転生治癒師の恋物語 〜聖女様と王子様の仲を取り持ったら、別の王子様に気に入られました〜

藤なごみ

文字の大きさ
30 / 87

第三十話 王都に無事に帰還

しおりを挟む
 そして、お昼前に王都に戻って軍の施設に着くとかなり大変なことになっていた。
 先ずは、軍の施設に集まっていた面々で、王太子様と王太子妃様、それにニース様もアメリアさんに抱っこされながら私たちの到着を待っていた。
 私たちが軍の施設に着くと、アメリアさんが私のところに慌てた様子でやってきたのだ。

「リンさん、オークの大群と遭遇したと聞いていますけど、本当に怪我はないんですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。その、オークキングも倒したけど何とか怪我なく帰って来ました」
「オークキングを相手にして無傷だなんて! リンさんは、本当にお強いのですね」

 どうやらルーカス様がアーサー様に連絡したのを端に、各所に物凄い勢いで広まったみたいだった。
 アメリアさんは私の体を心配そうにペタペタと触っていたけど、どうやら知らないうちに私たちはとんでもない事をしていたみたいだ。

「ワンワンだー!」
「ウォン!」

 そして、ニース様はいつの間にかシルバとじゃれ合っていた。
 うん、ここでニース様に血みどろな話はしなくていいでしょう。
 しかし、まだまだ次の話が待っていた。

「リン、悪いが一旦どのくらいのオークを倒したかを見せてくれ。訓練場を空けてある」

 元々どのくらいのオークを倒したかを報告する必要があるので、王太子様からの話は渡りに船です。
 いつの間にかシルバにニース様が乗っているけど、王太子妃様が側についているから大丈夫でしょう。
 ということでみんなで訓練場に向かい、私は魔法袋から大量の魔物を取り出した。

 シュイン、ドサドサ。

「おー!」
「ウォン!」
「「「こ、これは……」」」

 小山になっている倒したオークを見て、まだ良く分かっていないニース様はシルバと共に大はしゃぎしていた。
 しかし、他のものは余りの光景に言葉を失っていた。
 特に、頭部を失ったオークキングにかなりの衝撃を受けていた。
 その他にもオオカミや大蛇も多数倒しているが、全てスラちゃんが血抜きを終えている。

「確かに、これだけの魔物が街道を襲ったらとんでもないことになるわね……」
「義姉上、私も同感です。最初にオークキングを見た時は、度肝を抜かれましたぞ」

 王太子妃様とアーサー様がオークキングを触りながら話をしていたけど、もし大きな街道にオークキングが現れていたらとんでもない被害になるのは目に見えている。
 オークの大群でさえ一般の人たちにとってはかなりの脅威なので、そういう意味では早めに倒して良かったと思う。
 ちなみに、オークが現れた周囲の森をシルバとスラちゃんが確認したけど、もう大丈夫だと言っていた。
 しかし、念の為に明日ももう一度巡回することにしている。
 そして、ルーカス様があることを私に指示した。

「リン、悪いが何回かに分けて倒した魔物を卸してくれ。軍と言えども、流石に一度にこの数はさばけない」

 流通の問題もあるので、少しずつ魔法袋にしまっている魔物を卸すことになった。
 今日は先にオークとオークキング以外の魔物を卸して、一週間後に別のものを卸すことにした。
 そして、詳しい話をするために王城の王家専用食堂に行くことになった。

「わー!」
「ウォン、ウォン!」
「ふふ、ニースはシルバと遊べてご機嫌ね」

 王城は軍の施設の隣なのでみんなで歩いて行ったが、ニース様は相変わらずシルバに乗ってご機嫌だった。
 スラちゃんがニース様が落ちないように押さえているし、王太子妃様も側にいるので大丈夫でしょう。
 そして、既に食堂で待っていた陛下、王妃様、王太后様に王太子様が何があったかを報告すると、またもやかなりの驚きとなってしまった。

「なんと、そんな事が起きていたのか。国民に被害が起きていなくて良かった。それに、リンは息子を助けた事にもなる。ルーカスの父親として感謝する」
「あのあのあの、私は出来ることをしただけです。それに、オークキングは最初から私を攻撃していて、倒さないと私も殺されると必死だったので……」
「ありがとう。しかし、オークキングは強いものを見定めて攻撃するという。その強いものが、ルーカスではなくリンというのも複雑な心境だがな」

 陛下が私に頭を下げたので、私はオークキングに襲われた時よりもワタワタしてしまった。
 それに、オークキングを倒した時は本当に必死だったから、そこまで周囲に気を配る余裕はなかったんだよね。

「父上、恐れながらある提案がございます」
「ふむ、なるほど。直ぐに手配しよう」

 すると、ルーカス様が私をチラリと見てから陛下に耳打ちをした。
 陛下も私をチラリと見て直ぐに動いたけど、何のことだか全く分からなかった。
 そして、ルーカス様が改めて私のところにやってきた。

 ギュッ。

「リン、本当に今日は助かった。感謝してもしきれない。改めて、お礼をしよう」
「あのあのあの、私も必死でしたから。それでも、何とかなって良かったです」

 わあっ!
 ルーカス様が、私の手を握りながら王子様スマイルでお礼を言ってきたよ!
 いきなりの不意打ちだったから、柄になくときめいてしまった。
 落ち着け、落ち着け私。
 目の前にいるのは、私よりも年下の未成年だ。
 ……全然未成年に見えない、超イケメンだけど。
 こうして何とか気持ちを落ち着かせて昼食を食べたのだが、王妃様とマリア様があらあらと先程の光景を微笑ましく見ていたのだった。
 激しい戦闘があったのでまた明日軍の施設に行くことになり、今日は昼食後に解散となった。
 そして、私は半日ぶりに武器屋に行ったのだった。

「ははは、これは派手にやったな。まあ、オークキング相手じゃ仕方ねーな」

 そうです、刀身が半分消滅した剣の修理を頼みに来たのです。
 親方は上機嫌に壊れた剣を手にしていたけど、残念ながらもう修理は不可能とのことでした。
 すると、親方はとんでもない事を言ってきた。

「コイツは、オークキングを倒した剣として飾っておこう。新しい剣を打ってやるから、暫くしたら来い」
「えー! こんなボロボロの剣を飾るなんて、とても恥ずかしいですよ!」
「バカ言え! キチンとした戦いの証拠として、とても価値があるんだぞ。殿下をお守りして、尚且つオークキングを倒したのだから尚更だ!」

 親方曰く、軍の証言付きなのでこの壊れた剣はかなりの価値があるという。
 それこそ、オークションにかければ高値で取引されるという。
 私的には、壊したものを飾られるというある意味辱めを受けているのですけど……
 とにかく、次は剣を壊さないように魔力制御をもっと頑張ろうと心に誓ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

銀狼の花嫁~動物の言葉がわかる獣医ですが、追放先の森で銀狼さんを介抱したら森の聖女と呼ばれるようになりました~

川上とむ
恋愛
森に囲まれた村で獣医として働くコルネリアは動物の言葉がわかる一方、その能力を気味悪がられていた。 そんなある日、コルネリアは村の習わしによって森の主である銀狼の花嫁に選ばれてしまう。 それは村からの追放を意味しており、彼女は絶望する。 村に助けてくれる者はおらず、銀狼の元へと送り込まれてしまう。 ところが出会った銀狼は怪我をしており、それを見たコルネリアは彼の傷の手当をする。 すると銀狼は彼女に一目惚れしたらしく、その場で結婚を申し込んでくる。 村に戻ることもできないコルネリアはそれを承諾。晴れて本当の銀狼の花嫁となる。 そのまま森で暮らすことになった彼女だが、動物と会話ができるという能力を活かし、第二の人生を謳歌していく。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか@12/10書籍刊行
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

底辺デザイナー、異世界では魔法陣クリエイターとして最強でした

新川キナ
ファンタジー
現代日本で底辺デザイナーとして働いていたリサは、事故死して異世界転生。 与えられたのは「脳内に描いた絵を具現化出来る」という、遊び半分の余り物スキルだった。 だが、その力は魔法陣やスクロール作製において驚異的な才能を発揮する。 孤児として育ちながら、老職人に拾われて魔法陣の奥義を学ぶリサ。 凡人だった彼女はいつしか「魔法陣デザイナー」として異世界に名を刻んでいく──

処理中です...