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第十五章 人神教国

第三百二十話 寺院の捜索

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「ビアンカ殿下。もう兵を入れて、現場検証を始めた方がいいですよね」
「ほぼ脅威はなくなった。一度軍務卿の所に向かうとしよう」

 寺院は制圧できたので、国境にいる軍務卿の所に向かった。
 もうそろそろ、俺達から兵に引き渡さないといけない。
 
「そっか、制圧したか。よし、先行で部隊を連れて行ってくれ。俺も行くが、準備ができ次第国境から野営できる部隊を向かわそう」

 軍務卿は、直ぐに小隊をつれて来てくれた。
 暫くの間、人神教国の街の近くで留まって野営できるように準備も進めていた。
 指示をだしたら直ぐに動いていたので、早ければ明日には人神教国の街に着くという。
 
「何だお前らは。何時もは騒がしい位に元気なのに、今日は気持ち悪い位おとなしいな」

 軍務卿がこちらに来て発した第一声がこれだった。
 とにかく皆がおとなしい。
 原因に思い当たりが有りすぎて、俺からは何とも言えない。

「ほらほら、考えるのは後回しですよ。今は、やるべきことが沢山あるんですから」

 マリリさんが、手をパンパン叩きながら皆に行動を促す。
 そうすると、段々と皆が動き始めた。
 流石は万能メイドさん、かなり助かった。

「マリリさん、有難う御座います」
「さて、何のことですかね。さあ、サトー様も動かないと」

 さらっと流したあたり、流石はマリリさんだと思った。

 教祖が放った魔法の影響は大きく、一階で拘束していた人物にも亡くなっている人がいた。
 どっちにしろ、禁断症状でまともに動けるか全く分からない。
 俺の聖魔法も全く効かなかったし、もう完治は難しいだろう。

 建物の中の人を運び出しながら、龍の皆様にはケシ畑の在り処を探してもらった。
 龍の姿になって、バッサバッサ空を飛んでもらった。
 
「サトー、あったぞ!」

 直ぐに白龍王様が、ケシ畑を見つけてくれた。
 やはり街の直ぐ側に畑はあった。
 ビアンカ殿下と軍務卿と向かうと、そこには広大な広さのケシ畑があった。
 東京ドーム何個分なんだろうか?
 それぐらい広い。

「これは凄いのう」
「マジでヤバい代物だな。王国に流通しなくて良かったよ」

 ビアンカ殿下と軍務卿も思わずビックリしている。
 まだ傷をつけられたケシは少なかったので、人神教国内だけでアヘンが流通していた様だ。
 
「ビアンカ殿下、軍務卿。これは直ぐに燃やさないとダメですよね?」
「直ぐにやらなければならない」
「こんな危ないものを、こんなところに放置はできないな」

 という事で、龍の姿になった皆様にこれでもかって位にブレスを吐いてもらいました。
 流石は龍のブレス、よく燃えているな。
 ここは龍の皆様に任せて、寺院に再び戻った。
 
「ビアンカ殿下、軍務卿。地下に通じる階段を発見しました」
 
 寺院に戻ると、兵が中央塔に隠し階段があったと報告してきた。
 絶対に、ロクでもない物が入っていそうな気がするぞ。
 既にエステル達が、先行して調べているらしい。
 俺とビアンカ殿下と軍務卿も、隠し階段から地下に入った。

「どう見ても収容所だな」

 軍務卿の言うとおり、ズラッと鉄格子に囲まれた部屋が並んでいた。 全部で十部屋はある、中々広い空間だ。
 鉄格子の中には、白骨化した遺体も入っていたりした。
 そんな中、エステルが俺を見つけて叫んできた。

「サトー、辛うじてだけど生きている人がいる!」
「すぐに行くよ!」

 エステルに案内された所には、手足を拘束されて床に横たわっている人がいた。
 ガリガリに痩せてしまい、頭髪も抜け落ちてしまっているが辛うじて息をしていた。
 貫頭衣を着ているが、恐らく女性だろう。
 動けないのか、糞尿を垂れ流していたので直ぐに生活魔法で綺麗にする。
 手足にされている拘束も直ぐに解いた。
 
「くっそ、フルパワーでも中々良くならないぞ」

 既に栄養失調が進んで抵抗力が落ちているのか、中々体の中の淀みが取れない。
 それでも少しずつ、良くなってくる感触はあった。

「サトー様、これを。特別製のポーションです」
「有難う御座います。マリリさん」

 マリリさん特製のポーションを、何とか女性に飲ませる。
 少し水分を飲ませると、ちょっと落ち着いた感じになった。

「うちに運んで行きます」
「サトーの所の方が、万が一の時でも直ぐに対応できるだろう」

 担架に女性を乗せて、エステル達と共にうちにワープした。
 
「急いで部屋を確保してくれ」
「まあ、何とひどい状態に。すぐ部屋を準備します」

 うちにつくと、運んできた女性を見て普段はとても冷静なフローレンスがかなりビックリしていた。
 すぐに部屋が用意され、女性はベットに寝かされた。

「当分は、毎日の治療とマリリさん特製のポーションを柱とした治療だな。スラタロウに頼んで、流動食も準備してもらおう」
「そうですね。チナさんがお連れした子どもの事もありますし、要観察しておきます」

 フローレンスに上手く引き継がれたので、これで大丈夫だと思いたい。
 元の地下室に戻ると、何故かエステルとリンに抱きつかれた。

「サトーが、何時ものサトーで良かった」
「やっぱり、サトーさんはサトーさんです」
「二人とも、何かあったかと思ったよ」

 俺は、少し泣いている二人の事を抱きしめた。
 二人とも俺の正体を知って、色々と悩んでいたんだな。
 ふと顔を上げると、苦笑しているオリガとニヤニヤしているマリリさんの姿があった。
 俺は、ちょっと笑いながら抱擁を解いた。
 正体がバレてもきっと大丈夫だと、そんな思いがしていた。
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