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38 挿入話『成嶋夏実』
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・・・成嶋夏実・・・
いや~、まさか切腹の前日に待ったをかけられちゃうって、面食らいましたね~。
でもスパイさんの解剖が出来て、参考になりましたよ~。
私の務めは、美紀さんの麗しい切腹を成功させること。その為の、いわば実験台っす。
美紀さんは実際の切腹を何度か見てるっすけどね。切腹中の人に話しかけるなんてことは出来なかったでしょうからね~。途中の痛みとか、どこまで我慢できそうかとかってことをお伝えするのが、私の使命ですね~。
それにしても、有香ちゃん。凄いっすね~。度胸据わってるっすよ~。
自分が生体解剖されるって勘違いしてたってのは笑えますけどね~。それで覚悟決めて大人しく出てきたって、凄すぎ! 普通、逃げ出しますってば!
オマケに自分から介錯を申し出て、スパイさんの首をスパッと一息で切っちゃいますしね~。
私の時は美紀さんがしてくれるだろうけど、美紀さんの介錯どうするんだろうなって、心配だったんすよね~。これで全く憂いがなくなりましたよ~。
そういえば、有香ちゃん、私たちの切腹後の遺体のことも気にしてくれていましたね~。いや、優しい子ですよ~。
特別扱いについて、美紀さんは詳しく知らないって言ってましたけどね~。私は、実は知ってるんっすよね~。
切腹の三日前に事務局から教えて貰えるんですよ~。切腹後の工作もありますから呼び出されて、遺書っぽいモノとか、書き置きみたいなの書かされたりするんすけどね~。その際に、遺体の扱いに関しても教えてもらえました~。
内緒のことだから、二人には言いませんでしたけどね~。
切腹した私たちの遺体は~。
供物・・・。
自ら命を差し出した者の肉体は、神様の御力を授けて頂くための重要な儀式の供物になるんですってよ~。
生贄…みたいな? いや~、既にお腹切って死んでるから、違うか~。まあ、そんなふうな感じですかね~。
それによって、国土の安寧が守られているって、なんだか良く分かんなかったですけどね~。つまるところ、世の中の役に立つってことっすよね~。それなら万々歳じゃないですか~。
こんな私でも、世の中の為になれるんすよ~。凄くないっすか~?
う~ん、なんか、誇らしい気分っすね~!
でも供物ってことは、その後に残ったのはどうなるんすかね~。そこまでは聞きませんでしたけどね~。結局肥料なんですかね~。ま、別に肥料で問題ないっすけどね~。
当初の予定より二週間遅れの切腹っす~。
前日土曜日には送別会のやり直しをしてもらっちゃいました~。そして夜に…なんと美紀さんの部屋に呼ばれて・・・。
美紀さん、二週間前の私と有香ちゃんの話、聞いてたんすね。
有難うございます~。
もう、これで思い残すことは、な~んにも無いっす~!!
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