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第29話
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慧は以前に石原と会っていた。
だがその時に里奈が石原のことを何と言っていたのかはわからない。
たまたま立ち寄ったコンビニの店員のことなど普通は覚えていないだろう。
里奈が驚いていたことに気付いたとしても、店員のことまでは気に留めなかったかもしれない。
それでも何故か、あいつなら石原と里奈の関係に気付いたのではないかという気がしていた。
「―――三山から連絡です。里奈も石原の行き先については心当たりがないと」
片岡が携帯を見ながら言った。
「石原が高部の前に現れたことに驚いていたようです。―――怒っているようにも見えたと」
「まあ、里奈は高部に惚れてるわけだからな。ストーカーが自分の好きな男を襲ったと聞けば怒るのもしょうがない」
「ええ。事件の日に聞いた声について、石原の声かどうかはやはりわからないと言っているようですが、SNSでの嫌がらせを石原の仕業と考えるとやりかねないかもしれないと思っているようです」
「・・・・しかし、聞いたことのある声なら扉が閉まっていたとしてもわかるんじゃないか?」
「確かに。ってことはやっぱり別人か、それとも里奈の嘘か・・・・」
「里奈は今日退院か?」
「そのようです。今弁護士が来て退院手続きをしているようですね。退院後はまっすぐホテルに向かうようです。―――あ、里奈から石原と行ったプラネタリウムの場所を聞き出したみたいですよ。行ってみます?」
「そうだな。もう一件の石原のバイト先に行く前にそっちに行くか」
石原が直近でアルバイトをしていたのはコンビニと居酒屋だった。
居酒屋の方は営業が5時からなのでまだ時間があった。
「―――そういえば高部との同居はどうですか?」
車を運転しながら片岡に聞かれ、思わずドキッとする。
もちろんそんな様子は表に出さないが。
「どうって、別にどうもしねえよ。俺は夜しか会わねえし」
「でも昨日は高部の店に行ったんですよね?」
「ああ」
「楽しかったですか?」
「あのな・・・・俺はただの監視だよ。あいつはずっと客相手にテーブルについてるし」
「そうですか。高部の女装姿ってきれいですよね~、見ててドキドキしません?」
「馬鹿なこと言うな」
そう言って携帯のメールをチェックするふりをして視線をそらす。
片岡みたいに無邪気にあいつを『きれい』だとか言えたらいいのかもしれない。
でも俺は妻子がいて40近くで刑事で……
そんな俺が高部慧に対してドキドキしているとか、冗談でも言えなかった。
というか、冗談にできないのだ・・・・。
そんなことを考え、携帯をいじっていると、ちょうど慧からメールが来た。
『今どこにいるの?』
―――どこって・・・・まあ、正直に答えても問題ないか。
『車で移動中。これから里奈さんと石原が行っていたらしいプラネタリウムに行く』
『俺も行っていい?』
「は?」
思わず声が出てしまい、片岡が俺を見る。
「どうかしました?」
「いや・・・・」
『なんで』
と慧に返信すると、
『暇だから。邪魔しないからいいでしょ?』
と来た。
「暇だからって・・・・」
「沢井さん?何事っすか?」
「あ―・・・・ちょっと俺の家に寄ってくれるか」
「え?いいですけど・・・・」
石原の件で慧に聞きたいこともあったし、ちょうどいいかもしれない。
そう思っただけだ。
別に、慧に頼まれたからとかいうわけじゃない。
決して・・・・
だがその時に里奈が石原のことを何と言っていたのかはわからない。
たまたま立ち寄ったコンビニの店員のことなど普通は覚えていないだろう。
里奈が驚いていたことに気付いたとしても、店員のことまでは気に留めなかったかもしれない。
それでも何故か、あいつなら石原と里奈の関係に気付いたのではないかという気がしていた。
「―――三山から連絡です。里奈も石原の行き先については心当たりがないと」
片岡が携帯を見ながら言った。
「石原が高部の前に現れたことに驚いていたようです。―――怒っているようにも見えたと」
「まあ、里奈は高部に惚れてるわけだからな。ストーカーが自分の好きな男を襲ったと聞けば怒るのもしょうがない」
「ええ。事件の日に聞いた声について、石原の声かどうかはやはりわからないと言っているようですが、SNSでの嫌がらせを石原の仕業と考えるとやりかねないかもしれないと思っているようです」
「・・・・しかし、聞いたことのある声なら扉が閉まっていたとしてもわかるんじゃないか?」
「確かに。ってことはやっぱり別人か、それとも里奈の嘘か・・・・」
「里奈は今日退院か?」
「そのようです。今弁護士が来て退院手続きをしているようですね。退院後はまっすぐホテルに向かうようです。―――あ、里奈から石原と行ったプラネタリウムの場所を聞き出したみたいですよ。行ってみます?」
「そうだな。もう一件の石原のバイト先に行く前にそっちに行くか」
石原が直近でアルバイトをしていたのはコンビニと居酒屋だった。
居酒屋の方は営業が5時からなのでまだ時間があった。
「―――そういえば高部との同居はどうですか?」
車を運転しながら片岡に聞かれ、思わずドキッとする。
もちろんそんな様子は表に出さないが。
「どうって、別にどうもしねえよ。俺は夜しか会わねえし」
「でも昨日は高部の店に行ったんですよね?」
「ああ」
「楽しかったですか?」
「あのな・・・・俺はただの監視だよ。あいつはずっと客相手にテーブルについてるし」
「そうですか。高部の女装姿ってきれいですよね~、見ててドキドキしません?」
「馬鹿なこと言うな」
そう言って携帯のメールをチェックするふりをして視線をそらす。
片岡みたいに無邪気にあいつを『きれい』だとか言えたらいいのかもしれない。
でも俺は妻子がいて40近くで刑事で……
そんな俺が高部慧に対してドキドキしているとか、冗談でも言えなかった。
というか、冗談にできないのだ・・・・。
そんなことを考え、携帯をいじっていると、ちょうど慧からメールが来た。
『今どこにいるの?』
―――どこって・・・・まあ、正直に答えても問題ないか。
『車で移動中。これから里奈さんと石原が行っていたらしいプラネタリウムに行く』
『俺も行っていい?』
「は?」
思わず声が出てしまい、片岡が俺を見る。
「どうかしました?」
「いや・・・・」
『なんで』
と慧に返信すると、
『暇だから。邪魔しないからいいでしょ?』
と来た。
「暇だからって・・・・」
「沢井さん?何事っすか?」
「あ―・・・・ちょっと俺の家に寄ってくれるか」
「え?いいですけど・・・・」
石原の件で慧に聞きたいこともあったし、ちょうどいいかもしれない。
そう思っただけだ。
別に、慧に頼まれたからとかいうわけじゃない。
決して・・・・
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