うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら

文字の大きさ
31 / 43

第31話

しおりを挟む
来週、舞台の初日があると折田が言っていた。

じゃあ瑞希はそれが終わってからアメリカに行くということなのか。

「あの、アメリカへは宮下くんも一緒に?」

俺が聞くと、宮下は笑って首を振った。

「いえ、俺にはそんな度胸ないですよ。英語もできないし・・・・もともと、ここの代表の折田さんのお芝居を観に行ったことがきっかけでこの劇団に入ったので、ずっとここにいるつもりです」

「そうなんだ」

「あいつはすごいです。英語もろくにできなかったのにアメリカに行って俳優になるって急に言い出したかと思ったら、猛勉強して英会話もできるようになって。こっそりバイトして貯めてたお金で何度も一人でアメリカに行ってエージェンシーに押しかけて―――とうとうオーディションにまでこぎつけてしまった。そういうところ、尊敬してるんです」

宮下はそう言って目を細め、眩しそうに瑞希を見た。

「結局俺は、そういうあいつが羨ましくて嫉妬してただけなんです。ただスター性があるだけじゃない。あいつはそれだけの努力もしてるし行動力もある。自分で運を引き寄せてるんですよね」




「どうだった?優斗くん」

帰り道、瑞希が聞いてきた。

「面白かったよ。お前、歌うまいんだな」

「ほんと?へへ、ありがと。一応ね、芝居も歌もずっとレッスンは受けてたから。ばばあの言いなりになるのは嫌だったけど、歌も芝居も好きなんだ」

そう言って笑う瑞希の瞳はキラキラ輝いていた。

「来週、初日なんだって?あの折田って人に観に来てって言われたんだけど・・・・」

「そうなんだ。よかったら海斗くんと一緒に観に来てよ。日本での最後の舞台になるかもしれないし」

「そうだな。海斗に聞いてみるよ」

「・・・・その日に、母親も呼ぶつもりなんだ」

「え?」

俺は驚いて瑞希の顔を見た。

「言ったでしょ?母親に認められないままアメリカに行こうと思ってたわけじゃないって」

「ああ・・・・」

「あの人は、俺の芝居なんて見たことないんだよ」

「そうなのか?」

「そう。見たこともないくせにいきなり主役級の役をやらせようとするなんて無茶苦茶だと思わない?」

「確かに・・・・」

「俺はちゃんと自分の力で勝負したいし、それをちゃんと見てほしいと思ってる。だから来週母親を呼んで、見てもらってからアメリカに行くことも言うつもりだったんだ」

「なるほど」

「その前にバレちゃったけどね」

「そうだ、パスポートどうするんだ?」

母親に取り上げられてしまったというパスポート。

パスポートがなくちゃアメリカへはいけない。

「うん。こうなったら実力行使でしょ。舞台観せて認めさせて、返してもらう」

そう言って瑞希はにやりと笑った。

アメリカに行けないかもしれないと言って泣いていた瑞希は、そこにはいなかった。

きらきら輝いて、前だけを向いている。

「―――なんか、かっこいいね、お前」

俺がそう言うと、瑞希はちょっと頬を染めて俺を見た。

「急に褒められると、照れるんだけど」

「正直に言っただけだよ。―――アメリカ、行けるといいな」

「うん。ありがと―――優斗くん」

「ん?」

「・・・・ううん、なんでもない」

そう言って俺から目をそらす瑞希。

何か言いたげなその表情が俺の胸に引っかかって、俺は瑞希の横顔から目を離せなかった・・・・。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

処理中です...