転生治癒師の恋物語 〜聖女様と王子様の仲を取り持ったら、別の王子様に気に入られました〜

藤なごみ

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第七十話 直轄領での活動開始

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 翌朝、私たちは早速直轄領で行動を始めた。
 アーサー様は朝一番で王都に戻り、ルーカス様は軍の施設で直轄領の代官と打ち合わせを始めた。
 シルバとスラちゃんは、再び処理可能な分だけ魔物を卸すために軍の施設と冒険者ギルドに向かった。
 そして、私は治療兵の服装に着替えて町の人の治療を行うために直轄領の教会に向かった。
 後で、シルバとスラちゃんも教会に合流することになっている。
 シルバはともかくとして、スラちゃんなら問題なく教会に来るだろう。

「ようこそ、フェンリル連れの治癒師様。昨日は町を救って頂き感謝申し上げます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします」

 教会に向かうと、シスターさんがニコリとしながら私を出迎えてくれた。
 どうやら、昨日の私の奮戦が町の人にも伝わっているみたいですね。
 何はともあれ、治療を始めないと。
 私は最初に神様に祈りを捧げてから、指定された部屋に移動した。
 町の人に無料治療を行うとアナウンスされていたのか、治療開始と同時に多くの人が治療に訪れた。
 年配の人が中心で、加齢による心身の不調も見受けられた。
 でも、できるだけ丁寧に治療をして、話も聞くようにした。
 私の治療の師匠であるアメリアさんが実践していることで、私もできるだけ真似をしたいと思っていた。

「しかし、こんなめんこいお嬢さんがオークキングを倒したなんて。あんたは凄いのう」
「私も王子様や兵を守るのに集中していたので、オークキングを倒しても気持ちは切らさないでいました」
「うんうん、良い心がけじゃのう。あんたを嫁に貰いたいってものは、きっと多く現れるはずじゃ」

 治療をしたおじいさんがニコニコしながら私を褒めてくれたが、軍の兵は私とルーカス様の関係を知っているので何も言ってこない。
 直轄領にいる間は求婚など起きないだろうなあ。
 そんなことを考えながら、私は治療を進めていった。

「ウォン!」

 治療を始めて一時間ほどで、シルバとスラちゃんが教会に姿を現した。
 シルバは元気よく挨拶をしたけど、仕事をしていたのはほぼスラちゃんだったはず。
 スラちゃんも、無事に仕事を終えたと触手をふりふりとしていた。
 そして、シルバはスラちゃんをちょこんと頭の上に乗せたまま、私の隣にお座りした。
 すると、ここでスラちゃんがパワーアップした成果を見せたのだ。

 シュイン、ぴかー!

 なんと、スラちゃんが回復魔法を放ったのだ。
 昨日オークキングを含む大量の血抜きを行ったので、パワーアップしそうだと言っていた。
 攻撃魔法も使えて、アイテムボックスも使えて、更には回復魔法まで使える。
 昨日は魔鉄製の剣で魔法剣を発動してブンブンと敵を倒していたし、もはやスーパースライムだよね。
 そして、スラちゃんが回復魔法を使えることにより、治療のペースも格段に上がった。
 中にはスライムが治療しているのを不思議そうに見ている人もいたけど、そもそもがフェンリルも一緒なので段々と気にならなくなった。
 こうして午前中の治療は無事に終わり、一度軍の施設に戻ることになった。

「リン、直轄領を出発するのは明後日の午後になった。それまでは、悪いは無料治療を続けてくれ」

 昼食時に同席したルーカス様が今後の予定を教えてくれたけど、治療を行うのは苦ではないし全く問題ない。
 王都でも私たちの受け入れ準備があるだろうし、直轄領でも魔物の脅威が完全に消えたわけではない。
 スラちゃんもいるし、町の人全員を治療する心構えでいよう。
 シルバとスラちゃんも、昼食を食べながら了解とルーカス様に返事をしていた。
 今後の予定も決まったし、午後も頑張ろうと教会に向かった。
 すると、シスターさんがあることをお願いしてきた。

「申し訳ありませんが、教会に来ることができない町の方へ訪問診療をしてもらいたいのですが……」

 寝たきりや足の怪我などで教会に来ることができない人がいるらしいので、シスターさんだけでなく私もどうにかしないとと思った。

「ウォン!」

 すると、シルバとスラちゃんが巡回治療に行くと元気よく立候補した。
 道案内としてシスターさんも同行してくれるらしいので、ここは二匹に任せることにした。
 こうしてシスターさんと共に意気揚々と出発した二匹を見送り、私は治療を再開したのだった。
 夕方になると仕事を終えた人が治療に並び始め、教会内は中々の盛況だった。
 このタイミングでシルバとスラちゃんも教会に戻ってきたが、明日も巡回治療を続けるという。
 夕食の時間まで治療を続け、私たちは軍の施設に戻ったのだった。

「教会での治療が町の人の噂になっているが、どうやらどんでもないスライムがいるということも噂になっている。フェンリルを従えているスライムだという噂だが、あながち間違ってはいないな」

 ルーカス様が思わず苦笑しながら教えてくれたが、シルバとスラちゃんの巡回治療時のことも話題になっているそうだ。
 何にせよ、悪い噂ではないしこのままにしても問題はなさそうだ。

「ハグハグハグ」

 当のシルバは目の前のお肉に意識が集中していたが、スラちゃんはルーカス様に触手をふりふりしながら返事をしていた。
 今日の作業は無事に完了し、割り当てられた客室に向かった。

「スピー、スピー」

 明日も治療を頑張ろうと、床に丸まって寝ているシルバを見ながら思った。
 やることは、まだまだありそうだね。
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