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第三十二話 謁見
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時間になったので、私とアメリアさんは係の者の案内で王太后様の部屋から移動し始めた。
既に貴族は謁見の間に集まっているらしく、王城内は職員のみ歩いていた。
時折書類を持った職員がチラチラとアメリアさんのことを見ていたけど、アメリアさんは公爵令嬢らしい凛とした佇まいで男女問わず惹きつけるものがある。
ちんちくりんな私とは、醸し出している空気が全く違った。
「ここが、謁見の間……」
そして、私たちは謁見の間の前に到着した。
謁見の間に通じる扉には豪華な装飾が施されていて、謁見の間の威厳を表しているみたいだった。
そろそろ出番らしいので、私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとした。
胸に手を当てて、息を吸って、息を吐い……
ギギギギ……
わあ!
いきなり、謁見の間の重厚そうな扉が開き始めた。
思わずむせそうになったのを何とか堪えて、私はアメリアさんの後をついて行った。
ギロッ。
謁見の間に入った途端、絨毯の左右に並んでいる貴族から一斉に視線を浴びた。
中には敵意のある視線も含まれていたが、謁見中に何かしてくる可能性はないと信じて背筋をピンと伸ばしながら歩いた。
そして、特訓した通りに絨毯の切れ目に着いたら、私は膝をついて頭を下げた。
「静粛に、陛下が入場されます」
係の人のアナウンスが謁見の間に響き渡り、貴族も一斉に臣下の礼を取った。
誰も一言も発さない静寂の中で、王族が歩く足音だけ響いていた。
どうやら、私とアメリアさんが準備を整えることが王族の入場の合図だったみたいだ。
そして、王族がそれぞれの立ち位置につき陛下が玉座についた。
「皆のもの、面を上げよ」
陛下の言葉とともに、私とアメリアさんはおもむろに顔を上げた。
集まっている貴族も陛下の言葉とともに顔を上げていたが、一部の貴族からどよめきが起きていた。
耳を澄ませて貴族の話を聞いてみると、どうも王太后様が車椅子だけど姿を現したのに驚いているみたいだ。
恐らく、今まで重病だったから謁見などに顔を出していなかったのだろう。
「本日は、良い知らせと残念な知らせがある。先に、残念な知らせを伝える」
貴族のどよめきなど全く気にすることなく、陛下は淡々と話し始めた。
その瞬間、どよめいていた貴族も流石に静かになった。
「既に知っているものも多いかと思うが、息子アーサーの婚約者候補だった三人の令嬢ならびに三家の当主が王国からの命令を無視した行動を取った。三家が何をしたのかと、詳しく説明する気にもならぬ程の狼藉だ。三家は強制当主交代とし、令嬢も貴族としての権利を剥奪する。更に当主夫人も裏で糸を引いていたため、全員を強制労働刑とする。更に資産の四割を罰金とし、支払遅延が発生した場合は爵位の降格とする。三十年は国主催のイベントに招待せず、十年は主要な職につかせない」
陛下の罪状発表に、一部の貴族がまたどよめいていた。
まさか、ここまで厳しい処分になるとは思ってもいなかったのでしょう。
多分、捜査の過程で私とアメリアさんへの暴行以外にも様々な罪が判明したのでしょう。
軍に全てをお任せしていたから、私からは何にも言えないけど。
「さて、残念な知らせはこのくらいにしておく。次に、グローリー公爵令嬢アメリアと冒険者リンへの勲章の授与を行う」
えっ?
勲章の授与って、私は何かそんな凄いことをしたっけ。
異世界に来てからのことを思い返したけど、さっぱり思いつかなかった。
実際に話を聞かないと、私も良く分からないぞ。
「最初に、我が母である王太后を完治させた功績として、アメリアとリンに勲章を授ける。不治の病に冒されていた王太后を完治させたのは、間違いなくアメリアとリンの功績だ。アメリアとリンは王族に取り入るなどという考えはなく、目の前の病人を治療したいという一心だった。その心掛けも、称賛に値する」
「「恐れ入ります」」
治療中は陛下と会わなかったけど、よく考えれば治療していたのは王太后様で陛下のお母さんだった。
陛下の言う通り、私とアメリアさんはとにかく王太后様に良くなって欲しいと思いながら治療したんだよね。
こうして、私とアメリアさんに勲章が授与された。
しかし、話はこれで終わらなかった。
「続いて、リンへ勲章と剣を授ける。軍と行動と共にし、街道に現れた五十体以上のオークならびにオークキングを撃退した功績となる。それだけのオークとオークキングが人々を襲ったとしたら、その損害は多大なものとなる。更に現場には息子のルーカスもいたのだ。リンの打ち立てた功績はかなり大きい」
オークキングを倒した件が、こんな大事になるとは思わなかった。
特に、軍人貴族から大きな歓声が上がっていた。
そして、先ほどよりも一回り大きめの勲章に加えて、豪華な装飾が施された一振りの剣を頂いてしまった。
これは、完全に予想外だぞ。
「そして、最後に息子アーサーとアメリアの婚約を発表する。婚約披露パーティーは一ヶ月後を予定する」
「「「おめでとうございます」」」
正式にアーサー様とアメリアさんの婚約も発表されたし、何にせよこれで今回の騒動は終結ですね。
今後の結婚式とかの予定は、婚約披露パーティーで発表されるという。
その後も、事務的な話が幾つかあったが私には関係なかった。
「以上で、本日の謁見を終了とする」
こうして、今日の謁見は終了し王族が退場していった。
またもや謁見の間がざわざわとし始めているが、私とアメリアさんは貴族よりも先に退出することになったので係に連れられて謁見の間から出た。
「は、はあ……緊張しました……」
「そうですか? リンさんは、とても堂々としていたように見えましたが」
私は、頂いた剣を手にしながら胸を思わず押さえていた。
やはり、偉い人がいるところは慣れないものだ。
アメリアさんが隣を歩きながら不思議そうに私の顔を覗いてきたけど、謁見中はとにかく失敗しないようにと気を張っていたもんなあ。
しかし、この剣はとんでもない気がするけど、後で詳しい人に聞いてみよう。
既に貴族は謁見の間に集まっているらしく、王城内は職員のみ歩いていた。
時折書類を持った職員がチラチラとアメリアさんのことを見ていたけど、アメリアさんは公爵令嬢らしい凛とした佇まいで男女問わず惹きつけるものがある。
ちんちくりんな私とは、醸し出している空気が全く違った。
「ここが、謁見の間……」
そして、私たちは謁見の間の前に到着した。
謁見の間に通じる扉には豪華な装飾が施されていて、謁見の間の威厳を表しているみたいだった。
そろそろ出番らしいので、私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとした。
胸に手を当てて、息を吸って、息を吐い……
ギギギギ……
わあ!
いきなり、謁見の間の重厚そうな扉が開き始めた。
思わずむせそうになったのを何とか堪えて、私はアメリアさんの後をついて行った。
ギロッ。
謁見の間に入った途端、絨毯の左右に並んでいる貴族から一斉に視線を浴びた。
中には敵意のある視線も含まれていたが、謁見中に何かしてくる可能性はないと信じて背筋をピンと伸ばしながら歩いた。
そして、特訓した通りに絨毯の切れ目に着いたら、私は膝をついて頭を下げた。
「静粛に、陛下が入場されます」
係の人のアナウンスが謁見の間に響き渡り、貴族も一斉に臣下の礼を取った。
誰も一言も発さない静寂の中で、王族が歩く足音だけ響いていた。
どうやら、私とアメリアさんが準備を整えることが王族の入場の合図だったみたいだ。
そして、王族がそれぞれの立ち位置につき陛下が玉座についた。
「皆のもの、面を上げよ」
陛下の言葉とともに、私とアメリアさんはおもむろに顔を上げた。
集まっている貴族も陛下の言葉とともに顔を上げていたが、一部の貴族からどよめきが起きていた。
耳を澄ませて貴族の話を聞いてみると、どうも王太后様が車椅子だけど姿を現したのに驚いているみたいだ。
恐らく、今まで重病だったから謁見などに顔を出していなかったのだろう。
「本日は、良い知らせと残念な知らせがある。先に、残念な知らせを伝える」
貴族のどよめきなど全く気にすることなく、陛下は淡々と話し始めた。
その瞬間、どよめいていた貴族も流石に静かになった。
「既に知っているものも多いかと思うが、息子アーサーの婚約者候補だった三人の令嬢ならびに三家の当主が王国からの命令を無視した行動を取った。三家が何をしたのかと、詳しく説明する気にもならぬ程の狼藉だ。三家は強制当主交代とし、令嬢も貴族としての権利を剥奪する。更に当主夫人も裏で糸を引いていたため、全員を強制労働刑とする。更に資産の四割を罰金とし、支払遅延が発生した場合は爵位の降格とする。三十年は国主催のイベントに招待せず、十年は主要な職につかせない」
陛下の罪状発表に、一部の貴族がまたどよめいていた。
まさか、ここまで厳しい処分になるとは思ってもいなかったのでしょう。
多分、捜査の過程で私とアメリアさんへの暴行以外にも様々な罪が判明したのでしょう。
軍に全てをお任せしていたから、私からは何にも言えないけど。
「さて、残念な知らせはこのくらいにしておく。次に、グローリー公爵令嬢アメリアと冒険者リンへの勲章の授与を行う」
えっ?
勲章の授与って、私は何かそんな凄いことをしたっけ。
異世界に来てからのことを思い返したけど、さっぱり思いつかなかった。
実際に話を聞かないと、私も良く分からないぞ。
「最初に、我が母である王太后を完治させた功績として、アメリアとリンに勲章を授ける。不治の病に冒されていた王太后を完治させたのは、間違いなくアメリアとリンの功績だ。アメリアとリンは王族に取り入るなどという考えはなく、目の前の病人を治療したいという一心だった。その心掛けも、称賛に値する」
「「恐れ入ります」」
治療中は陛下と会わなかったけど、よく考えれば治療していたのは王太后様で陛下のお母さんだった。
陛下の言う通り、私とアメリアさんはとにかく王太后様に良くなって欲しいと思いながら治療したんだよね。
こうして、私とアメリアさんに勲章が授与された。
しかし、話はこれで終わらなかった。
「続いて、リンへ勲章と剣を授ける。軍と行動と共にし、街道に現れた五十体以上のオークならびにオークキングを撃退した功績となる。それだけのオークとオークキングが人々を襲ったとしたら、その損害は多大なものとなる。更に現場には息子のルーカスもいたのだ。リンの打ち立てた功績はかなり大きい」
オークキングを倒した件が、こんな大事になるとは思わなかった。
特に、軍人貴族から大きな歓声が上がっていた。
そして、先ほどよりも一回り大きめの勲章に加えて、豪華な装飾が施された一振りの剣を頂いてしまった。
これは、完全に予想外だぞ。
「そして、最後に息子アーサーとアメリアの婚約を発表する。婚約披露パーティーは一ヶ月後を予定する」
「「「おめでとうございます」」」
正式にアーサー様とアメリアさんの婚約も発表されたし、何にせよこれで今回の騒動は終結ですね。
今後の結婚式とかの予定は、婚約披露パーティーで発表されるという。
その後も、事務的な話が幾つかあったが私には関係なかった。
「以上で、本日の謁見を終了とする」
こうして、今日の謁見は終了し王族が退場していった。
またもや謁見の間がざわざわとし始めているが、私とアメリアさんは貴族よりも先に退出することになったので係に連れられて謁見の間から出た。
「は、はあ……緊張しました……」
「そうですか? リンさんは、とても堂々としていたように見えましたが」
私は、頂いた剣を手にしながら胸を思わず押さえていた。
やはり、偉い人がいるところは慣れないものだ。
アメリアさんが隣を歩きながら不思議そうに私の顔を覗いてきたけど、謁見中はとにかく失敗しないようにと気を張っていたもんなあ。
しかし、この剣はとんでもない気がするけど、後で詳しい人に聞いてみよう。
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