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第50話(最終話)
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3人は、しばらく黙ってた。
それぞれが何か考えるように俺を見て―――。
最初に口を開いたのは、渉だった。
「・・・俺ね、ここへ来たのは悠太を諦めるって言うためだったんだ」
その言葉に、3人が驚いて渉を見る。
「諦める?」
龍也くんが言うと、渉は笑って頷いた。
「うん。これでも俺、悩んだんだよ。悠太が熱出して階段落ちたりしてさ・・・。人生で一番怖い思いした。悠太に何かあったらどうしようって」
「人生で一番ですか」
イチの言葉に、渉は大きくうなずいた。
「そうだよ!自分の大切な人に何かあったらなんて、今まで考えたこともなかった。そんでそれが自分のせいで・・・・自分がその原因を作ったんだと思ったら、いてもたってもいられなかった」
渉の真剣な様子に、3人は黙って顔を見合わせた。
「だから・・・・諦めるって言いに来たんだ。もう、悠太を悩ませたくなくて。でも悠太は・・・・」
「俺は、そんなの嫌だった。確かに悩んでたけど。でも、それで渉が俺から離れて行ってしまうのはすごく嫌で・・・・本当に嫌で。傍にいてほしいと思ったんだ。でも、俺が渉を好きになったことで3人との関係が変わるのも嫌だった。ほんとに、これは俺のわがままだってわかってるけど・・・・でも、みんなと一緒にいたいんだ」
しばらく沈黙が続いた。
俺は膝の上で拳をぎゅっと握りしめ、誰かが何か言うのを待っていた。
怒られるかもしれない。
関係が壊れるかもしれない。
それは俺のせい。
でも、これが俺の本心だから・・・・。
「・・・・俺も、悠太との関係が壊れるのは嫌だよ」
そう言ったのは直くんだった。
「実は、ずっと後悔してたんだ。言った気持ちは本当だけど、でも今まで悠太とは兄弟みたいに付き合ってきたのに、それが変わってしまうって思ったら・・・・それは嫌だって思った。悠太が好きだけど・・・・でも、弟みたいに思ってるのも本当だから」
「直くん・・・・俺もそう思ってる。ずっとお兄ちゃんだと思ってた。俺、直くんが大好きなんだ」
「俺は、悠太を弟だなんて思ったことはないよ」
龍也くんがそう言った。
「でも・・・・同じ職場で、同僚として働いてるのにもし付き合うってなったら・・・・今までと同じ態度は取れないとは思ってた。そうなったらたぶん、俺はあの会社を辞めるか、本社への移動を申請しなきゃならないって」
「龍也くん、そんなの―――」
「うん、そんなことにはなりたくないって思った。正直、今のあの仕事が好きだし、あそこにいる社員たちが好きだし、あそこから離れたくない。だから・・・・俺はきっと悠太と付き合うって選択は出来ない」
「俺は、ちょっと違うけど」
イチが、ちょっと肩をすくめて言った。
「だけど、関係が壊れるのが嫌なのは一緒。俺の場合は・・・・おじさんとの関係もあるし」
そう言って、イチは渉を見た。
「おじさんのことは小さいころから知ってる。両親共働きで1人で留守番することが多かった俺のためによく家に遊びに来てくれたし、進路の相談は―――したことないけど、でも、不思議と一緒の空間にいるだけで安心する人ではあった」
淡々と話すイチを、渉はちょっと苦笑して見ていた。
「だからそのおじさんが好きになった悠太くんを見て俺も好きになって・・・・でも、おじさんは俺にとっても大事な人だよ。こんなことこの先二度と言わないと思うけど・・・・おじさんとの関係が変わるのは、俺も嫌だ。大事な2人が一緒にいてそれで幸せなら・・・・俺はそれで満足」
「イチ・・・・ありがとう。直くんも龍也くんも・・・・本当にありがとう」
涙が出そうだった。
でも、泣かない。
だって、4人がここにいる。
これからもずっとこの関係が変わることなく、5人でいられるんだ。
だから―――
「悠太」
渉が、俺の手を握った。
「俺が、絶対悠太を幸せにする。だから・・・・ずっと一緒にいような」
そう言って、渉は俺に顔を近づけ―――
「ちょっと待った!!」
龍也くんの声が、甘くなりかけた空気をぶち壊す。
「いやマジで、今それはやめて」
そう言ってイチも立ち上がる。
「俺らは店行って飲むことにするから、あとは2人で好きにやって」
直くんも頭をかきながら立ち上がった。
「んじゃ、俺らも後で合流するわ」
渉がそう言うと、3人はじろりと渉を睨んでからリビングを出て行った・・・・。
「ねえ渉」
「ん?」
「これからも、俺たち仲良くやっていけるよね?」
俺の言葉に、渉は俺を見てふっと笑った。
「うん。だいじょぶ」
「・・・・渉がそう言うなら、だいじょぶだね」
渉がそっと俺の髪を撫で、ゆっくりと顔を近づける。
2人の唇が重なり、そのまま渉は俺の体を床に横たえた。
「・・・・愛してる、悠太」
渉の優しい声に、俺はそっと目を閉じたのだった・・・・。
それぞれが何か考えるように俺を見て―――。
最初に口を開いたのは、渉だった。
「・・・俺ね、ここへ来たのは悠太を諦めるって言うためだったんだ」
その言葉に、3人が驚いて渉を見る。
「諦める?」
龍也くんが言うと、渉は笑って頷いた。
「うん。これでも俺、悩んだんだよ。悠太が熱出して階段落ちたりしてさ・・・。人生で一番怖い思いした。悠太に何かあったらどうしようって」
「人生で一番ですか」
イチの言葉に、渉は大きくうなずいた。
「そうだよ!自分の大切な人に何かあったらなんて、今まで考えたこともなかった。そんでそれが自分のせいで・・・・自分がその原因を作ったんだと思ったら、いてもたってもいられなかった」
渉の真剣な様子に、3人は黙って顔を見合わせた。
「だから・・・・諦めるって言いに来たんだ。もう、悠太を悩ませたくなくて。でも悠太は・・・・」
「俺は、そんなの嫌だった。確かに悩んでたけど。でも、それで渉が俺から離れて行ってしまうのはすごく嫌で・・・・本当に嫌で。傍にいてほしいと思ったんだ。でも、俺が渉を好きになったことで3人との関係が変わるのも嫌だった。ほんとに、これは俺のわがままだってわかってるけど・・・・でも、みんなと一緒にいたいんだ」
しばらく沈黙が続いた。
俺は膝の上で拳をぎゅっと握りしめ、誰かが何か言うのを待っていた。
怒られるかもしれない。
関係が壊れるかもしれない。
それは俺のせい。
でも、これが俺の本心だから・・・・。
「・・・・俺も、悠太との関係が壊れるのは嫌だよ」
そう言ったのは直くんだった。
「実は、ずっと後悔してたんだ。言った気持ちは本当だけど、でも今まで悠太とは兄弟みたいに付き合ってきたのに、それが変わってしまうって思ったら・・・・それは嫌だって思った。悠太が好きだけど・・・・でも、弟みたいに思ってるのも本当だから」
「直くん・・・・俺もそう思ってる。ずっとお兄ちゃんだと思ってた。俺、直くんが大好きなんだ」
「俺は、悠太を弟だなんて思ったことはないよ」
龍也くんがそう言った。
「でも・・・・同じ職場で、同僚として働いてるのにもし付き合うってなったら・・・・今までと同じ態度は取れないとは思ってた。そうなったらたぶん、俺はあの会社を辞めるか、本社への移動を申請しなきゃならないって」
「龍也くん、そんなの―――」
「うん、そんなことにはなりたくないって思った。正直、今のあの仕事が好きだし、あそこにいる社員たちが好きだし、あそこから離れたくない。だから・・・・俺はきっと悠太と付き合うって選択は出来ない」
「俺は、ちょっと違うけど」
イチが、ちょっと肩をすくめて言った。
「だけど、関係が壊れるのが嫌なのは一緒。俺の場合は・・・・おじさんとの関係もあるし」
そう言って、イチは渉を見た。
「おじさんのことは小さいころから知ってる。両親共働きで1人で留守番することが多かった俺のためによく家に遊びに来てくれたし、進路の相談は―――したことないけど、でも、不思議と一緒の空間にいるだけで安心する人ではあった」
淡々と話すイチを、渉はちょっと苦笑して見ていた。
「だからそのおじさんが好きになった悠太くんを見て俺も好きになって・・・・でも、おじさんは俺にとっても大事な人だよ。こんなことこの先二度と言わないと思うけど・・・・おじさんとの関係が変わるのは、俺も嫌だ。大事な2人が一緒にいてそれで幸せなら・・・・俺はそれで満足」
「イチ・・・・ありがとう。直くんも龍也くんも・・・・本当にありがとう」
涙が出そうだった。
でも、泣かない。
だって、4人がここにいる。
これからもずっとこの関係が変わることなく、5人でいられるんだ。
だから―――
「悠太」
渉が、俺の手を握った。
「俺が、絶対悠太を幸せにする。だから・・・・ずっと一緒にいような」
そう言って、渉は俺に顔を近づけ―――
「ちょっと待った!!」
龍也くんの声が、甘くなりかけた空気をぶち壊す。
「いやマジで、今それはやめて」
そう言ってイチも立ち上がる。
「俺らは店行って飲むことにするから、あとは2人で好きにやって」
直くんも頭をかきながら立ち上がった。
「んじゃ、俺らも後で合流するわ」
渉がそう言うと、3人はじろりと渉を睨んでからリビングを出て行った・・・・。
「ねえ渉」
「ん?」
「これからも、俺たち仲良くやっていけるよね?」
俺の言葉に、渉は俺を見てふっと笑った。
「うん。だいじょぶ」
「・・・・渉がそう言うなら、だいじょぶだね」
渉がそっと俺の髪を撫で、ゆっくりと顔を近づける。
2人の唇が重なり、そのまま渉は俺の体を床に横たえた。
「・・・・愛してる、悠太」
渉の優しい声に、俺はそっと目を閉じたのだった・・・・。
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