああ、進級試験だよ」
にっこりと笑う朱里。
俺はさらに首を傾げる。
「進級って・・・・なんの?
「悪魔になるための」
「・・・・・・・・・・・・・はい?」
思いっきり呆けてしまった俺に、サクが再び深いため息をついた。
「だから、朱里くん。いきなりそんなこと言ったって、垣田さんわかんないから」
「え、こおきくんまだ説明してくれてないの?」
きょとんとした顔で光輝くんを見る朱里。
今度は光輝くんがため息をつく。
「これからするところだったんだよ。だから、朱里を連れてくるのは俺が呼ぶまで待てって言ったのに」
そう言いながら光輝くんがサクを睨みつけると、サクが眉をしかめた。
「そのつもりだったんですよ、俺だって。でも朱里くんが―――」
「だって史弥が来てるって言うから。早く会いたかったんだよ、史弥に」
口をとがらせてそう言う朱里はすごくかわいい。
久しぶりに会う朱里はちょっと痩せたような気がした。
相変わらず透けるように白い肌、赤い唇は色っぽく―――
じゃ、なくて。
「あの・・・・教えてください。そもそも、ここはどこなんですか?」
俺の言葉に、光輝くんは持っていたグラスを置き、俺をまっすぐに見た。
「ここは・・・・悪魔界だ」
「悪魔・・・・界・・・・?」
悪魔って
あの悪魔・・・・?
背中に黒い羽根が生えてて、矢の先のようなしっぽが生えてて、触角みたいな角がある・・・・・あれ?
そんなこと言われたって、信じられるわけがない。
でも。
さっき、朱里の背中にあったあれは・・・・・
「・・・・朱里の羽根を見たのは、かえってよかったかもな。話が終わってから見せようと思ってたけど―――ケイ」
「はい」
サクが返事をすると、すっと一歩前に出た。
そして。
バサッという音とともに、サクの背中に黒い羽根が現れた。
声も出せずにその光景にくぎ付けになる俺。
そんな俺の真正面にいた光輝くんがまた、おもむろに立ち上がる。
そして、その背中に。
ひときわ大きく、立派な黒い羽根が、姿を現したのだった・・・・・。
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