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第三十章 入園前準備
九百九十四話 入園試験の日
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そして、いよいよ入園試験の日になりました。
僕は朝から大忙しで、実技試験担当のジンさんたちにも準備を手伝って貰っていました。
今年は過去最大の入園希望者数となったので、先生たちも準備で大忙しです。
「どんな人がやってくるのか、とっても楽しみ!」
僕と一緒に一足早く学園に来たリズは、もうワクワクが止まらないみたいです。
サンディたちも頑張るぞと気合を入れていた中、いつもなら元気いっぱいなこの人がどよーんとしていました。
「ドレスを着て試験をうけるなんて、とっても嫌なの……」
エレノアは王女という気品のある服装をしているのだけど、豪華な服装というよりかは動きにくい服装が嫌だという。
何ともエレノアらしい言い訳だけど、少なくとも筆記試験が終わるまでは我慢してほしい。
体育館前で受付を済ませると席の番号が記された紙を渡されるので、リズたちはさっそく体育館の中に入っていった。
因みに、今日は靴のまま入れるように体育館にはシートが引かれています。
うーん、前世のゴムみたいだけどこのシートの素材はなんだろうか。
試験開始前までは勉強してても問題ないので、リズたちもマジックバッグから参考書を取り出して読んでいました。
すると、僕と一緒に受付にいたジンさんがあることを聞いてきました。
「アレク、アリア様は来ないのか? 貴族の子どもは、入園試験の際によく親を連れてきていたはずだが」
実は、入園試験に親がついてきても全く問題ありません。
流石に筆記試験時は別室になるけど、剣技試験などでは観覧席から試験の様子を見守ることもできます。
実際に、受付を済ませた人の中には親子連れっていうのも見受けられます。
しかも、エレノアは王女ってのもあるので、余計に見に来るのではとジンさんは思っていたみたいです。
「その、僕がいるなら大丈夫でしょうと、保護者の皆さまから言われまして……」
「ああ、そういうわけね。確かにアレクがいれば、何かあってもどうにかなるな」
王妃様もアリア様も、今日は来客があるそうです。
ティナおばあさまは、王城に集まっているミカエルたちの勉強を見ているそうです。
なので、リズたちの保護者の代わりを僕とジンさんですることになりました。
スラちゃんとプリンもいるし、念の為に近衛騎士もいるから何かあっても大丈夫です。
この間にも、続々と受験者がやってきました。
貴族と一般で受付を分けているんだけど、本当にたくさんの人が受験するんだなって改めて思いました。
「俺、双翼の天使様と会ってみたいぞ! 頑張って友達になるんだ」
「確か、王女様とも仲が良いんだよね。いったいどんな人なのかな……」
僕が受付のお手伝いをしていると、僕から番号が書かれている紙を受け取りながら期待のこもった話をしていた。
うーん、なんというかこそばゆいなあ。
目の前に本物がいるなんて言えないし、レイナさんたちもちょっとくすくすとしていました。
そして、どうも僕は受付を手伝っている先輩だと思われているっぽいです。
実際に生徒会の面々が受付を手伝っていて、ルーカスお兄様たちも横にいます。
「アレク、良かったな。憧れの対象だってな」
「凄いわね。こんなにも双翼の天使様の二つ名って広まっているんだね」
小声でジンさんがからかい、レイナさんが凄いと言ってくれたけど、一般の人ほど僕たちに会ってみたいと言っていました。
既に目の前にいるとは、中々言い出せないですね。
一方で、貴族側にはこんな声もありました。
「双翼の天使様っていったって、どうせ大した事ないんじゃ?」
「そうだよな。俺たちと同じ年なのに、副宰相しているってあり得ないよなあ」
主に、僕の存在に疑問を持っている人もいるみたいです。
入園前なのに副宰相をしているなんて、僕もなんだか変に感じるよ。
アイビー様も、仕方ないわねといった表情を見せていました。
こうして殆どの人が手続きを終えた中、なんとお父さんに背負われてやってきた緑色の短髪の男の子がいました。
直ぐに駆け寄ったら、男の子は酷い熱を出していました。
「すみません、急に熱を出してしまいまして。本人は何とか試験を受けたいと言っていまして……」
「はあはあはあ……」
そっか、頑張って試験を受けようとして諦めずにここに来たんだ。
なにはともあれ、急いで治療をしないと。
僕とプリンは、直ぐに合体回復魔法を放ちます。
シュイン、シュイン、ぴかー!
「すうすう……」
「これで熱は大丈夫ですけど、だいぶ体力を消耗していたんですね。無理に動かすのはやめた方がいいです」
「そ、そんな……」
お父さんは愕然としながら、担架に乗せられている息子を見ていました。
きっと、今日のために頑張って勉強したんだね。
でも、大丈夫です。
直ぐに先生が動きました。
「不測の事態に該当しますので、再試験の手続きを行います。お父さんに書類を渡します。この子は、暫く保健室で休ませた方がいいですね」
「えっ、試験を受けられるんですか。あ、ありがとうございます!」
急病やその他の理由で、試験を受けられなかった人の為の救済措置があります。
この男の子以外にも、数名再試験を受ける予定です。
お父さんは、男の子が乗せられた担架を運ぶ兵とともに安堵の表情をしながら保健室に向かいました。
そして、この子で全受験者の確認は終わりです。
「このくらいは、別にトラブルの中に入らないな。対策した通りにやればいいだけだし」
うーんって背伸びをしながらジンさんが言っていたけど、毎年起きていることだししっかりとマニュアル通りに対応すればいいだけです。
後片付けとかは、受付担当の先生とルーカスお兄様を始めとした生徒会にお任せです。
僕とジンさんたちは、受験者が集まっている体育館に入りました。
僕は朝から大忙しで、実技試験担当のジンさんたちにも準備を手伝って貰っていました。
今年は過去最大の入園希望者数となったので、先生たちも準備で大忙しです。
「どんな人がやってくるのか、とっても楽しみ!」
僕と一緒に一足早く学園に来たリズは、もうワクワクが止まらないみたいです。
サンディたちも頑張るぞと気合を入れていた中、いつもなら元気いっぱいなこの人がどよーんとしていました。
「ドレスを着て試験をうけるなんて、とっても嫌なの……」
エレノアは王女という気品のある服装をしているのだけど、豪華な服装というよりかは動きにくい服装が嫌だという。
何ともエレノアらしい言い訳だけど、少なくとも筆記試験が終わるまでは我慢してほしい。
体育館前で受付を済ませると席の番号が記された紙を渡されるので、リズたちはさっそく体育館の中に入っていった。
因みに、今日は靴のまま入れるように体育館にはシートが引かれています。
うーん、前世のゴムみたいだけどこのシートの素材はなんだろうか。
試験開始前までは勉強してても問題ないので、リズたちもマジックバッグから参考書を取り出して読んでいました。
すると、僕と一緒に受付にいたジンさんがあることを聞いてきました。
「アレク、アリア様は来ないのか? 貴族の子どもは、入園試験の際によく親を連れてきていたはずだが」
実は、入園試験に親がついてきても全く問題ありません。
流石に筆記試験時は別室になるけど、剣技試験などでは観覧席から試験の様子を見守ることもできます。
実際に、受付を済ませた人の中には親子連れっていうのも見受けられます。
しかも、エレノアは王女ってのもあるので、余計に見に来るのではとジンさんは思っていたみたいです。
「その、僕がいるなら大丈夫でしょうと、保護者の皆さまから言われまして……」
「ああ、そういうわけね。確かにアレクがいれば、何かあってもどうにかなるな」
王妃様もアリア様も、今日は来客があるそうです。
ティナおばあさまは、王城に集まっているミカエルたちの勉強を見ているそうです。
なので、リズたちの保護者の代わりを僕とジンさんですることになりました。
スラちゃんとプリンもいるし、念の為に近衛騎士もいるから何かあっても大丈夫です。
この間にも、続々と受験者がやってきました。
貴族と一般で受付を分けているんだけど、本当にたくさんの人が受験するんだなって改めて思いました。
「俺、双翼の天使様と会ってみたいぞ! 頑張って友達になるんだ」
「確か、王女様とも仲が良いんだよね。いったいどんな人なのかな……」
僕が受付のお手伝いをしていると、僕から番号が書かれている紙を受け取りながら期待のこもった話をしていた。
うーん、なんというかこそばゆいなあ。
目の前に本物がいるなんて言えないし、レイナさんたちもちょっとくすくすとしていました。
そして、どうも僕は受付を手伝っている先輩だと思われているっぽいです。
実際に生徒会の面々が受付を手伝っていて、ルーカスお兄様たちも横にいます。
「アレク、良かったな。憧れの対象だってな」
「凄いわね。こんなにも双翼の天使様の二つ名って広まっているんだね」
小声でジンさんがからかい、レイナさんが凄いと言ってくれたけど、一般の人ほど僕たちに会ってみたいと言っていました。
既に目の前にいるとは、中々言い出せないですね。
一方で、貴族側にはこんな声もありました。
「双翼の天使様っていったって、どうせ大した事ないんじゃ?」
「そうだよな。俺たちと同じ年なのに、副宰相しているってあり得ないよなあ」
主に、僕の存在に疑問を持っている人もいるみたいです。
入園前なのに副宰相をしているなんて、僕もなんだか変に感じるよ。
アイビー様も、仕方ないわねといった表情を見せていました。
こうして殆どの人が手続きを終えた中、なんとお父さんに背負われてやってきた緑色の短髪の男の子がいました。
直ぐに駆け寄ったら、男の子は酷い熱を出していました。
「すみません、急に熱を出してしまいまして。本人は何とか試験を受けたいと言っていまして……」
「はあはあはあ……」
そっか、頑張って試験を受けようとして諦めずにここに来たんだ。
なにはともあれ、急いで治療をしないと。
僕とプリンは、直ぐに合体回復魔法を放ちます。
シュイン、シュイン、ぴかー!
「すうすう……」
「これで熱は大丈夫ですけど、だいぶ体力を消耗していたんですね。無理に動かすのはやめた方がいいです」
「そ、そんな……」
お父さんは愕然としながら、担架に乗せられている息子を見ていました。
きっと、今日のために頑張って勉強したんだね。
でも、大丈夫です。
直ぐに先生が動きました。
「不測の事態に該当しますので、再試験の手続きを行います。お父さんに書類を渡します。この子は、暫く保健室で休ませた方がいいですね」
「えっ、試験を受けられるんですか。あ、ありがとうございます!」
急病やその他の理由で、試験を受けられなかった人の為の救済措置があります。
この男の子以外にも、数名再試験を受ける予定です。
お父さんは、男の子が乗せられた担架を運ぶ兵とともに安堵の表情をしながら保健室に向かいました。
そして、この子で全受験者の確認は終わりです。
「このくらいは、別にトラブルの中に入らないな。対策した通りにやればいいだけだし」
うーんって背伸びをしながらジンさんが言っていたけど、毎年起きていることだししっかりとマニュアル通りに対応すればいいだけです。
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