女子切腹同好会

しんいち

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34 挿入話『山下綾音』

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・・・山下綾音・・・

 私の妹は高校2年の時に行方不明になりました。失踪したというコトになっています。
 でも、当日朝まで何の不審な素振りもなかったのですよ。いつもの可愛く元気な妹だったのです。
 なのに、いきなり家出して、そのまま行方不明だなんて…。ぜったい、何かの事件に巻き込まれたんだ。そうに違いありません。
 だけど警察は、まともな捜査をしてくれない。母さん父さんまでも簡単に諦めてしまって…。信じられない!自分たちの娘なのに!
 私は諦めません。他人は頼りにならない。私が調べてやる!
 何となく、もう生きていないような気がしています。でも、真相は絶対暴いてやるんだから!

 自分なりに色々と調査をしました。怪しいのは、妹の通っていた高校。あまり公になっていませんが、毎年のように失踪者が出ているみたい。退学・転居したという扱いになり、隠されているようです。
 それから、市立図書館。あの高校から退学していった者の多くが、けっこうな頻度で市立図書館に通っていたそうなのです。勿論もちろん、妹も該当者です。

 図書館司書の資格を取っていた私。大学卒業のタイミングでもあり、丁度求人もありましたので、私は手掛かりを求めて市立図書館へ就職しました。
 その後一年間は、調査に大した進展はありませんでした。が、やっと、糸口が…。
 どうやら、失踪した高校生たちは、この図書館の分館「鬼頭文庫」に通っていたようなのです。
 かなり寂しい場所で利用者はあまりいません。変な勧誘とかするには、もってこいかも。
 それに、よくよく見てみると、奇妙な本が多い。オカルト系? これも関係あるのでしょうか。

 気にしていた鬼頭文庫へ、若い女の子が二人。一人は美森高の生徒会長だ!
 これは怪しい…。あの声をかけられた子が、次のターゲットとなっているのかもしれない。
 僅かに聞こえてきた声。同好会?何の同好会だろう…。

 折角掴んだ糸口です。慎重に調べを進めなければ…。
 あの子は、どうやら生徒会長に誘われた同好会に入った模様。それも、学校内の同好会ではないらしい。彼女は電車通学で、住んでいるのは隣町のよう。
 しかし、それ以上のことは分からない。私も就職した身。仕事を休んで始終張り込みする訳にはいかないのです。
 もう、こうなったら、直接聞くしかない! 学校から帰るその子の後をつけ、家の近くと思われる寂しい場所で声をかけました。

「ちょっと、良いかしら。あなたの入っている同好会について、訊きたいのだけど」

「何のことですか。私、何にも知りませんから!」

 その子、それだけ言って物凄い勢いで逃げ出した!
 な、なんで? そんな変なこと、私、訊いた? 何の同好会かぐらいは教えてくれたっていいでしょうに。何で逃げるのよ!

 慌てて追っかけますが、何て走るのが速い子なの?!
 すぐ見失ってしまいました。
 失敗した! 折角の手掛かりが…。

 仕方ありません。しばらくは警戒されるでしょうから、様子見ですね。
 通っている学校は分かっているし、家もこの近くのはず。
 私は何を焦っていたのでしょう。ここまで一年もかけて調べて来たのです。もう少し、ジックリ詰めるべきでした。反省です。



 週が明けて、月曜日。
 図書館は休み。学校周りをうろつくと怪しまれるので、夕刻にあの女の子を見失った場所に再度行き、物陰に隠れます。
 まもなく女の子は帰宅時間のはず。あ、来た!
 でも今日は声をかけません。家を確かめなきゃね。

 入って行ったのは…。
 なるほど、この家。新瀬…か。
 畑から帰る途中の近所のお婆さんに訊くと、新瀬家の高校生の娘は有香というらしい。
 名前が分かれば、さらに調べやすくなります。今日は、ここまで。



金曜日。
 同好会の活動は土曜か日曜のはず。明日と明後日は休みを取りました。これで尾行できるから、活動場所も判明するでしょう。もう少しです。
 そして、その日の仕事帰り。
 辺りはもう、薄暗くなっています。近道で、いつもの公園を通過するルート。人気ひとけはありません……。
 私は不意に後ろから口と鼻を塞がれ、変な臭いを嗅いだ途端に意識を失いました。

 頭が朦朧とします・・・。

 女性の声・・・。

 何か色々質問された気がします。私はそれに素直に答えたような・・・。

 ・・・・・。


 ううっ、こ、ここは、どこ?
 私……縛られている。ベッドに動けないようにシッカリと固定されています。いや、それに手足に力が入らない。ひいっ! ふ、服を着ていない! 裸にされている!
 な、何? 一体どうなっているの?
 そうだ、帰る途中で変な薬を嗅がされて拉致されたんだ。そして全裸にされて縛られている。
 咽喉のどが何か変。ジーンと痺れた感じ。う、こ、声が出ない…。ど、どうして?
 私は、これからどうされてしまうの?

 だ、誰?

 なんですって? か、解剖?

 何を言っているの?!
 私を、生きたままで解剖するですって!?
 ふざけないで!

 やめて! すぐに開放しなさいよ!

 やめなさいって!
 ホントに、やめてください。

 お願いします、やめてください。お願いです!

 ダメ! ダメだから!
 お願い。助けて!

 ヤメテ!

 い、イヤー!!

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