転生治癒師の恋物語 〜聖女様と王子様の仲を取り持ったら、別の王子様に気に入られました〜

藤なごみ

文字の大きさ
41 / 87

第四十一話 グローリー公爵家にお茶会に誘われました

しおりを挟む
 女性四人でのお茶会から一週間後、今度はアメリアさんからお茶会に誘われた。
 しかも、アメリアさんの母親も私に是非会いたいと言っているらしい。
 この国を代表する大貴族であるグローリー公爵家の御婦人を相手にするなんて、普通に緊張するものですよ。
 私は失礼のないようにバッチリと身だしなみを整えて、いつもの王城に行く際に着るドレスを身に纏った。

「ワフゥ?」

 シルバよ、何でそんなに気合を入れて準備をするのかと呑気な事を言っているけど、今日は日頃からお世話になっている人の母親に会うのだからきっちりするのは当たり前です。
 そう思いながら、私はシルバに生活魔法をかけて更にブラシで梳かして毛並みを綺麗にしたのだった。
 宿を出た私達はこの前と同様に大教会に向かい、アメリアさんと合流して馬車でグローリー公爵家へと向かった。

 ドーン。

「あの、フレイア様のお屋敷よりも小さいのですが……」
「ウォン、ウォン!」

 アメリアさんがかなり謙遜しながら説明してくれたが、到着したグローリー公爵家の屋敷はまたまた博物館級にとんでもなく大きかった。
 正直な話、ノルディア公爵家もとんでもなく大きかったけどグローリー公爵家も遜色ないと思った。
 改めて、アメリアさんはとんでもないところのお嬢様だと言うことを思い知ったのだった。
 そして、シルバはまたもや猛スピードでグローリー公爵家の庭を走ってとてもご機嫌だった。
 私達は屋敷の中に入って応接室に案内されたけど、グローリー公爵家はノルディア公爵家と違って芸術品を調度品の代わりに飾ってあった。
 その貴族家の特徴が調度品に表れていて、中々興味深かった。

 コンコン。

「失礼します、奥様がお見えになります」

 使用人がグローリー公爵夫人が応接室に入ると告げたので、私は急いでソファーから立ち上がった。
 程なくして、品の良い中年女性が応接室に入ってきた。
 アメリアさんと同じ薄いピンク色の髪をショートカットにしていて、アメリアさんよりも少しだけ背が低かった。
 しかし、女性から醸し出される圧倒的な雰囲気はアメリアさんの比ではなかった。
 これが、大貴族の御婦人なのかと改めて感じたのだった。
 私はグローリー公爵夫人が席に着くなり、直ぐに頭を下げた。

「初めてお目にかかります、冒険者のリンと申します。いつも、アメリアさんにはとてもお世話になっております。フェンリルのシルバと、スライムのスラちゃんです」
「ウォン!」

 私は、グローリー公爵夫人に失礼のないように出来るだけ丁寧に挨拶をした。
 スラちゃんも、ちょこんと臣下の礼を取っていた。
 シルバはというと、グローリー公爵夫人が良い人だと分かって尻尾をブンブン振りながら挨拶をしていた。
 すると、グローリー公爵夫人も柔和な笑みを浮かべながら挨拶をしてくれた。

「我が家こそ、アメリアがリンにとてもお世話になっているわ。アメリアはリンはとても素敵な人だといつも言っていたけど、実際に会ってみると私の想像以上だわ」

 グローリー公爵夫人は、何だかキラキラした目で私の事を褒めてくれた。
 というか、アメリアさんは私の事を家族にどの様に伝えていたのかが気になってしまった。
 グローリー公爵夫人はまだまだ話足りないって事で、私もソファーに座って話を再開した。

「リンには、二つの意味で感謝を言わないとならないのよ。グローリー公爵夫人として、そしてアメリアの母親としてね」


 グローリー公爵夫人はニコリと言いながら私にそう言ってきたけど、二つの意味ってどういうことなのだろうか。

「一つ目は、勿論アーサー様とアメリアの婚約が正式に決まった事よ。教会でアメリアに絡んできた貴族令嬢から助けてくれたし、婚約披露パーティーでも妨害から助けてくれたわ。本当に感謝しているわ」
「その、ありがとうございます。でも、教会の時は私ではなくシルバとスラちゃんが先にアメリアさんを助けました。婚約披露パーティーの時も、どちらかというと任務に近かったですので……」
「あらあら、そんなに謙遜しなくてもいいのよ。私もそれなりに情報を持っておりますし、リンの功績がとても大きいけどリン自身はそれを鼻にかけていないこともね。グローリー公爵家はそこそこの貴族家だから、何とかして縁を結びたいというものが後を絶たないのよ」

 な、何だか物凄い評価をされているのは気のせいでしょうか。
 私としては、どうにかしないとって思って体が動いたからで、そんな縁を結ぶとかは全く考えていなかった。

「リンは、我が家と無理矢理縁を結ぶ必要はなかった。それは、リンがアメリアの友人になってくれたからよ。リンと会って、アメリアはとても明るくなったわ。我が娘ながら、アメリアは聡明で凄腕の治癒師なのよ。だから、周りの人から嫉妬されたりしていたわ」
「私の方こそ、アメリアさんには良くして貰っています。貴族の事を全く知らなかったので、アメリアさんがいないと何もできませんでした」
「ふふ、そうやってお互いがお互いを助け合う事が何よりも大切なのよ。リンは、身分という壁を越えてそれを成し遂げてくれたのよ」

 グローリー公爵夫人だけでなく、アメリアさんもニコニコしながら私のことを見ていた。
 私がアメリアさんに助けて貰ったのは間違いないし、色々と教えて貰ったのも間違いない。
 シルバは、自分も友達だとアメリアさんにアピールしていた。

「やはり、リンはとても面白い存在ね。私もとても興味を持ったわ。そうそう、リンにお礼をしたいのよ。この先、絶対に必要なドレスを見繕ってあげるわ。御用商人も呼んでいるから、少し待っていてね」
「えっ!?」

 そして、話は全く別の方向に進んでいった。
 もしかしたら、私がキチンとした場に出る用の服を持っていないと言ったのを聞いたのかもしれない。
 しかも、既に手はずまで整えているとは。
 流石は公爵家の御婦人だと、改めて実感したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

最強ドラゴンを生贄に召喚された俺。死霊使いで無双する!?

夢・風魔
ファンタジー
生贄となった生物の一部を吸収し、それを能力とする勇者召喚魔法。霊媒体質の御霊霊路(ミタマレイジ)は生贄となった最強のドラゴンの【残り物】を吸収し、鑑定により【死霊使い】となる。 しかし異世界で死霊使いは不吉とされ――厄介者だ――その一言でレイジは追放される。その背後には生贄となったドラゴンが憑りついていた。 ドラゴンを成仏させるべく、途中で出会った女冒険者ソディアと二人旅に出る。 次々と出会う死霊を仲間に加え(させられ)、どんどん増えていくアンデッド軍団。 アンデッド無双。そして規格外の魔力を持ち、魔法禁止令まで発動されるレイジ。 彼らの珍道中はどうなるのやら……。 *小説家になろうでも投稿しております。 *タイトルの「古代竜」というのをわかりやすく「最強ドラゴン」に変更しました。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

銀狼の花嫁~動物の言葉がわかる獣医ですが、追放先の森で銀狼さんを介抱したら森の聖女と呼ばれるようになりました~

川上とむ
恋愛
森に囲まれた村で獣医として働くコルネリアは動物の言葉がわかる一方、その能力を気味悪がられていた。 そんなある日、コルネリアは村の習わしによって森の主である銀狼の花嫁に選ばれてしまう。 それは村からの追放を意味しており、彼女は絶望する。 村に助けてくれる者はおらず、銀狼の元へと送り込まれてしまう。 ところが出会った銀狼は怪我をしており、それを見たコルネリアは彼の傷の手当をする。 すると銀狼は彼女に一目惚れしたらしく、その場で結婚を申し込んでくる。 村に戻ることもできないコルネリアはそれを承諾。晴れて本当の銀狼の花嫁となる。 そのまま森で暮らすことになった彼女だが、動物と会話ができるという能力を活かし、第二の人生を謳歌していく。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか@12/10書籍刊行
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

処理中です...