女子切腹同好会 ~2有香と女子大生四人の“切腹”編・3樹神奉寧団編~

しんいち

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女子大生4人の切腹の章

17 聖子と和美

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 翌週日曜日、次の同好会活動の日。
 もしかしたら、4人は来ないかもと不安いっぱいでしたが、来てくれました。取り敢えずホッとしています。
 ただ、何か様子が変。
 これは一週間前の女子高生2人の切腹の時も感じていたことです。聖子さんと和美さんですが、スゴク影がある感じで、雰囲気が暗いような……。

 今日は動画鑑賞会。夏実さんと美紀さんの切腹動画をお見せします。
 私が中央で左に菊美さんと由紀さん。右に聖子さんと和美さん。一列に横並びで大型モニターの前に坐ります。

 取り敢えず、夏実さんの方からですね。
 夏実さん=成嶋夏実さんは、谷本美紀前会長の従姉で大学生でした。
 あ、菊美さんは彼女を知ってるんでしたね。皆さんと同じ大学に通っていたのですよ。
 彼女は美紀さんの目指す麗しい切腹の参考資料になりたいということで切腹したんです。ですので、会話しながらのちょっと変わった切腹でしたね。
 そんな経緯をお話しての上映。4人とも真剣に見入っていました。
 この前の実際の切腹よりも反応は良いのかな…。やっぱり、いきなり実際の切腹は刺激強すぎだったのです。

 夏実さんの次は、大本命。美紀さんの切腹動画です。
 美紀さん=谷本美紀前会長は、かく、麗しい切腹を目指して研究していた人です。そしてそれを見事に実践して見せました。
 私もその麗しい切腹に感動してしまい、切腹することを決めたんです・・・なんてお話しての、上映。

 ああスゴイ。美紀さん、とっても綺麗です。彼女は内臓も最高に麗しい。正に、美の女神様。神々しいよ……。
 私は既に、何度も何度も見返している動画なんですよね。でもこれ、何度見ても感動的に美しいのです。
 そして、最後の介錯シーンには私も映っています。介錯人として。…これ、ちょっと照れますね。(夏実さんの方にも映ってましたけどね)
 私が介錯して切り離した美紀さんの細い首。胴体と分離してしまっても美紀さんの顔の表情は凛としていて崩れない。
 頭部が無くなった胴体の方も、出した内臓を避ける様に優雅に崩れ、ゆっくりと、上品に動きを止めて行く・・・。
 ああ、アソコが濡れてきちゃうくらいにエモイですよ!

 さてと、4人の反応は、どうかな……。
 聖子さんと和美さん、既に終了した画面をジッと見詰めてる。
 どうしちゃった??
 やっぱりダメだった??

 そして、更に問題は、あとのふたり。前回の切腹でも引きまくってましたしね。
 その2人を見ると、どちらも口に手を当ててフリーズしてる。
 やっぱり、ダメ・・・かな?

「えっと、菊美さん・・・、どうですか、ご感想は?」

 恐る恐る訊いてみますと…。

「え、ええ。スゴイとしか言いようがない。これが麗しい切腹・・・。有香ちゃんは、この実際の切腹を生で見て、切腹したいと思ったのよね。動画からでも、こんなに凄いんですもんね。確かに理解できるわ」

 あら、案外好印象っぽい?
 やっぱり美紀さんは偉大ですね。

「で、でも、死んじゃったのよね、切腹して。確かに感動的に美しいけども、死んじゃうってのはどうなの?」

 あらら、由紀さんがちょっと否定的?

「いや、一度しかできない、やり直しがきかない行為であるからこそ感動的なんじゃない? たった一つしかない命を捧げてって、壮絶過ぎるよね。そして、それを成し遂げるために、どうすれば最高状態で出来るかシッカリ研究して、こんな風に立派に実践したのが前会長……。ホントにスゴイ人ね」

 おおっと、一気に菊美さんが肯定的になった!
 さあ、このまま「私も、切腹します!」と言いましょう!
 さあ、どうぞ!

「しかし、由紀の言うのももっともね。私も切腹しますとは言えないのよね。前回のも、スッゴク痛そうでメチャクチャ苦しそうだったし、私は、まだ死にたくないよ…」

 あっちゃ~。やっぱ、いきなり実際の切腹見せたのは失敗ですよ~。
 でも、あれは事務局が急がせたんですからね。私の所為せいじゃないですよね。
 私は悪くないですよ!

「あの、有香ちゃん。いや、会長。私、大切なお話があります」

 へ?
 右側、背後から突然声をかけられて、ちょっと驚きました。
 聖子さん、何ですか改まって。

「私も、会長にお話があります」

 え、和美さんも?
 か、“会長”だなんて、2人ともどうしました?
 ずっと暗い感じで様子が変だったけど、まさか、会を辞めたいなんて言いませんよね。
 ビクビクしながら2人の方に向きを変えると、彼女たちは立ち上がって、並んで真っ直ぐ私を向く。スゴク真剣な表情・・・。
 え、え~と、困ったな。辞めたいと言われたら、会長としてどうすれば良い?
 事務局と言うか、緒方先生に怒られるよ。引き留めなきゃダメよね。

 2人が立っていますので、私も立ち上がります。

「会長。私、切腹します。切腹させてください」
「私も切腹します。お願いします」

 はあっ?? へえっ?!

 せ、切腹する? 2人とも?
 しちゃう?? い、いいの?
 ホントに?? 

「ちょ、ちょっと待って。待ってよ、聖子。和美も! 切腹なのよ。やったら死んじゃうのよ」

 菊美さん、慌てて立ち上がり、聖子さんの手を取って止めに入る。当然ですね。

「分かってるわよ。私たち、この命を差し出す覚悟をしたの。もう、決めたことなので、止めないで」
「そう。私も切腹します。もう、これは2人でよく話し合って事前に決めていたこと。動画は最高に感動的だったけど、それを見て衝動的に言っているんじゃないんだよ」

 菊美さんと由紀さんは狼狽うろたえまくる。

「いや、いや、いや、待って。待ってってば。ダメよ、そんなの!」
「そうよ、ダメよ。死ぬのよ。死んじゃうんだよ。それに、とっても痛いんだよ」

「私たちは、死ぬ覚悟をしたの。痛いのも分かってるわよ」
「別に内臓を見たり触ったりしたいというんじゃなくってさ、死ぬことを決めたんだよ。痛いのは当然で、仕方ないわ」

「そ、そんな、何でよ! 何で死んじゃうのよ・・・。もしかして、先週聞いた怪しい話?」
「世の中の役に立てるって、アレ? そんなの怪しすぎるよ」

「ああ、違うよ。それはそれで嬉しい話だけど、それとは別。これは既に決定事項。もう考えは覆らないよ。だから、私たちの切腹、しっかり見届けて!」
「そうよ。お願い! 今日の動画のような立派な切腹とはいかないと思うけど、精一杯頑張るわ。菊美と由紀に見届けて欲しい」

 パニックで返す言葉が見つからなくなって、私の方に目で訴えかける菊美さんと由紀さん…。
 いや~、そんな目で見つめられても困りますよ。私の所為だって言いたいんですか?
 それはそうですけどね。でもね。ここは切腹同好会であって、本来、切腹するのが目的の会なんですからね。会に勧誘したのは私だけど、私は別に強要したのでもないですし、私にそんな目を向けられても、困るよなあ・・・。

「会長! 次の日曜日の切腹を希望します。これは、正式な申し出です」

 揃って頭を下げた聖子さんと和美さん。
 引き続き私に向けられる菊美さんと由紀さんの恨めしい視線。
 …これで事務局の要望には応えられますが、複雑な気分ですよ。

 2人はどちらも、自分の意志で切腹を望んでいます。不許可の理由なんて、一切無いですね。私が留める理由は、全く無いのです。
 会長として、私がすることは・・・。

「分かりました。おふたりの切腹、正式に受理し、事務局に申請します。事後処理のことも有りますので、この後、おふたりには事務局から直接説明や指示があると思います。以後はそれに従ってください。
 なお、これ以降に2人の切腹を妨害しますと、事務局の“消去”処分対象になりますので注意してください。意味分かりますよね。存在を消されるということです。中止説得も妨害行為と取られる恐れがあります。いいですね、菊美さん、由紀さん」

 ああ、その2人からの視線が痛い・・・。
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