美しすぎる彼には毒がある【完結】

まつも☆きらら

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第32話

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俺と片岡が車に戻ると、慧が車にもたれかかってバーのついたアイスを食べていた。

「お帰り。はい、2人の分。今日暑いから早く食べないと溶けちゃうよ」

俺は慧からコンビニの袋に入ったアイスを受け取り、チョコミントアイスを片岡に渡した。

車の傍らで男が3人アイスを食べているという、はたから見たらちょっと変な状況だ。

しかし今日は朝から気温が30度もあり、少し溶けかかったアイスがとてもおいしかった。

「で、石原さんのこと何か分かったの?」

「うん、いや……」

まだ容疑の晴れていない慧に、ぺらぺらと捜査状況を話すわけにも―――

「事件の日に来てたらしいんだ」

「おい、片岡!」

全くこいつはぺらぺらと―――

「へえ、そうなの?」

「……お前、あの日は誰も見てないんだよな?」

仕方なく俺は慧にそう質問した。

「うん」

「石原はあの日、朝の10時半にはここにいたらしい。橋本家からここまで、電車を使っても1時間もかからない。もし石原が犯人だとしても時間的には犯行が可能だしアリバイということにはならないが―――」

俺の言葉に慧はうなずいた。

「人を殺して放火までした後に、のんきにプラネタリウムを見るかってことに疑問を感じてるんだ、和樹さんは」

「―――そういうことだ」

もはやこいつに隠し事は無駄なのかもしれないという気がしてきた。

「それはそうかもね。けど、そもそも殺人事件の犯人なんて普通の精神状態じゃないんだろうし、ありえなくはないんじゃない?それに―――犯人じゃないなら姿を消す必要もないわけだし」

そうなのだ。

しかも石原は事件の前にアルバイトをやめてしまっている。

まるで警察に追われることが分かっていたような行動だ。

それはもう、やましいことがあるとしか思えないのだ。

これで目撃情報が出れば石原に対する容疑は確実となる。

あとは、動機さえはっきりすれば―――


その時、慧の携帯が鳴りだした。

「―――もしもし―――今刑事さんたちと一緒だよ。―――わかった。じゃあこれから行くよ。―――うん、了解」

電話を切り、俺を見る。

「里奈ちゃんから。ホテルにチェックインしたんだけどやることなくて退屈だから来てほしいって。悪いんだけど送ってくれる?」

「わかった。じゃあ宮下くんにそのホテルに行くよう連絡するから、勝手に外に出たりするなよ?」

宮下というのは慧の監視役の警官だ。

今は俺の家で待機してもらっていた。

俺の言葉に、慧がくすくすと笑う。

「はーい。信用ないなあ、俺」

「そういうわけじゃないけどな。事件が解決するまではしょうがないと思ってくれ」

「わかってるよ。別に嫌じゃないから大丈夫。宮下さんもイケメンだもんね」

そう言ってちらりと俺を見て笑う。

その何か含んだような笑みにドキッとする。

また俺の胸の奥まで見透かされているようで、落ち着かなかった。



慧を里奈のいるホテルに送った後署に戻り石原のことを報告すると、課長は顎を撫で、顔をしかめた。

「なるほど・・・・。時間的には犯行は可能、という事か。しかし犯行後、もっと遠くに逃げることもできたのになぜプラネタリウムを見たり高部のところに来たりするんだ?」

「ですよね・・・・」

「その石原と高部の共犯ということは考えられないか?もしそうなら石原が橋本宅に火をつけた後誰にも見られずに姿を消した謎も解けるかもしれないぞ」

「確かにそうですね。高部に会いに来たのも共犯という事ならわかります。もしかしたら自分が疑われていることで高部を責めてたのかも」

片岡の言葉に課長もうなずいた。

「里奈だけ生かしておいたのも、高部が橋本家の財産を狙っていて里奈と結婚しようともくろんでいたなら納得できるしな」

―――確かにそうだ。しかし……

俺も最初から慧を疑っていた。

それなのに、いざそう言われてしまうとなぜか胸がもやもやとして言葉が出てこなかった。

「沢井。お前は1年前の大学の講師が殺された事件でも高部を疑っていたな」

「ええ、まあ」

「ふむ……。どうだ、その事件をもう一度洗い直してみないか」

「え……しかし、あの事件はもう……」

「作間祐樹の自殺で事件は解決したと思っていたが、もしあの事件の真犯人が高部で今回の事件の黒幕も高部だとしたら、2つの事件は繋がっている可能性もある」

「確かに……」

「1年前、高部慧について詳しく調べる前に作間が自殺してしまったからまだわかっていないこともあるはずだ。もう一度お前たち2人で高部慧のことを調べてくれ。生い立ちから今までのこともすべてだ」

「しかし、石原は―――」

「もちろん石原の捜索は続ける。そっちの方は川上と三山にやってもらう。どうせ里奈も高部も監視がついていて好きには動けないはずだからな。橋本家については高坂と戸村に調べてもらってるから大丈夫だろう」

「―――わかりました」

嫌な予感しかなかった。

最初から高部が怪しいと思っていた。

ようやくあいつのことを公式に調べることができるのだ。

ずっとそれを望んでいたのは俺だ。

なのに、俺の気持ちは重くなるばかりだった・・・・。
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