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仙界にて
29 酒造り
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四月二十三日、四日目。
この日は、朝食後、昨日収穫してきたブドウのような果物の加工をするという。…酒造りだ。
祥子と舞衣の部屋がある建物の裏、つまり温泉に、木製の盥が用意された。そこへ、洗った果実を入れて行く。
温泉の湯で洗うのではない。温泉横に、近くの丘から水が引かれている。この水を汲んで、慎也が洗っているのだ。
舞衣は、祥子の指示で温泉に入っている。果実を洗うのを慎也一人に任せ、なぜ自分は温泉に入れられているのか意味が分からず、首をかしげながら。
一方、慎也はどういうことか、理解している。果実を踏んで潰すのだ。そのために、綺麗に体を洗えということ…。
祥子は慎也が理解していることを承知で、何も説明せずに顎で慎也に指示する。
慎也は、湯に入っている舞衣に立つように言う。
さすがに裸を見られるのにも慣れてきたようで、それほど恥ずかしがらず、指示通りに舞衣は湯の中で立ち上がった。ただし、頭に「?マーク」をたくさん浮かべながら…。
慎也は、その舞衣の足を地に着けないように、お姫様抱っこをする。
「えっ、な、なに?」
驚く全裸の舞衣をそのまま抱いて運び、果実の入っている盥の中に立たせた。
「はい、踏んで潰してね」
「えっ…。あ、足で?」
「だから、祥子様は温泉に入れって言ったんだよ。それに、着物着てると汁が飛んで汚れるし…」
「そういうことか~」
舞衣は納得し、ぺったんぺったん、足踏みを開始した。だんだんと果実がつぶれて濃い紫色の液体になってゆく。
「これを容器に入れて置いておくだけで酵母菌が繁殖し、発酵して酒になるんだよ。さらに、酢酸発酵すると、酢になる。ワインビネガーだね」
慎也の説明に、舞衣は足踏みしながら頻りに感心している。祥子は面白そうに頷いている。
「昨日の鳥の事といい、ワラワが何人もから得た知識じゃのに、其方は本に博識よのう」
「いえいえ、こういうことが好きなだけです」
慎也は手を振って、謙遜した。だが、確かに「普通の人」には無い知識である。サバイバル願望の「お一人様」、面目躍如といったところか…。
足が赤く染まってしまったと一人騒いでいる舞衣を温泉に入れ、慎也は果実の汁を祥子が用意した発酵用の容器に移して、所定場所に運んだ。
染まった足を気にしながら、舞衣も温泉から出てくる。
「色が付いたくらい気にするな。すぐに落ちてしまう。それに、今はこの三人しかおらぬのじゃ」
「それは、そうですけど…。気にするなって言われても、気になっちゃいます!」
舞衣がよくする、頬を膨らます表情。可愛らしい。
酒造りの後は、畑仕事だ。生きて行く為には働かなければならない。
木に隠れて見えていなかったが、畑奥に、もう一つ木造二階建ての建物が見えた。
「あそこは作業場じゃ。糸紡ぎや機織りをする。二階はカイコ部屋じゃ」
「養蚕もしてるんですか?」
「うむ、もちろんじゃ。糸も布も自前じゃ。他に誰もおらぬでな」
祥子は慎也に感心していたが、慎也は祥子の方がよっぽど凄いと、改めて感じた。
「今は時期でないので、カイコは休みじゃ。ここのカイコは、人の世のモノとは少し違うようじゃの。ここに元々おった種類じゃ」
そういえば、こっちの世界に来て、虫を見ていない。
蝶も蟻も、一匹も見ていない。でもカイコはいるのか…。不思議な世界だ。
「さて、今日は芋掘りじゃ。十株くらい掘ってもらおうかの」
祥子の指示で、畑の芋を掘る。
主食の芋。地上部は蔓になっている。そしてムカゴ(蔓に出来る小さな芋)が付いている。やはり、山芋・長芋の類なのだろう。
ただ、形はずんぐりしていて下部が大きく、長さも二十センチ程度。だから掘りやすい。
掘った後は、大き目のムカゴを十個、植え付けた。これが芽を出し、また大きく育つのだ。
収穫を終え、籠に芋を入れて祥子の部屋の隣、調理場へ運び込んだ。
今日の作業は終了。
温泉へ入り、あとは、二階の部屋で、また…。
とにかく、妊娠しないと舞衣たちは帰れないのだ。これからする行為が、彼女らにとって最も重要な事なのである。
この日は、朝食後、昨日収穫してきたブドウのような果物の加工をするという。…酒造りだ。
祥子と舞衣の部屋がある建物の裏、つまり温泉に、木製の盥が用意された。そこへ、洗った果実を入れて行く。
温泉の湯で洗うのではない。温泉横に、近くの丘から水が引かれている。この水を汲んで、慎也が洗っているのだ。
舞衣は、祥子の指示で温泉に入っている。果実を洗うのを慎也一人に任せ、なぜ自分は温泉に入れられているのか意味が分からず、首をかしげながら。
一方、慎也はどういうことか、理解している。果実を踏んで潰すのだ。そのために、綺麗に体を洗えということ…。
祥子は慎也が理解していることを承知で、何も説明せずに顎で慎也に指示する。
慎也は、湯に入っている舞衣に立つように言う。
さすがに裸を見られるのにも慣れてきたようで、それほど恥ずかしがらず、指示通りに舞衣は湯の中で立ち上がった。ただし、頭に「?マーク」をたくさん浮かべながら…。
慎也は、その舞衣の足を地に着けないように、お姫様抱っこをする。
「えっ、な、なに?」
驚く全裸の舞衣をそのまま抱いて運び、果実の入っている盥の中に立たせた。
「はい、踏んで潰してね」
「えっ…。あ、足で?」
「だから、祥子様は温泉に入れって言ったんだよ。それに、着物着てると汁が飛んで汚れるし…」
「そういうことか~」
舞衣は納得し、ぺったんぺったん、足踏みを開始した。だんだんと果実がつぶれて濃い紫色の液体になってゆく。
「これを容器に入れて置いておくだけで酵母菌が繁殖し、発酵して酒になるんだよ。さらに、酢酸発酵すると、酢になる。ワインビネガーだね」
慎也の説明に、舞衣は足踏みしながら頻りに感心している。祥子は面白そうに頷いている。
「昨日の鳥の事といい、ワラワが何人もから得た知識じゃのに、其方は本に博識よのう」
「いえいえ、こういうことが好きなだけです」
慎也は手を振って、謙遜した。だが、確かに「普通の人」には無い知識である。サバイバル願望の「お一人様」、面目躍如といったところか…。
足が赤く染まってしまったと一人騒いでいる舞衣を温泉に入れ、慎也は果実の汁を祥子が用意した発酵用の容器に移して、所定場所に運んだ。
染まった足を気にしながら、舞衣も温泉から出てくる。
「色が付いたくらい気にするな。すぐに落ちてしまう。それに、今はこの三人しかおらぬのじゃ」
「それは、そうですけど…。気にするなって言われても、気になっちゃいます!」
舞衣がよくする、頬を膨らます表情。可愛らしい。
酒造りの後は、畑仕事だ。生きて行く為には働かなければならない。
木に隠れて見えていなかったが、畑奥に、もう一つ木造二階建ての建物が見えた。
「あそこは作業場じゃ。糸紡ぎや機織りをする。二階はカイコ部屋じゃ」
「養蚕もしてるんですか?」
「うむ、もちろんじゃ。糸も布も自前じゃ。他に誰もおらぬでな」
祥子は慎也に感心していたが、慎也は祥子の方がよっぽど凄いと、改めて感じた。
「今は時期でないので、カイコは休みじゃ。ここのカイコは、人の世のモノとは少し違うようじゃの。ここに元々おった種類じゃ」
そういえば、こっちの世界に来て、虫を見ていない。
蝶も蟻も、一匹も見ていない。でもカイコはいるのか…。不思議な世界だ。
「さて、今日は芋掘りじゃ。十株くらい掘ってもらおうかの」
祥子の指示で、畑の芋を掘る。
主食の芋。地上部は蔓になっている。そしてムカゴ(蔓に出来る小さな芋)が付いている。やはり、山芋・長芋の類なのだろう。
ただ、形はずんぐりしていて下部が大きく、長さも二十センチ程度。だから掘りやすい。
掘った後は、大き目のムカゴを十個、植え付けた。これが芽を出し、また大きく育つのだ。
収穫を終え、籠に芋を入れて祥子の部屋の隣、調理場へ運び込んだ。
今日の作業は終了。
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