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第31話
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「それからお前に聞きたいことがあったんだ」
「なに?」
バックミラー越しに慧が俺を見た。
「半年くらい前に、石原がバイトしていたコンビニに里奈さんと2人で行ったこと覚えてるか?」
「半年前?そんな前のこと・・・・里奈ちゃんと行ったコンビニで石原さんがバイトしてたの?」
慧がいぶかしげに首を傾けた。
「そうだ。店員が覚えてたんだ。里奈さんは石原に気付いてお前の腕を引っ張ってすぐに店を出たって。その時のこと、覚えてないか?」
「腕を引っ張って……ああ、そういえばそんなことあったかな。時期までは覚えてないけど……里奈ちゃんに『どうかした?』って聞いたら『待たされるの嫌だから自販機で買おうと思って』って言ってたんだよね。ようやく順番回ってきたのにって思ったのは覚えてるよ。その時の店員の顔なんて覚えてなかったけど……それが石原さんだったってこと?」
「ああ。じゃあ、お前は石原を覚えてないんだな?」
「うん」
―――じゃあ、石原と会ったとは認識してなかったという事か・・・・。
目的地のプラネタリウムにつき、俺たちは車を降りた。
「―――雄二さんも星が好きだったんだろ?お前は彼とここに来たことないのか?」
俺の言葉に慧は首を振った。
「ないよ。誘われたこともないし」
それはなんだか意外な気がした。
ここは都内では割と有名なプラネタリウムらしかった。
星が好きだという雄二なら当然知っていたのではという気がするし、雄二が石原と仲が良かったのならなおさら知らない方が不自然だ。
「中で従業員に話を聞いてこよう。―――おい、どこに行くんだ?」
慧がプラネタリウムとは逆の方へ歩き出した。
「暑いから、アイスでも食べようかと思って。あそこにコンビニあるから。あ、俺のことは気にしないでいいよ」
「そういうわけには―――」
「逃げたりしないってば。2人にもアイス買ってこようか?」
「あ、じゃあ俺はチョコミント―――」
片岡が嬉しそうに言う。
「おい」
俺がたしなめると、片岡は慌てて口を押さえる。
「ふふ、いいじゃん。チョコミントね、了解。和樹さんは?」
「俺は―――」
「え、和樹さん?」
片岡が驚いて俺を見る。
―――しまった。
俺がなんて言い訳しようかと思っていると、慧は特に慌てもせずに片岡を見た。
「和樹さんの家にいて、『刑事さん』とか『沢井さん』って呼ぶのもおかしいでしょ?だから名前で呼んでるの。ごめん、片岡さんの前ではちゃんと沢井さんて呼ぼうと思ってたのについ・・・・」
そう言ってぺろりと舌を出す。
「はあ・・・・そうなんすね」
なぜか片岡の方が気まずそうに頬を染めたりしていた。
「―――俺はバニラな。片岡、行くぞ」
俺は片岡を促し、先に立って歩きだした。
別に慌てることもないのに、なんだか片岡の視線を受け止めるのが怖いような気がした。
「いいっすねえ、名前で呼んでもらえるのって」
「おまえな・・・・感心するとこそこかよ」
「いやだって、俺も高部にだったら『達也さん』とか呼んでもらいたいですもん」
「下らねえこと言ってんなよ。―――すいません、ちょっと伺いたいんですが」
俺は受付にいた女性に声をかけた。
「この男性がよくここに来ていたと思うんですが、見たことはありますか?」
タブレットの石原の写真を見せると、受付の女性はすぐにうなずいた。
「はい、よくいらしてますよ」
「最近だといつ来たか覚えてますか?」
「ええ、こないだの日曜日です」
その答えに俺たちは驚いた。
「日曜日?それは今週のことですか?」
「ええ。いつものように一人でいらしてましたよ」
日曜日と言ったら事件のあった日だ。
「それは何時ごろですか?」
「午前10時30分の回です。こちらの方はいつも10時30分の回なんですよ。朝一でプラネタリウムを見てからアルバイトに行くのがルーティンだと仰ってましたよ。日曜日はだいたい毎週来てたと思います」
―――10時30分だって?
確か里奈の話では階下で男の声がしなくなったのが9時半ごろだと言っていた。
犯人が石原だとしたら、3人を殺して放火し、その後すぐにここに来てプラネタリウムを見たことになる。
そんなこと、あり得るだろうか……?
「なに?」
バックミラー越しに慧が俺を見た。
「半年くらい前に、石原がバイトしていたコンビニに里奈さんと2人で行ったこと覚えてるか?」
「半年前?そんな前のこと・・・・里奈ちゃんと行ったコンビニで石原さんがバイトしてたの?」
慧がいぶかしげに首を傾けた。
「そうだ。店員が覚えてたんだ。里奈さんは石原に気付いてお前の腕を引っ張ってすぐに店を出たって。その時のこと、覚えてないか?」
「腕を引っ張って……ああ、そういえばそんなことあったかな。時期までは覚えてないけど……里奈ちゃんに『どうかした?』って聞いたら『待たされるの嫌だから自販機で買おうと思って』って言ってたんだよね。ようやく順番回ってきたのにって思ったのは覚えてるよ。その時の店員の顔なんて覚えてなかったけど……それが石原さんだったってこと?」
「ああ。じゃあ、お前は石原を覚えてないんだな?」
「うん」
―――じゃあ、石原と会ったとは認識してなかったという事か・・・・。
目的地のプラネタリウムにつき、俺たちは車を降りた。
「―――雄二さんも星が好きだったんだろ?お前は彼とここに来たことないのか?」
俺の言葉に慧は首を振った。
「ないよ。誘われたこともないし」
それはなんだか意外な気がした。
ここは都内では割と有名なプラネタリウムらしかった。
星が好きだという雄二なら当然知っていたのではという気がするし、雄二が石原と仲が良かったのならなおさら知らない方が不自然だ。
「中で従業員に話を聞いてこよう。―――おい、どこに行くんだ?」
慧がプラネタリウムとは逆の方へ歩き出した。
「暑いから、アイスでも食べようかと思って。あそこにコンビニあるから。あ、俺のことは気にしないでいいよ」
「そういうわけには―――」
「逃げたりしないってば。2人にもアイス買ってこようか?」
「あ、じゃあ俺はチョコミント―――」
片岡が嬉しそうに言う。
「おい」
俺がたしなめると、片岡は慌てて口を押さえる。
「ふふ、いいじゃん。チョコミントね、了解。和樹さんは?」
「俺は―――」
「え、和樹さん?」
片岡が驚いて俺を見る。
―――しまった。
俺がなんて言い訳しようかと思っていると、慧は特に慌てもせずに片岡を見た。
「和樹さんの家にいて、『刑事さん』とか『沢井さん』って呼ぶのもおかしいでしょ?だから名前で呼んでるの。ごめん、片岡さんの前ではちゃんと沢井さんて呼ぼうと思ってたのについ・・・・」
そう言ってぺろりと舌を出す。
「はあ・・・・そうなんすね」
なぜか片岡の方が気まずそうに頬を染めたりしていた。
「―――俺はバニラな。片岡、行くぞ」
俺は片岡を促し、先に立って歩きだした。
別に慌てることもないのに、なんだか片岡の視線を受け止めるのが怖いような気がした。
「いいっすねえ、名前で呼んでもらえるのって」
「おまえな・・・・感心するとこそこかよ」
「いやだって、俺も高部にだったら『達也さん』とか呼んでもらいたいですもん」
「下らねえこと言ってんなよ。―――すいません、ちょっと伺いたいんですが」
俺は受付にいた女性に声をかけた。
「この男性がよくここに来ていたと思うんですが、見たことはありますか?」
タブレットの石原の写真を見せると、受付の女性はすぐにうなずいた。
「はい、よくいらしてますよ」
「最近だといつ来たか覚えてますか?」
「ええ、こないだの日曜日です」
その答えに俺たちは驚いた。
「日曜日?それは今週のことですか?」
「ええ。いつものように一人でいらしてましたよ」
日曜日と言ったら事件のあった日だ。
「それは何時ごろですか?」
「午前10時30分の回です。こちらの方はいつも10時30分の回なんですよ。朝一でプラネタリウムを見てからアルバイトに行くのがルーティンだと仰ってましたよ。日曜日はだいたい毎週来てたと思います」
―――10時30分だって?
確か里奈の話では階下で男の声がしなくなったのが9時半ごろだと言っていた。
犯人が石原だとしたら、3人を殺して放火し、その後すぐにここに来てプラネタリウムを見たことになる。
そんなこと、あり得るだろうか……?
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