36 / 87
第三十六話 まさか事前確認でこんなにも疲れるとは……
しおりを挟む
陛下と王太子様との話は無事に終わり、私たちとダイン様は再び大部屋に戻った。
シルバとスラちゃんは一足先にアメリアさんとニース様のところに行く事になり、陛下と王太子様と一緒に行動していた。
陛下は移動しながらさり気なくシルバの毛並みをもふもふしていたけど、ツッコんでは駄目だと何とか堪えた。
「じゃあ、次はこっちだ。厨房の確認だ」
大部屋の確認が終わると、次にダイン様に連れてこられたのは厨房だった。
王城専属の料理人が忙しく料理をしているけど、あれだけの大部屋にたくさんの人が集まるのだから当然なのだろう。
まさに戦場と化している厨房内に、探索魔法を使った。
シュイン、もわーん。
えーっと、王城専属料理人は問題ないけど、食材の方に問題があるみたいだ。
私は、ダイン様にある事を伝えた。
「ダイン様、ステーキ肉が少し傷んでいます。多分、加熱してもお腹を壊すと思いますよ」
「「「なにっ!?」」」
びっ、びっくりした……
ダイン様に話しかけたら、他の料理人も一斉に私を振り返ったのだから。
しかし、ステーキ肉を確認したら料理人の表情が曇ってしまった。
「ちっ、温度管理はどうした! これじゃ、パーティーに出せないぞ!」
「おい、肉の在庫がねーぞ。メインが出せなくてどうするんだ!」
あわわ、厨房が一瞬にして修羅場となってしまった。
スラちゃんなら消化できるレベルなんだけど、特に小さい子が食べると駄目な気がする。
えーい仕方ない、これを提供しよう。
私は、魔法袋からある物を取り出した。
ドン!
「あの、この前倒して解体済みのオーク肉です。これで何とかなりますか? 魔法袋に入れていたので、鮮度はバッチリです」
私は、オーク肉の塊を魔法袋から取り出した。
実は、この前のオークの大群の騒ぎで倒したオークの一部を報酬として貰っていたのだ。
しかし、余りにも大きいしシルバも食べ切れない量だった。
ドーンと塊を提供したが、魔法袋の中にはオーク肉がまだまだたくさん入っていた。
ガシッ。
「嬢ちゃん、ありがとう。これでどうにかなる」
すると、料理人が私の両肩をガシッと掴んでお礼を言ってきた。
何にせよ、これで王家が恥をかく事は無くなった。
ホッと胸を撫で下ろしていると、ダイン様が顎をシャクリながら何かを考えていた。
「妙だな、食料品は厳重に管理されているはずだ。それが肉は傷んでいるし、予備の肉もない」
「在庫帳を確認すれば、何かわかりそうですね」
「それもあるが、その傷んでいる肉の出どころを確認しないとならない。リン、その肉を回収するぞ」
ダイン様は、この傷んだ肉の件は何か仕組まれているのではないかと思っていた。
そして、先ほど詳細な鑑定を行った兵を呼び寄せたところ、とんでもない事が分かった。
「確認いたしました。前日、謁見で処分が通達された三家の所有となっております」
「ちぃ、やはりか。自分たちがアーサー殿下の婚約者候補から外されて大きな処分を受けたから、婚約披露パーティーをぶち壊しにしようとしたんだな」
思っている以上の大事件に発展してしまい、ダイン様も怒り心頭だった。
当然厨房周辺の警備は増強され、更に傷んだ肉をすり替えた件も含めて捜索の手が入った。
勿論陛下にも報告されたが、陛下も怒り心頭だったという。
直ぐ様、三家に対する強制捜査を指示した。
ちなみに、王城の厨房は衛生的にも問題ないのでこのまま料理はお任せになった。
そして、私は再び大部屋に戻ったのだった。
「はあ、疲れた……」
そして、思わず壁際に置かれていた椅子にどっかりと腰掛けてしまった。
まさか、パーティーが始まる前にこんなにも疲れてしまうとは思わなかった。
すると、大部屋に二人の王族が入ってきた。
「リンにまた助けられた。本当に感謝している。あの馬鹿貴族は、単に情報収集で盗聴用の魔導具を設置したらしい。勿論、厳罰の対象になる」
「それよりも、あの馬鹿三家の方が大問題じゃ。王家主催のパーティーを潰そうとした事が、どれ程の罪になるのか分かっておらんようじゃのう。未だに罰金を納めておらぬし、このままだと謀反の疑いありでお家取り潰しになるぞ」
ルーカス様とマリア様がかなり呆れた様子で私に話しかけてきたけど、どうやら盗聴用魔導具を設置した貴族の聴取や強制捜査の準備対応は終わったようだ。
ちなみに、二人ともまだ普段の貴族服とドレスを身に着けていた。
あのプライドだけは激高の三家は、アメリアさんの面子を潰すことだけしか考えていなかったのかもしれない。
視野が狭そうだし、ガツンと処分をしないともう駄目だろうな。
「あと、父上がリンに良くやったと伝えてくれと言っていた。兄上とアメリアの婚約披露パーティーが終わって一通り落ち着いたら、リンに褒美を出すと言っていた」
「まあ、当然じゃな。王家主催のパーティーを守った上に、料理用の素材まで提供しておる。リンは、目の前の事を対応しただけだと思っておるじゃろうがな」
ルーカス様、マリア様、もう褒美はお腹いっぱいです。
これ以上貰ったら、お腹壊します。
それでも、やったことに対する評価は高いらしいので、そこは素直に受け取っておきましょう。
ルーカス様とマリア様はパーティー用の衣装に着替えないとならないので、直ぐに大部屋を出ていった。
そして、私は他の人が大部屋に入ってくるまで思わずぐったりとしていたのだった。
シルバとスラちゃんは一足先にアメリアさんとニース様のところに行く事になり、陛下と王太子様と一緒に行動していた。
陛下は移動しながらさり気なくシルバの毛並みをもふもふしていたけど、ツッコんでは駄目だと何とか堪えた。
「じゃあ、次はこっちだ。厨房の確認だ」
大部屋の確認が終わると、次にダイン様に連れてこられたのは厨房だった。
王城専属の料理人が忙しく料理をしているけど、あれだけの大部屋にたくさんの人が集まるのだから当然なのだろう。
まさに戦場と化している厨房内に、探索魔法を使った。
シュイン、もわーん。
えーっと、王城専属料理人は問題ないけど、食材の方に問題があるみたいだ。
私は、ダイン様にある事を伝えた。
「ダイン様、ステーキ肉が少し傷んでいます。多分、加熱してもお腹を壊すと思いますよ」
「「「なにっ!?」」」
びっ、びっくりした……
ダイン様に話しかけたら、他の料理人も一斉に私を振り返ったのだから。
しかし、ステーキ肉を確認したら料理人の表情が曇ってしまった。
「ちっ、温度管理はどうした! これじゃ、パーティーに出せないぞ!」
「おい、肉の在庫がねーぞ。メインが出せなくてどうするんだ!」
あわわ、厨房が一瞬にして修羅場となってしまった。
スラちゃんなら消化できるレベルなんだけど、特に小さい子が食べると駄目な気がする。
えーい仕方ない、これを提供しよう。
私は、魔法袋からある物を取り出した。
ドン!
「あの、この前倒して解体済みのオーク肉です。これで何とかなりますか? 魔法袋に入れていたので、鮮度はバッチリです」
私は、オーク肉の塊を魔法袋から取り出した。
実は、この前のオークの大群の騒ぎで倒したオークの一部を報酬として貰っていたのだ。
しかし、余りにも大きいしシルバも食べ切れない量だった。
ドーンと塊を提供したが、魔法袋の中にはオーク肉がまだまだたくさん入っていた。
ガシッ。
「嬢ちゃん、ありがとう。これでどうにかなる」
すると、料理人が私の両肩をガシッと掴んでお礼を言ってきた。
何にせよ、これで王家が恥をかく事は無くなった。
ホッと胸を撫で下ろしていると、ダイン様が顎をシャクリながら何かを考えていた。
「妙だな、食料品は厳重に管理されているはずだ。それが肉は傷んでいるし、予備の肉もない」
「在庫帳を確認すれば、何かわかりそうですね」
「それもあるが、その傷んでいる肉の出どころを確認しないとならない。リン、その肉を回収するぞ」
ダイン様は、この傷んだ肉の件は何か仕組まれているのではないかと思っていた。
そして、先ほど詳細な鑑定を行った兵を呼び寄せたところ、とんでもない事が分かった。
「確認いたしました。前日、謁見で処分が通達された三家の所有となっております」
「ちぃ、やはりか。自分たちがアーサー殿下の婚約者候補から外されて大きな処分を受けたから、婚約披露パーティーをぶち壊しにしようとしたんだな」
思っている以上の大事件に発展してしまい、ダイン様も怒り心頭だった。
当然厨房周辺の警備は増強され、更に傷んだ肉をすり替えた件も含めて捜索の手が入った。
勿論陛下にも報告されたが、陛下も怒り心頭だったという。
直ぐ様、三家に対する強制捜査を指示した。
ちなみに、王城の厨房は衛生的にも問題ないのでこのまま料理はお任せになった。
そして、私は再び大部屋に戻ったのだった。
「はあ、疲れた……」
そして、思わず壁際に置かれていた椅子にどっかりと腰掛けてしまった。
まさか、パーティーが始まる前にこんなにも疲れてしまうとは思わなかった。
すると、大部屋に二人の王族が入ってきた。
「リンにまた助けられた。本当に感謝している。あの馬鹿貴族は、単に情報収集で盗聴用の魔導具を設置したらしい。勿論、厳罰の対象になる」
「それよりも、あの馬鹿三家の方が大問題じゃ。王家主催のパーティーを潰そうとした事が、どれ程の罪になるのか分かっておらんようじゃのう。未だに罰金を納めておらぬし、このままだと謀反の疑いありでお家取り潰しになるぞ」
ルーカス様とマリア様がかなり呆れた様子で私に話しかけてきたけど、どうやら盗聴用魔導具を設置した貴族の聴取や強制捜査の準備対応は終わったようだ。
ちなみに、二人ともまだ普段の貴族服とドレスを身に着けていた。
あのプライドだけは激高の三家は、アメリアさんの面子を潰すことだけしか考えていなかったのかもしれない。
視野が狭そうだし、ガツンと処分をしないともう駄目だろうな。
「あと、父上がリンに良くやったと伝えてくれと言っていた。兄上とアメリアの婚約披露パーティーが終わって一通り落ち着いたら、リンに褒美を出すと言っていた」
「まあ、当然じゃな。王家主催のパーティーを守った上に、料理用の素材まで提供しておる。リンは、目の前の事を対応しただけだと思っておるじゃろうがな」
ルーカス様、マリア様、もう褒美はお腹いっぱいです。
これ以上貰ったら、お腹壊します。
それでも、やったことに対する評価は高いらしいので、そこは素直に受け取っておきましょう。
ルーカス様とマリア様はパーティー用の衣装に着替えないとならないので、直ぐに大部屋を出ていった。
そして、私は他の人が大部屋に入ってくるまで思わずぐったりとしていたのだった。
84
あなたにおすすめの小説
不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
銀狼の花嫁~動物の言葉がわかる獣医ですが、追放先の森で銀狼さんを介抱したら森の聖女と呼ばれるようになりました~
川上とむ
恋愛
森に囲まれた村で獣医として働くコルネリアは動物の言葉がわかる一方、その能力を気味悪がられていた。
そんなある日、コルネリアは村の習わしによって森の主である銀狼の花嫁に選ばれてしまう。
それは村からの追放を意味しており、彼女は絶望する。
村に助けてくれる者はおらず、銀狼の元へと送り込まれてしまう。
ところが出会った銀狼は怪我をしており、それを見たコルネリアは彼の傷の手当をする。
すると銀狼は彼女に一目惚れしたらしく、その場で結婚を申し込んでくる。
村に戻ることもできないコルネリアはそれを承諾。晴れて本当の銀狼の花嫁となる。
そのまま森で暮らすことになった彼女だが、動物と会話ができるという能力を活かし、第二の人生を謳歌していく。
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか@12/10書籍刊行
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
底辺デザイナー、異世界では魔法陣クリエイターとして最強でした
新川キナ
ファンタジー
現代日本で底辺デザイナーとして働いていたリサは、事故死して異世界転生。
与えられたのは「脳内に描いた絵を具現化出来る」という、遊び半分の余り物スキルだった。
だが、その力は魔法陣やスクロール作製において驚異的な才能を発揮する。
孤児として育ちながら、老職人に拾われて魔法陣の奥義を学ぶリサ。
凡人だった彼女はいつしか「魔法陣デザイナー」として異世界に名を刻んでいく──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる