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第31話
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来週、舞台の初日があると折田が言っていた。
じゃあ瑞希はそれが終わってからアメリカに行くということなのか。
「あの、アメリカへは宮下くんも一緒に?」
俺が聞くと、宮下は笑って首を振った。
「いえ、俺にはそんな度胸ないですよ。英語もできないし・・・・もともと、ここの代表の折田さんのお芝居を観に行ったことがきっかけでこの劇団に入ったので、ずっとここにいるつもりです」
「そうなんだ」
「あいつはすごいです。英語もろくにできなかったのにアメリカに行って俳優になるって急に言い出したかと思ったら、猛勉強して英会話もできるようになって。こっそりバイトして貯めてたお金で何度も一人でアメリカに行ってエージェンシーに押しかけて―――とうとうオーディションにまでこぎつけてしまった。そういうところ、尊敬してるんです」
宮下はそう言って目を細め、眩しそうに瑞希を見た。
「結局俺は、そういうあいつが羨ましくて嫉妬してただけなんです。ただスター性があるだけじゃない。あいつはそれだけの努力もしてるし行動力もある。自分で運を引き寄せてるんですよね」
「どうだった?優斗くん」
帰り道、瑞希が聞いてきた。
「面白かったよ。お前、歌うまいんだな」
「ほんと?へへ、ありがと。一応ね、芝居も歌もずっとレッスンは受けてたから。ばばあの言いなりになるのは嫌だったけど、歌も芝居も好きなんだ」
そう言って笑う瑞希の瞳はキラキラ輝いていた。
「来週、初日なんだって?あの折田って人に観に来てって言われたんだけど・・・・」
「そうなんだ。よかったら海斗くんと一緒に観に来てよ。日本での最後の舞台になるかもしれないし」
「そうだな。海斗に聞いてみるよ」
「・・・・その日に、母親も呼ぶつもりなんだ」
「え?」
俺は驚いて瑞希の顔を見た。
「言ったでしょ?母親に認められないままアメリカに行こうと思ってたわけじゃないって」
「ああ・・・・」
「あの人は、俺の芝居なんて見たことないんだよ」
「そうなのか?」
「そう。見たこともないくせにいきなり主役級の役をやらせようとするなんて無茶苦茶だと思わない?」
「確かに・・・・」
「俺はちゃんと自分の力で勝負したいし、それをちゃんと見てほしいと思ってる。だから来週母親を呼んで、見てもらってからアメリカに行くことも言うつもりだったんだ」
「なるほど」
「その前にバレちゃったけどね」
「そうだ、パスポートどうするんだ?」
母親に取り上げられてしまったというパスポート。
パスポートがなくちゃアメリカへはいけない。
「うん。こうなったら実力行使でしょ。舞台観せて認めさせて、返してもらう」
そう言って瑞希はにやりと笑った。
アメリカに行けないかもしれないと言って泣いていた瑞希は、そこにはいなかった。
きらきら輝いて、前だけを向いている。
「―――なんか、かっこいいね、お前」
俺がそう言うと、瑞希はちょっと頬を染めて俺を見た。
「急に褒められると、照れるんだけど」
「正直に言っただけだよ。―――アメリカ、行けるといいな」
「うん。ありがと―――優斗くん」
「ん?」
「・・・・ううん、なんでもない」
そう言って俺から目をそらす瑞希。
何か言いたげなその表情が俺の胸に引っかかって、俺は瑞希の横顔から目を離せなかった・・・・。
じゃあ瑞希はそれが終わってからアメリカに行くということなのか。
「あの、アメリカへは宮下くんも一緒に?」
俺が聞くと、宮下は笑って首を振った。
「いえ、俺にはそんな度胸ないですよ。英語もできないし・・・・もともと、ここの代表の折田さんのお芝居を観に行ったことがきっかけでこの劇団に入ったので、ずっとここにいるつもりです」
「そうなんだ」
「あいつはすごいです。英語もろくにできなかったのにアメリカに行って俳優になるって急に言い出したかと思ったら、猛勉強して英会話もできるようになって。こっそりバイトして貯めてたお金で何度も一人でアメリカに行ってエージェンシーに押しかけて―――とうとうオーディションにまでこぎつけてしまった。そういうところ、尊敬してるんです」
宮下はそう言って目を細め、眩しそうに瑞希を見た。
「結局俺は、そういうあいつが羨ましくて嫉妬してただけなんです。ただスター性があるだけじゃない。あいつはそれだけの努力もしてるし行動力もある。自分で運を引き寄せてるんですよね」
「どうだった?優斗くん」
帰り道、瑞希が聞いてきた。
「面白かったよ。お前、歌うまいんだな」
「ほんと?へへ、ありがと。一応ね、芝居も歌もずっとレッスンは受けてたから。ばばあの言いなりになるのは嫌だったけど、歌も芝居も好きなんだ」
そう言って笑う瑞希の瞳はキラキラ輝いていた。
「来週、初日なんだって?あの折田って人に観に来てって言われたんだけど・・・・」
「そうなんだ。よかったら海斗くんと一緒に観に来てよ。日本での最後の舞台になるかもしれないし」
「そうだな。海斗に聞いてみるよ」
「・・・・その日に、母親も呼ぶつもりなんだ」
「え?」
俺は驚いて瑞希の顔を見た。
「言ったでしょ?母親に認められないままアメリカに行こうと思ってたわけじゃないって」
「ああ・・・・」
「あの人は、俺の芝居なんて見たことないんだよ」
「そうなのか?」
「そう。見たこともないくせにいきなり主役級の役をやらせようとするなんて無茶苦茶だと思わない?」
「確かに・・・・」
「俺はちゃんと自分の力で勝負したいし、それをちゃんと見てほしいと思ってる。だから来週母親を呼んで、見てもらってからアメリカに行くことも言うつもりだったんだ」
「なるほど」
「その前にバレちゃったけどね」
「そうだ、パスポートどうするんだ?」
母親に取り上げられてしまったというパスポート。
パスポートがなくちゃアメリカへはいけない。
「うん。こうなったら実力行使でしょ。舞台観せて認めさせて、返してもらう」
そう言って瑞希はにやりと笑った。
アメリカに行けないかもしれないと言って泣いていた瑞希は、そこにはいなかった。
きらきら輝いて、前だけを向いている。
「―――なんか、かっこいいね、お前」
俺がそう言うと、瑞希はちょっと頬を染めて俺を見た。
「急に褒められると、照れるんだけど」
「正直に言っただけだよ。―――アメリカ、行けるといいな」
「うん。ありがと―――優斗くん」
「ん?」
「・・・・ううん、なんでもない」
そう言って俺から目をそらす瑞希。
何か言いたげなその表情が俺の胸に引っかかって、俺は瑞希の横顔から目を離せなかった・・・・。
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