女子切腹同好会 ～2有香と女子大生四人の“切腹”編・3樹神奉寧団編～

女子大生4人の切腹の章

8 新会員募集

　昨晩は、途轍もなく変な、そして異様に長～い夢を見てしまいました。
　一年半後の私の切腹の夢。あれ、リアル過ぎたけど、もしかして正夢なのかな？！
　いや、まさか…。
　しかし、思い出しても超興奮です。

　出来るのなら、あんな切腹してみたい！！

　ゴメンナサイ。私は真正の変態女です。許してください・・・。


　そうそう。女子切腹同好会の前会長、谷本美紀さんが切腹してから、今日で12日経っているんですね。
　彼女は美森女子高等学校の生徒会長でもありました。そんな人が突然いなくなってしまったのです。大騒ぎになるかと思ったのですが、“事務局”の処理は完璧でした。マスコミに報道されるようなニュースにはなりません。対外的には、何も無かったかのようです。
　学校では、美紀さんは家の都合によって退学したと発表されました。
　学校一の有名人でしたからね。まったく混乱が無かったとは言いません。学内では、それなりに騒ぎになりましたよ。
　特に生徒会は、会長が居なくなってしまい大変だったようです。副会長が急遽、会長になりました。

　ところで、美紀さんの両親は、どうなのでしょう？
　娘が居なくなってしまえば、普通は探しますよね。両親にはどんな風に説明されているのでしょうか？
　そういえば、夏実さんだって、そうですよ。グウタラで親にも見放されていたってことでしたが、いなくなってしまえば、普通は警察にも通報し、探すでしょうに…。
　２人のアパートを気にしていますが、警察が来ているような感じはありませんね。
　ああ、警察内部にも事務局の手が回っているんでしたっけ。怖いな、事務局・・・。


　さて、私は美紀さんの美しい切腹に感動してしまい、私自身も切腹する決心をしました。
　美紀さんみたいな麗しい切腹を遂げたい。それが、私の今の願望です。
　但し、美紀さんから託された『女子切腹同好会』を放っておくことは出来ません。美紀さんが会長を務めたこの崇高なる会、継続させてゆかなければならない。
　つまり、会員を募集しなければ……。後を継ぐ人がいないと、私も切腹できないということです。

　しか～し！！

　だからと言っても、ですね。この会ってば、秘密会なんです。大っぴらに会員募集ってことも出来ないのですよね。さあ、困りましたよ……。

　そんなことで、私は保健の先生＝緒方先生に相談することにしました。
　この人、“事務局”の人であり、私を会に引き込んだ張本人って言って良いでしょうからね。実際には前会長の美紀さんから誘われましたが、絶対この人が裏で手を回していたはずなんですから！

　学校の保健室。他に誰もいないことを確認してからその話を切り出しましたが、先生は人差し指を立てて「シー」のポーズ。そして小声で、

「明日の土曜日10時に、例の場所で」
とのこと。

　例の場所…。あそこですね。美紀さんが切腹した、“会館”です。
　学校では話せないってことですね。


　翌日の指定の10時、会館に来ました。鍵を開けて入ると、中で既に先生が待っていました。
　そこで私は、大変なことを明かされてしまいました。女子切腹同好会と宗教団体“樹神奉寧団”の関係。更に、切腹後の遺体がどうなるかについてです。

　まさか、遺体は神様“樹神様”へのお供え物とされていただなんて……。
　ですが、それで我が国の国土が安寧に保たれている？？
　巨大地震や火山噴火を抑え込んでる？？
　富士山噴火なんかからも？！？！

　これって、すごく重大なコトですよね。すごく崇高なコトですよね。命を捧げて国を守る英雄的行為と称えられても良いようなコトですよね！
　一切公表はされず秘密裏に行われている重要儀式……。自らの命を差し出した切腹遺体は、その儀式の供物とされ、そのお陰で他の人々は幸せに暮らしてゆけている。何も知らずに……。
　同好会の切腹には、そんな重い意味もあったんだ。
　私も、俄然やる気出てきましたよ。

　ところで、この秘密、本来は切腹する人が直前に聞かされることなんですって。なのに、それが私に明かされた。これには事情がありました。
　あの樹神奉寧団で事件があったのです。
　教団トップの教主が事故で亡くなってしまったんですって！
　階段で足を滑らせ、転落し、首の骨を折ったんだとか…。即死だったそうです。

　トップが突然居なくなってしまった。当然大混乱ですよね。後目争いなんかが起きちゃう？
　いや、新しく教主に就任したのは教団ナンバーツーだった若い血縁者で、それ自体は問題ないとの事。でもそれだけでは済まないのが宗教団体なんです。よく分かんないですが、就任儀式が必要なのですって。
　そして、その儀式には多数の供物が必要。

　供物・・・。

　だから、切腹した後の、若い女子の遺体ですよ！

　その為に協力して欲しいって、私に『切腹して供物になれ』ってこと？
　それは、別に良いですよ。じゃあ、私、すぐに切腹します！

　ん？　いや違う？　私は会長として会を保持しなければならない？？
　はい、まあ、そうですよね。じゃあ、どうしろと・・・。

　供物になる女の子を確保しろって？　会員を増やせ？？
　いや、だからですね。私は、その会員募集について相談したいのですよ！！


　あ、そうそう、もう一つ明かされたことが。
　この先生、実は美森高のOG。そればかりでなく、女子切腹同好会のOGでもある…。
　いやいや、それどころか、第7代の会長だったんですって！！

　当時の姓は紀藤。いや、先生は独身で結婚していません。両親が離婚し、今の姓「緒方」はお母様の姓だそうです。
　それを聞いて、慌てて会館秘蔵の過去の会員名簿を取って開いてみると……、あ、あった。紀藤由美。ホントに7代目の会長さんだ。
　当時高校3年生で、15年前のこと？
　というコトは先生の年齢は・・・。
　計算するなって？　ゴメンナサイ。（……32もしくは33歳です！！）


　それで、本題ですよ。会員増加について！
　鬼頭文庫において、あるグループを会に取り込むようにですって。
　でも、必ずしも切腹させなくても良いって、それどういうことですか？
　ああ、そうか。会を託せる人が居れば私が切腹できるもんね。

　え、違う？　私の切腹は当分お預け？！
　複数の供物が必要で、私一人じゃ足りない？
　今回の件が落ち着くまでは、現会長である私は切腹禁止なの？！
　そ、そんなあ・・・。

　え、ちょ、ちょっと待って下さいよ。今なんて言いました？？
　とりあえずは切腹じゃなくても、供物としての遺体があれば良い？
　それ、どういうこと？！
　私、殺人鬼じゃないですからね。嫌がる人を殺したりなんて、出来ませんからね。いくら世の為だなんていっても！

　冗談止めてくださいよ・・・。