女子切腹同好会

29 夏実の切腹動機

「う～ん。そうね～。最後だから、有香ちゃんには話しておこうかな～」

　・・・と、ここからは夏実さんが語ってくれた話。

　彼女、別に何かやりたいこともなく、惰性で大学に入ったは良いけれど、完全無気力で講義にもろくに出ずにダラダラ過ごしていたそうです。
　結果、留年。両親にも呆れられ、生活費も学費も出してくれなくなりました。見捨てられちゃったんですって。薄情だなあ。
　でも、私も同じようにしたら、多分同じことになるでしょうね。うちの親もかなり薄情です…。

　で、お金がない。どうしたかといいますと、援助交際ってヤツです。
　気持ち良いコトしてお金がもらえるなんて最高だって、ヤリまくりだったとか。何てことを！
　まあ、彼女、美人ですからね。需要はあったでしょう……。

　そんなところへ、従妹いとこの美紀さんが訪ねて来たのです。美紀さんは一人暮らしがしたくって、夏実さんを頼ってきました。既に成人している夏実さんに保護者代わりになって欲しいと。
　久しぶりに会った美紀さん。その匂い立つようなトテツモナイ美貌に夏実さん、完全にイカレチャッタんですって。女同士なのに、好きになってしまった…。美紀さんの為だったら、何でも出来ると思っちゃったんですね。
　分かりますよ、その気持ち。私もそんな感じで、今の高校に入りましたからね。

　で、夏実さんは生活を改めました。
　援助交際も徐々に減らし（…きっぱりやめられなかったのは、金銭的理由）、最終的には、例のセフレさん一人にしたそうです。
　この人はお金持ちで、パトロン的存在だったようです。

　そんなことですから、美紀さんは言うなれば、夏実さんを更生させてくれた恩人って感じなんですね。

　ある日、その美紀さんから告白されたそうです…。
　いや、愛の告白じゃありません。切腹するってことです。
　当然、夏実さんは大ショックです。切腹したら死ぬんですからね。
　大好きな美紀さんが死んでしまうのです。止めようとしましたが、美紀さんの意志は固い。
　それならと、夏実さんも告白しました。あ、こっちは愛の告白です。美紀さんが好きっていう…。

　で、その夜、二人は、一回だけの約束で、結ばれちゃったのですって…。そ、その、肉体的に…。
　女性同士のそういう関係ってのもあるんですよね…。そっちには疎い私にはよく分かりません。
　あれ？でも、美紀さんって、まだバージンって言ってましたよね。一体どんなことしたの？？
　いやいや、詳細は結構です！

　その体験で、思い残すことが一切無くなった夏実さん。美紀さんが死ぬなら、私もって決心したのです。会に入会しました。
　美紀さんが先に死んじゃうのは耐えられないと、自分が先に切腹することを申し出たのです。美紀さんが望む、麗しい切腹の為に、自分が実験台になるというコトで…。
　で、今日に至ったのですね。


　い、いや～、お二人がそんな関係だったとは・・・。

「でもね～。セフレちゃんとお別れしちゃってさ～。御無沙汰ちゃんでアソコが疼うずくのよね～。一回だけってお約束だったけどさ～。出来れば最後の思い出に、もう一回、美紀さんとチョメチョメシタイな～、なんてね～。それだけが、ちょっと心残りだったりするのよね～」

　そ、そんなの私は知りませんよ！美紀さんに直接お願いしてください。
　最後なんだから…、叶えてくれるかもしれませんよ……。


　・・・って、ところで美紀さんがお手洗いから戻ってきました。
　その美紀さんに夏実さんが放ったのは、愛の言葉ではなく…、

「美紀さん、遅かったっすね～。ウンコでした～？」

「う！！　…バカ！最低！」

　夏実さん、デリカシーなさ過ぎ。これは、最後の願いはダメですわ…。


　夏実さんは二十歳過ぎていますので、お酒も飲んでいます。ですが、明日に差し支えてもいけませんので、ここらでお開きにというコトになりました。
　片付け始めたその時、美紀さんのバックからメールの着信音。

　うん？　緊急連絡用のスマホ？
　あれ？　美紀さんそれ、持って来ていたんだ。私には、自宅に置いておくようにって言ってたのに…。
　え？　事務局からの連絡で、今日は携帯して電源を入れて置くようにって指示されていた？
　美紀さんは、そう説明しながらスマホのメールを確認。

「あの、夏実さん・・・。明日の切腹、中止です。
事務局から、延期するようにって指示です。理由と詳細は、後日だそうです」

「「えっ！？」」

・・・。